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ツイッター中毒

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 数年前までツイッターにはまっていた。今はやっていない。
 始めたときは、SNSが何なのかも理解していなかった。知り合いがツイッターをやっていて、面白いよと言うので、じゃあ僕もやってみようかという軽い気持ちで始めた。
 仕事に支障を来たすほどはまるとは、そのときは思っていなかった。
 最初は使い方もよくわからなかった。フォローとフォロワーが何かも知らなかった。とにかく140文字以内で何か書いて発信するのだな、という程度の理解しかなかった。とりあえず始めたが、プロフィール画像はしばらく初期設定の鳥のままだった。
 僕は文章を書くのは割と好きな方で、ほとんど苦にならない。深夜アニメのことを書いて、発信し始めた。僕のことをフォローしてくれる人が現れた。おお、と思った。うれしかった。フォロー返しをした。
 アニメについて書いている人を何人かフォローしてみた。すると、フォロー返しをしてくれる人がいた。そうか、こうやってフォローとフォロワーを増やしていくのだな。大勢の人と繋がれるのだ、ということがわかってきた。
 僕は主にアニメについて精力的に発信し、フォロー返しを期待して、たくさんの人をフォローした。返してくれない人のフォローはやめた。そのようにして、フォローとフォロワーを増やしていった。最終的にはどちらも軽く千人を超えた。こちらからフォローをしないで、発信力だけでフォロワーが千人になったのならそれなりに大したものなのだろうが、こんな手法で増やした千人だから多いとは言えない。たぶん著名人ではなく、特別に優れたツイートができるわけでもないふつうの利用者は、僕と同じようなやり方をしているのではないかと想像する。
 フォロワーと対話するようなことも増えてきた。ツイッター、なんて楽しいんだと思い、はまり出した。この初期の段階が、ツイッターを一番純粋に楽しんでいた頃だ。好きなアニメ、小説、アートについて発信していると、作家やアーティストからツイートが舞い込んでくることもあった。え、これ本人なの、と思ってびっくりした。著名人と繋がれて、対話ができる。すごい。ツイッター、なんて面白いんだ。
 僕は趣味でイラストを描くので、プロフィール画像を自分で描いたアニメキャラに変えた。
 フォロワーをどんどん増やしたいと思い、フォローしまくり、フォロー返しがなければ翌日にはフォローをやめるというようなことを毎日やっていた。釣りが好きなので、釣りについてのツイートをして、同じく釣りについて発信している人とも繋がろうとした。
 僕のツイートに反応してくれる人は少なかったが、何人かはいた。タイムラインを見てこちらから絡んでいくと、返信してくれる確率が高いことも知った。親しく話せる人が何人かできた。対話は楽しかった。
 何人かとはオフ会すらした。これがオフ会というものかと思い、感動していた。生身のつきあいで親しい人もできて、何回かオフ会を重ねる人まで出現した。ダイレクトメッセージのやりとりをした。異性だと思っていた人が、同性だったこともあって驚いた。なるほど、SNSでは性別を変えて遊んでいる人がいるのだなと知り、それは別にめずらしいことではないのだろうと理解した。
 さて、ここまでは楽しいことばかり書いてきたが、みなさんご存じのとおり、SNSには負の側面がある。オフ会で実際に会ってみたら、期待していた人とはちがってがっかりしたり、対話して議論になり、不愉快になってブロックしたりといったようなことが起こる。匿名なので、過激なことを書いてしまうこともあり、うっかりすると、誰かを批判したりする。批判程度ならまだいいかもしれないが、中傷となるといけない。それをやりかねない怖さがある。下手をすると、炎上することになる。ツイッターで自殺や自傷行為を助長することもあるようだと知った。有名な女性がツイッターで数百件もの誹謗中傷を受けて自殺した事件はまだ記憶に新しい。
 僕はそれほどひどいことは体験しなかったが、軽く批判し、批判される程度のことはあった。不愉快になるだけなので、こいういうツイートはするまい、批判されたら無視しようと決めた。
 しかし僕にとって最大のツイッター問題は時間を取られ過ぎることだった。朝起きたらすぐにツイッターを見る。仕事から帰ってきたときも同様だ。僕に対するツイートがあれば、ていねいに返信しなければならない。ツイッターが気になってつなぎっ放し。睡眠時間も削ってツイッターをしている。仕事をしているとき、眠くて仕方がない。
 これはツイッター中毒だと自覚した。ツイッターの時間を減らさなければならない。このままでは仕事が破綻しかねない。人生も破滅するかもしれない。恐るべしツイッター。
 しかし時間を減らすことはむずかしかった。気になって気になってしょうがない。ツイッターで親しくなった人と対話し続けたい。ツイートを減らせば縁が切れてしまうかもしれない。それは避けたい。
 うまくツイッターとつきあっている人は、こんなにはまらず、上手に利用しているのだろう。僕もうまくつきあえればよかったのだが、性格的に無理だった。のめり込んでしまう性質なのだ。ギャンブルをやったら破滅するとわかっているので、絶対にやらないと決めている。
 僕は人生を守るために、アカウントを削除した。かなりつらい決断だったが、そうするしかなかった。ツイッターのために、睡眠時間が極端に減り、仕事に支障が出て、他のあらゆる趣味の時間が食われている。ツイッターをやめるしかなかった。しばらくは禁断症状と戦わなくてはならなかった。
 今また、小説投稿サイトにはまっている。小説等を書くのは苦しいが大好きなので、今度はうまくつきあっていきたい。対話よりも圧倒的に発信が多いので、うまくコントロールできそうな気もするが、自信はない。仕事が忙しくなったり、人生がヤバくなったら、活動休止をするつもり。
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