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93話 前を向かないと
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メイランにとって辛すぎる現実、涙が止まらないメイラン……
母親や、知り合いも多いであろう一族が操られ、悪事を働くフードの男。
そして何より……カエデの村を壊滅させ、カエデに辛い思いをさせてしまった原因が、自分の母親だった事……
メイランの頭の中が色んな感情でぐちゃぐちゃになっていた。
「エリスタ君、コウガ君達も、情報提供ありがとう」
「いえ……元々メイランに話す予定でしたから、ついでです」
「それでもいいさ、これだけ情報があれば、騎士団を動かす理由にもなるだろうね。これよりガリスタ国へ戻り、騎士団と国で情報を共有し対策を講じる!」
ノシュタールが立ち上がる、それに待ったをかけたのは……メイランだった、ノシュタールの腕を掴む。
「まっ……まって!殺さないでっ……お母さんを、殺さないでっ!!うわぁぁぁぁぁ!!」
騎士団が動く……ということは、村を滅ぼしている母親を討伐されるかもしれない、メイランはそう考えてしまい思わず泣き叫び、地べたに座り込んでしまう。
俺は慌ててメイランを落ち着かせる為に抱きしめながら背中をさする。
メイランはもう話が出来る状態ではない……1度落ち着かないと。
「……すみません、また明日話をさせてもらえませんか?」
俺はノシュタールに頭を下げてお願いする。
「……コウガ君、君とメイラン君の気持ちは察するよ。しかしだね……1日遅れる事によって、被害が増えないとは言い切れないんだ、何を言っているか分からない訳ではないよね?」
「っ……」
言われなくても分かってる……でも、メイランの親に関する事なんだ……メイラン抜きでは決めきれない。
「……重々承知してます、でも……メイランの親が関わる事なんです、もしメイランがこのまま関わらずに母親にもし何かあったら……それこそメイランの心が壊れかねないです……お願いします!俺はメイランとその一族を救いたいんです!」
「……」
ノシュタールは俺とメイランを交互に見る、再び歩きだそうとしたのだが……
「ノシュタールさんお願いします!」
「お願いするっす!」
「私からもお願いしたい!」
カエデ、ソルト、セシルが行く手に阻むように移動し頭を下げる、シェミィもストームキャットの姿になってドア前に鎮座する。
「君達……」
ノシュタールは困り果てる、騎士団としてはこの事で被害を広げる訳にはいかないので、なるべく早く戻らなければならない。
しかし……個人としてはこの状態も放置したくはない、私情を挟むのは騎士団としてはアウトなのだが……。
「ノシュタールさん、俺からもお願いします。なんなら俺が皆さんをガリスタ国に送ってもいいですし……移動用馬車があるのなら、今通話手段をお渡しするので、このままガリスタ国戻ってもらっていいです。コウガさん、明日までで良いですよね?」
「あ、あぁ……」
「明日、この通話機に連絡が無ければ騎士団のやるようにしていいと思います、もし連絡が来ればメイランさんの言葉を聞いてあげてください」
ミツキからの提案と共に頭を下げられてしまったノシュタール、頭に手を当てる。
「……全く、参ったね……ミツキ君からも頭を下げられるとは……そうだな、コウガくん達の決意に免じてミツキ君の案を飲もうか」
ノシュタールはメイランに目線を合わせるように座る。
「メイラン君、君からの連絡……待っているからね」
ノシュタールはミツキよりスマフォンを受け取る。
ソルトはシェミィに道を開けるように促し、ノシュタール達を通す。
ノシュタール達は部屋から退室して行った。
「ひっぐ……ぐずっ……」
俺は泣き止むまでメイランの背中をさすり、大丈夫、大丈夫、俺達が何とかしてやるから……と囁き続ける。
メイランが泣き疲れて眠ってしまったのは、そこから10分経った後だった。
「……ミツキ、みんな。ありがとうな」
「いいんすよ、ここに居るみんなは全員、ご主人やメイランの仲間っすから」
ソルトがそう答えてくれたので周りを見ると、全員こちらを見て頷いてくれた。
「……ありがとう」
俺は眠ってしまったメイランを起こさないように背負う。
「ミツキの家に行こうか」
