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45話 山脈の大石窟②

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 4人全員ギャグ漫画かのように倒れ込み、その音でレアメタを逃がしてしまった。

「あのキラキラした丸いヤツ、レアメタって言うのか?」
「ええ、あれは何処にでもごく稀に出現するレベル上げモンスターよ。まぁ討伐出来たって人なんてあまり聞かないけどね」

 なるほど、思った通り某ゲームのメタル〇〇〇厶だな。

「あれはお目にかかる事すらレアなんす、何せごく稀にしか現れない上に逃げ足が速いっすから……噂では名前の由来であるメタル体質、硬すぎてダメージが殆ど入らないらしいっすね」

 まんまメタスラだな……この世界にも居るんだな。

「なるほどな、出来れば倒したかったが逃がしてしまったのは仕方ない、時間も惜しいし行こう。2階層を軽く探索して出現モンスターを確認して、行けそうならそのまま抜ける、難しそうなら山越えだ」
「「「了解」」っす」

 歩いていると2つ索敵反応があった、しかし動き方が変だ……

「ちょっと待った」
「っ、敵?」
「あぁ、反応が2つだ。ただ動き方がうねうねしてて妙なんだよ、索敵反応がある方を見ても何も居ないように見えるし……」

 もしかして別階層の敵を検知したのか?いや、違う筈だ。
 1階層では2階層の検知なんてしなかった、そこに居るはずだ。
 索敵を確認しつつ警戒していると、ソルトが何か気付いたみたいだ。

「しっ、ご主人……耳を澄ますっす」
「音?」

 耳を澄ませると、ゴゴゴゴと音がする……地面の中からだ。

「みんな、敵は地面の中だ!いつ飛び出してくるか分からない、注意しろ」

 集中攻撃されないように全員散らばって警戒する、索敵反応が俺達に近付づくにつれてゴゴゴゴという音が大きくなっていく、そして索敵反応がメイランとカエデに重なるように動いた。

「カエデ!メイラン!下だ!」
「「!!」」

 2人は後方へジャンプすると、2人の居た地面から勢いよく敵が飛び出してきた。
 人の横幅くらいの大きさでミミズのような姿をしていた、口を大きく開けてこちらを見た。

「な、何だあれは!」
「ご主人!ロックワームっす!小ぶりっすけど、喰われたら手足持っていかれるっすよ!」
「それは勘弁願いたいね!」

 俺は杖をかざして魔法を放つ。

「ウォーターボール!」

 水球を2つ呼び出し、2体のロックワームへ飛ばし両方命中させた。
 水は苦手だったのか、苦しそうに直ぐに地面の中へ戻ってしまう。

「くそ、潜られた!」
「ご主人!今のかなり効いてたみたいっす、1回魔法いけるっすか?」
「もちろんだ!ただ、どうやって地面から引きずり出す?」
「自分に考えがあるっす、潜った穴の中に魔法を!」
「!!そうか、そういう事か!」

 奴が出入りする穴……それは言ってしまえば必ずその穴の何処かには敵がいる、ならそこに魔法をぶち込めば敵に必ず当たるって事だ!引きずり出せるか、もしくは倒せるかもしれない!

「メイラン!あの穴の中にブレスいけるか!魔法よりブレスの方が範囲が広い!」
「なるほど、分かったわ!」

 メイランは大きく息を吸い込み、穴の中にブレスを吐き出す。
 恐らく穴の中で火炙りになっているであろうロックワーム、石には火は通りにくいとはいえ、これには堪えたのか、1匹が地面から飛び出してきた。

「ギギギギギ!」

 ブレスに包まれて苦しがっていたロックワーム、火から解放された瞬間に俺は再度ウォーターボールを命中させると息絶えた。
 遅れて2体目も地面から飛び出してきたので、同じくウォーターボールで仕留める。

「ふう、何とかなったか。これまで出会ってきた魔物も、シェミィや巨大トレントを除くが、対処が分かればあまり苦戦はしてないな」
「上位種とかなら苦戦するけど、下位種ならレベルの上がってきた私達なら大丈夫だね!」
「油断すると足元掬われるわよ、まぁ危険度Bを2回撃退してきてるから、気持ちは分かるけれど……」
「えっ、ご主人。危険度Bの魔物を2回も戦ったんすか……?」
「あぁ、そう言えば話してなかったな」

