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37話 久しぶりの触れ合い

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 ミルト村で1泊した朝、目を開くとカエデがこちらの顔を見ていた。

「ん……?カエデ?」
「あっ、おはようご主人様」
「おはよう……体調はどうだ?」
「う、うん。しっかり寝たから大丈夫」

 そう応えつつも少し顔を赤らめたカエデ、耳がピコピコ反応しているのが可愛くて愛おしい。

「あはは……ご主人様の寝顔堪能してたらバレちゃった」
「俺の寝顔見たって何も面白くないだろう……」
「そ、そんな事ないよ!口がむにむに動いたり、普段凛々しい顔しておいて寝顔は可愛いし、これで狼人族のまま寝てたらきっと耳もピクピク動いて更に可愛いんだろうなと……あわわわ!」

 喋りすぎたと気付いて慌てて口を塞ぐカエデ、何この子……可愛すぎか?衝動で抱き締めてしまった。

「ふえ!?」
「カエデ可愛すぎだろ、もふらせてくれ」

 と言いながら既にカエデの耳をもふっている俺、触り心地は毛がふわふわで、耳自体は耳たぶのように結構柔らかい。

「許可なく触ってる!?もう良いから!いくらでももふって良いから取り敢えず離してえぇぇぇぇ!!」

 俺に抱き着かれて顔を真っ赤にさせながら手足バタバタさせるカエデ。
 最近全くもふれてなかったし、オイルも買ったのに使うのを忘れるくらいバタバタしてたからなぁ……こんなまったりした時間もたまには良いよね。
 あ、今思い出した……サンビーク散策後に渡そうと思ってたプレゼントをストレージに仕舞ったままだった……折角だしサプライズで今付けちゃおうか!
 カエデに抱き着いてるので、丁度手が見えていないはず……ストレージから『フィオレロの指輪』(エメラルド)をこっそり取り出し、カエデの右手薬指に付ける、指輪サイズは自動調整されるご都合仕様だ。

「えっ……?」
「プレゼントだ、似合うかなって思って買っておいたんだ」
「ご主人様……!」

 指輪をつけるまで暴れていたカエデだったが、指輪に気付いた瞬間に大人しくなり、薄ら涙を浮かべながら抱き着いてきた。

「ありがとうご主人様、ずっと大事にします」
「あらあら、いいわねぇー青春ねぇー」
「「!?」」

 メイランの声がしたので振り向くと、布団を被ったまま顔だけ出してニヤニヤしていた。

「何か私達、こういうの多くない!?」
「そうねぇーまぁ良いんじゃなーい?うふふ」
「フーー!見ないでぇぇ!」

 毛並みを逆立てて見ないでと怒るカエデも可愛くて、つい尻尾をもふもふする。

「はふう……卑怯だよぉ……」
「可愛いのが悪い!ほら、メイランもこっちに」

 メイランを呼びこちらに来させると、2人まとめて抱き締める。

「あら大胆ね、2人とも喰らうつもりかしら?私はいつでも大歓迎よ?」
「わわわ、私は心の準備が……って、2人とも!強敵と戦いでおかしくなっちゃったの!?いつもより大胆過ぎだよぉぉぉぉ!!」

 良いじゃないか、みんな無事に帰ってきたんだから、今くらいはこうして平和を噛み締めようじゃないか。

「ほら、メイランにもプレゼントだ」

 メイランの右手薬指にも『フィオレロの指輪』(ルビー)を嵌めた。

「綺麗ね、この宝石はルビーね?」
「そうだ、一応STR中UPと火属性ダメージUPが付いてる。カエデの方のエメラルドには、風属性ダメージUPとAGI中UPが付いてるぞ」
「私、更に早く走れるようになるね!」
「カエデのスピードが更に磨かれて、メイランの火属性攻撃が更にパワーUPする、きっと役に立つだろう。ちなみに俺もターコイズで買ってある」