「分かりました、行きましょう」
部屋から出ていくと、ギルドから騎士団が出ていくのが見えた。
その近くには、武闘会で司会していたミーサーが居た。
「あっ!コウガさん!おまちし……」
そう言いかけている途中で、俺は唇に人差し指を当ててしーっのポーズを取る。
ミーサーも俺の背中に気付いたのか口に手を当てる、そして起こさないように小さい声で会話を始める。
「し、失礼しました。メイランさんが寝ていたとは気付かず……」
「いやいや、気にしないでいいぞ」
「ありがとうございます、騎士団と話をしていたそうですが……何かあったんです?」
「まぁ、ちょっとな……言えない話なんだ、すまん」
「そうですか、まぁ騎士団からも聞けなかったので、深追いはしないでおきましょう。それでは、コウガさんにはこれを」
ミーサーから金貨5枚受け取る。
「これは?」
「武闘会個人戦3位の報酬ですよ」
「報酬はお金だったのか、ありがとう」
受け取った金貨をそっとストレージに入れると……
『空間魔法のレベルが上がりました。ストレージ容量UP、座標検知及び座標保存が可能に、座標保存した場所の周辺をイメージで確認可能となりました』
「っ!」
急に頭の中で機械音な声が聞こえてビックリしてしまう。
「コウガさんどうしました?」
「あ、あぁ何でもない」
「そうですか」
ミーサーにビックリした瞬間を見られてしまったが、気にしないでくれたみたいだ。
「それでは皆さん、また会いましょう。ミッツーもまたね」
「はい」
ミーサーは手を振りながらギルドの奥へと入っていった。
「じゃ、行こうか」
「ですね」
俺達は人目のない裏路地へ入り、ミツキの家まで転移してもらう。
転移で家に着くと、ヴィーネが食事を運んでいた。
「おかえりなさいませ皆さん」
食事を運びながらも、こちらへ振り向いてお出迎えしてくれる。
「ただいま、メイランさんが泣き疲れて眠ってしまったから、メイランさんの分はいつでも温められるようにして欲しい」
「かしこまりました、コウガ様はメイラン様をいつものお部屋へ」
「ありがとうヴィーネ」
俺はいつもの部屋に向かい、メイランをベッドへ寝かせてベッドの端に座る。
ソルトとセシルはヴィーネを手伝いに行って、カエデとシェミィは俺と一緒に部屋へ来ていた。
「カエデ、シェミィ、2人はご飯行ってきていいよ」
「ううんご主人様、私も一緒に居る。メイランちゃんが心配なのもあるけど、ご主人様も心配だし……ご飯食べた誰かが看病交代してくれたとしても、ご主人様が1人でご飯を食べる事になっちゃうから……」
「ん、私もパパとママとメイランの傍にいる」
「……ありがとうカエデ、シェミィ。じゃあ3人でメイランの傍に居ようか」
「うん」
カエデは俺の横に来てくっつくように座り、俺の肩に頭を預けてきた。
「ご主人様……ご主人様なら、何とかしてくれるって信じてる……だから、私達は全力でそれを支援するよ、メイランちゃんを……そして一族を、絶対に助けようね」
「……だな、絶対に助け出そう」
メイランと、メイランの一族を助ける為に、あのフードの男を……倒す。
俺は心の中でも、そう誓った。
「パパ、ママ、ご飯後にするって言ってくる、すぐに戻るから」
「分かった、頼んだシェミィ」
シェミィは部屋から出て行ったのを見届けてから、とあることに気付く。
「あ、カリオンさん達に挨拶するの忘れてたな……」
「そ、そうだったね……色々考えることが多くてつい……シェミィが帰って来てから手紙送るね」
「そうしようか」
そう話していると、1分もしない内にシェミィが戻ってきた。
「ヴィーネが近くまで来てたから言ってきた」
「ありがとう」
シェミィは俺の膝半分とカエデの膝半分に乗ってきた。
「パパ、ママ」
シェミィは頭を後ろに逸らして俺とカエデの顔を見て笑う。
ほんと、シェミィの笑顔は癒される……
シェミィだって、今日の話を聞いて気分は良くないに決まっている。
でも、シェミィは前を向く為に笑ってくれる、なら俺達も前を向かなきゃな。
俺とカエデはお互いに顔を見合い、くすっと笑う。
そして笑顔を思い出させてくれたシェミィを2人で撫でる。
そうだ、辛い時こそ前を向かないと。
メイランは今すぐって訳にはいかないだろうが……俺達が前を向いていないと、メイランは前に向きたくても向けなくなるかもしれない。
俺達でメイランを支えなきゃいけないんだからな!