 歩きながらソルトにこれまでの経緯を簡潔に話した、シェミィの件と巨大トレント、そして旅の目的まで。
 その間も魔物は出てきていたが、1階層のゴーレム、アジットスライム、ロックアルマージ、そして新たにドラゴンナイト、先程のロックワームくらいしか出なかった。
 カエデ、メイラン、シェミィの3人だけでも苦戦はしていない、索敵で魔物の位置を確認しながら進んでいるので、敵との多数接触を避けてきたのも大きい。

「なるほど、そんな事があったんすね、そして腕試しに武闘会に出ると」
「そんな感じだ」
「自分は武闘会観てるっすね、まだレベルも低いんで3人の応援するっす」
「いいのか?みんなと相談して決めてもいいんだぞ?」
「でも……自分まだみんなよりレベル低いんすよ?そりゃ出たいっすけど迷惑になるんじゃ……」
「気にすんなって、なぁ?みんな」

 俺がそう言うとカエデもメイランもにこっとこちらを見て頷く。

「迷惑なんて全く思わないよ!ソルトちゃんが出るなら、個人戦出る人が団体戦は応援、団体戦に出る人が個人戦応援で丁度いい人数で分けられるよ!」

 そう、前にも話したが個人戦出場は2名、団体戦は3人チームだ。
 俺は両方出るのは確定で、個人戦に出るもう1人は俺の変身先の種族となっている。
 そして余った2人は、団体戦で俺と組むとすれば丁度良いのだ。

「い、良いんすか?本当に」

 まだ少し戸惑っているソルトの肩にメイランが手を置いた。

「いいのよ、みんなが一緒に出たいって言ってるのだからね。ソルトが出たいって言ったんだから、甘えなさい」
「みんな……!はい!ありがとうございます!」

 武闘会も、後は俺がどの種族に変身するか決めるだけだ。
 まぁ、個人的はカエデにしようかなって思ってるんだけどな、1番早く仲間になって1番絆が深いと思ってるカエデと、1回戦ってみたい……そう思ってる。

「結構進んできたな、身体はどうだ?みんな」
「私余裕だよ!」
「私もそれ程疲れていないわ」
「自分もいけるっす!魔物もかなり強いって訳じゃないっすからね」
「よし、ならばもう反対側まで抜けてしまおうか!いいな?」

 俺はそう言ってみんなの顔を見ると、みんな頷いてくれた。

「うん、良いと思う!武闘会まだ今日含め後4日あるけど、先に到着しておけば、旅の疲れを抜くのと特訓の時間も作れるよね!」
「そうっすね!特訓が出来ると自分的には嬉しいっす!ギリギリまで到着を先延ばしにしたら、トラブル起きた時に間に合わない!とかなっちゃうっすからね」
「だな、じゃ気合い入れてダンジョン出口まで向かおうか!」
「「「おー!」」」

 2階層も順調に進み、2階層の新敵であったロックワームもドラゴンナイトも苦戦せず倒していく。
 恐らく1階層の出現モンスターをメインに、2階層からは1階層モンスターに加えて2階層の新モンスターが出るって仕組みっぽいな。
 歩いていると、行き止まりに辿り着いたが宝箱が置いてあった。

「お、宝箱だ」
「何が出るっすかね?一応ミミックかどうか確かめるっすね」

 ソルトは小石を掴み、思いっきり投げつける。
 小石が宝箱に当たるが反応がない、ミミックではないようだ。

「ミミックじゃないっぽいっすね、一応動き出すかもしれないって注意だけはしといてほしいっす」
「了解、じゃ開けるぞ?」

 恐る恐る開けてみると、中に何か入っているようだ。
 手に取るとナイフが入っていた、鑑定してみるとククリナイフと書いてあった。

「お、これはククリナイフだな」
「ご主人の持ってるナイフと入れ替えても良いっすね、多分今のナイフより強いと思うっす!」
「だな、利き手側のナイフをククリナイフにしようか」

 俺はククリナイフを装備して、普通のナイフを予備用にした。

 更に進むと、ようやく3階層への階段を発見。
 看板があり、ノイシュ側とサンビーク側の案内が書いてあった。

「あ、これだな」
「だね!あっちに向かえばノイシュ側出口だね」
「よし、少し休憩してノイシュ側に行こうか」
「了解っす!」

 そして階段に座って休憩しようとした瞬間……

「誰か!誰か助けてくれぇぇぇぇぇ!」
「「「「!?」」」」

 階段上から叫び声がした、男性のようだが……

「何!?今の悲鳴!?」
「3階層で何かあったみたいだな、行くぞみんな!」
「うん!」

 俺達は予定変更し3階層へ走り出した。 
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