シェミィは、人としての自我が芽生えてそれ程時間は経っていないのに、俺達よりどうしなきゃいけないのか分かっているみたいだ。
たまに子供っぽい部分はあるが、しっかりした子だな。
俺はそう考えながら、カエデと一緒にシェミィを撫でてメイランが目覚めるのを待った。
カエデは途中で手紙を書き、魔法鳥が来たのを確認して手紙を送ったのだった。
母親や、知り合いも多いであろう一族が操られ、悪事を働くフードの男。
そして何より……カエデの村を壊滅させ、カエデに辛い思いをさせてしまった原因が、自分の母親だった事……
メイランの頭の中が色んな感情でぐちゃぐちゃになっていた。
「エリスタ君、コウガ君達も、情報提供ありがとう」
「いえ……元々メイランに話す予定でしたから、ついでです」
「それでもいいさ、これだけ情報があれば、騎士団を動かす理由にもなるだろうね。これよりガリスタ国へ戻り、騎士団と国で情報を共有し対策を講じる!」
ノシュタールが立ち上がる、それに待ったをかけたのは……メイランだった、ノシュタールの腕を掴む。
「まっ……まって!殺さないでっ……お母さんを、殺さないでっ!!うわぁぁぁぁぁ!!」
騎士団が動く……ということは、村を滅ぼしている母親を討伐されるかもしれない、メイランはそう考えてしまい思わず泣き叫び、地べたに座り込んでしまう。
俺は慌ててメイランを落ち着かせる為に抱きしめながら背中をさする。
メイランはもう話が出来る状態ではない……1度落ち着かないと。
「……すみません、また明日話をさせてもらえませんか?」
俺はノシュタールに頭を下げてお願いする。
「……コウガ君、君とメイラン君の気持ちは察するよ。しかしだね……1日遅れる事によって、被害が増えないとは言い切れないんだ、何を言っているか分からない訳ではないよね?」
「っ……」
言われなくても分かってる……でも、メイランの親に関する事なんだ……メイラン抜きでは決めきれない。
「……重々承知してます、でも……メイランの親が関わる事なんです、もしメイランがこのまま関わらずに母親にもし何かあったら……それこそメイランの心が壊れかねないです……お願いします!俺はメイランとその一族を救いたいんです!」
「……」
ノシュタールは俺とメイランを交互に見る、再び歩きだそうとしたのだが……
「ノシュタールさんお願いします!」
「お願いするっす!」
「私からもお願いしたい!」
カエデ、ソルト、セシルが行く手に阻むように移動し頭を下げる、シェミィもストームキャットの姿になってドア前に鎮座する。
「君達……」
ノシュタールは困り果てる、騎士団としてはこの事で被害を広げる訳にはいかないので、なるべく早く戻らなければならない。
しかし……個人としてはこの状態も放置したくはない、私情を挟むのは騎士団としてはアウトなのだが……。
「ノシュタールさん、俺からもお願いします。なんなら俺が皆さんをガリスタ国に送ってもいいですし……移動用馬車があるのなら、今通話手段をお渡しするので、このままガリスタ国戻ってもらっていいです。コウガさん、明日までで良いですよね?」
「あ、あぁ……」
「明日、この通話機に連絡が無ければ騎士団のやるようにしていいと思います、もし連絡が来ればメイランさんの言葉を聞いてあげてください」
ミツキからの提案と共に頭を下げられてしまったノシュタール、頭に手を当てる。
「……全く、参ったね……ミツキ君からも頭を下げられるとは……そうだな、コウガくん達の決意に免じてミツキ君の案を飲もうか」
ノシュタールはメイランに目線を合わせるように座る。
「メイラン君、君からの連絡……待っているからね」
ノシュタールはミツキよりスマフォンを受け取る。
ソルトはシェミィに道を開けるように促し、ノシュタール達を通す。
ノシュタール達は部屋から退室して行った。
「ひっぐ……ぐずっ……」
俺は泣き止むまでメイランの背中をさすり、大丈夫、大丈夫、俺達が何とかしてやるから……と囁き続ける。
メイランが泣き疲れて眠ってしまったのは、そこから10分経った後だった。
「……ミツキ、みんな。ありがとうな」
「いいんすよ、ここに居るみんなは全員、ご主人やメイランの仲間っすから」
ソルトがそう答えてくれたので周りを見ると、全員こちらを見て頷いてくれた。
「……ありがとう」
俺は眠ってしまったメイランを起こさないように背負う。
「ミツキの家に行こうか」
「分かりました、行きましょう」
部屋から出ていくと、ギルドから騎士団が出ていくのが見えた。
その近くには、武闘会で司会していたミーサーが居た。
「あっ!コウガさん!おまちし……」
そう言いかけている途中で、俺は唇に人差し指を当ててしーっのポーズを取る。
ミーサーも俺の背中に気付いたのか口に手を当てる、そして起こさないように小さい声で会話を始める。
「し、失礼しました。メイランさんが寝ていたとは気付かず……」
「いやいや、気にしないでいいぞ」
「ありがとうございます、騎士団と話をしていたそうですが……何かあったんです?」
「まぁ、ちょっとな……言えない話なんだ、すまん」
「そうですか、まぁ騎士団からも聞けなかったので、深追いはしないでおきましょう。それでは、コウガさんにはこれを」
ミーサーから金貨5枚受け取る。
「これは?」
「武闘会個人戦3位の報酬ですよ」
「報酬はお金だったのか、ありがとう」
受け取った金貨をそっとストレージに入れると……
『空間魔法のレベルが上がりました。ストレージ容量UP、座標検知及び座標保存が可能に、座標保存した場所の周辺をイメージで確認可能となりました』
「っ!」
急に頭の中で機械音な声が聞こえてビックリしてしまう。
「コウガさんどうしました?」
「あ、あぁ何でもない」
「そうですか」
ミーサーにビックリした瞬間を見られてしまったが、気にしないでくれたみたいだ。
「それでは皆さん、また会いましょう。ミッツーもまたね」
「はい」
ミーサーは手を振りながらギルドの奥へと入っていった。
「じゃ、行こうか」
「ですね」
俺達は人目のない裏路地へ入り、ミツキの家まで転移してもらう。
転移で家に着くと、ヴィーネが食事を運んでいた。
「おかえりなさいませ皆さん」
食事を運びながらも、こちらへ振り向いてお出迎えしてくれる。
「ただいま、メイランさんが泣き疲れて眠ってしまったから、メイランさんの分はいつでも温められるようにして欲しい」
「かしこまりました、コウガ様はメイラン様をいつものお部屋へ」
「ありがとうヴィーネ」
俺はいつもの部屋に向かい、メイランをベッドへ寝かせてベッドの端に座る。
ソルトとセシルはヴィーネを手伝いに行って、カエデとシェミィは俺と一緒に部屋へ来ていた。
「カエデ、シェミィ、2人はご飯行ってきていいよ」
「ううんご主人様、私も一緒に居る。メイランちゃんが心配なのもあるけど、ご主人様も心配だし……ご飯食べた誰かが看病交代してくれたとしても、ご主人様が1人でご飯を食べる事になっちゃうから……」
「ん、私もパパとママとメイランの傍にいる」
「……ありがとうカエデ、シェミィ。じゃあ3人でメイランの傍に居ようか」
「うん」
カエデは俺の横に来てくっつくように座り、俺の肩に頭を預けてきた。
「ご主人様……ご主人様なら、何とかしてくれるって信じてる……だから、私達は全力でそれを支援するよ、メイランちゃんを……そして一族を、絶対に助けようね」
「……だな、絶対に助け出そう」
メイランと、メイランの一族を助ける為に、あのフードの男を……倒す。
俺は心の中でも、そう誓った。
「パパ、ママ、ご飯後にするって言ってくる、すぐに戻るから」
「分かった、頼んだシェミィ」
シェミィは部屋から出て行ったのを見届けてから、とあることに気付く。
「あ、カリオンさん達に挨拶するの忘れてたな……」
「そ、そうだったね……色々考えることが多くてつい……シェミィが帰って来てから手紙送るね」
「そうしようか」
そう話していると、1分もしない内にシェミィが戻ってきた。
「ヴィーネが近くまで来てたから言ってきた」
「ありがとう」
シェミィは俺の膝半分とカエデの膝半分に乗ってきた。
「パパ、ママ」
シェミィは頭を後ろに逸らして俺とカエデの顔を見て笑う。
ほんと、シェミィの笑顔は癒される……
シェミィだって、今日の話を聞いて気分は良くないに決まっている。
でも、シェミィは前を向く為に笑ってくれる、なら俺達も前を向かなきゃな。
俺とカエデはお互いに顔を見合い、くすっと笑う。
そして笑顔を思い出させてくれたシェミィを2人で撫でる。
そうだ、辛い時こそ前を向かないと。
メイランは今すぐって訳にはいかないだろうが……俺達が前を向いていないと、メイランは前に向きたくても向けなくなるかもしれない。
俺達でメイランを支えなきゃいけないんだからな!
シェミィは、人としての自我が芽生えてそれ程時間は経っていないのに、俺達よりどうしなきゃいけないのか分かっているみたいだ。
たまに子供っぽい部分はあるが、しっかりした子だな。
俺はそう考えながら、カエデと一緒にシェミィを撫でてメイランが目覚めるのを待った。
カエデは途中で手紙を書き、魔法鳥が来たのを確認して手紙を送ったのだった。
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