 ストレージから『フィオレロの指輪』(ターコイズ)を取り出すと。

「じゃあ私がつけてあげる!」
「いや、私がつけるわ!」

 カエデとメイランが私が私がと喧嘩を始めた、2人が喧嘩する所は初めて見る。

「おいおい、喧嘩はダメだぞ……」
「ほっほっほっ!仲睦まじくて良いですなぁ」

 そこに現れたのは、家に泊めて下さった村長さんだ。

「あはは……すみません、騒がしくて……」
「よいよい、若い内は男を取り合うくらいが丁度ええんじゃ、モテ男は辛いのぅ?ほっほっ!」
「村長さんまで……」

 結局指輪は2人で器用に嵌めてくれた、こんな小さい指輪を良く2人で両端持てたな……

 そして村長さんの奥さんが用意してくれた朝食を頂き、お礼に食器洗いと使わせてくれた部屋を掃除してから村を出る。
 本当にミルト村は良い人ばかりで良かった、また来るとしよう。

 村が小さくなった頃合を見て、ドラゴン族に変身してサンビークへ向かう。
 ドラゴン族形態にはもう慣れたのでどんどんスピードを上げていく、4時間以上掛かっていた片道が3時間弱くらいで戻る事が出来た。
 サンビークの門番に軽く挨拶を交わして、ギルドに直行する。

「すみません、依頼達成したので手続きお願いします」
「はい、かしこまりました。えーっと……野ウサギの大量発生ですね、魔石はありますか?」
「はい、こちらに」

 ストレージから大量の魔石が入った袋を取り出して見せた。

「は、はい……確かに……大量発生なので覚悟しましたが、こんなに……」
「えぇ……かなり苦労しましたよ、それとこの件でギルマスのゼミラさんに報告したい事が……」
「ギルマスにですか?すみませんが1度要件をお伺いしても?」

 周りにあまり聞かれたくないので耳打ちで話すと、受付嬢が顔色を変えた。

「なっ……!?信じられません……そんな事が……!?」
「はい、証拠のトレントも回収済みですのでお見せ出来ますが……」
「いえ、ギルマスに直接見てもらいましょう、すぐ連れてきますので応接室までお願いします」
「分かりました、応接室は分かりますので、呼ぶのを先に」
「分かりました、暫くお待ちください」

 受付嬢が駆け足でギルマスの元へ向かって行った。
 応接室で待っていると、ゼミラさんが険しい顔をして入ってきた。

「すまない、待たせたか?」
「いえ、大丈夫です」
「そうか、では本題に入ろう。巨大なトレントの出現と野ウサギの大量発生が、誰かに仕組まれたものだと言うのか?」
「はい。巨大トレントは自分達の餌の為に、野ウサギの巣穴を守り大量発生させて生き血を吸って生きていたようです。巨大トレントを仕留めた際に魔石を見たのですが……ドス黒い魔力で魔石を包み、それを魔法陣で縛り上げてました、倒した際に魔力と魔法陣は消えてしまい、魔石がひび割れてしまいましたが……現物はこれです」

 魔石付近のトレントの部位を丸ごと取り出して見せた。

「魔石を取り出す前のだな、ここに黒い魔力が……」
「はい、こんな事する人が1人思い当たる節があるのです、名前は分かりませんが……」
「どういう事だ?」
「長くなりますが説明しますね」

 俺達がトライデント王国とテラー大森林で起きた出来事を全て話した、シェミィの件が主だ。

「なるほど……そんな事が」
「はい、なのでこの件を追うのに、トライデント王国が協力してくれてまして、これが証拠です」
「ん?これは……なるほど王国印か!」
「はい、連絡用にと」
「ふふ、なるほどな……もう手は打たれていたか」
「はい?」
「いや、お前達の今の話を聞いて実力を認めて取り入ろうと若干思っただけだ、気にするな」

 やっぱり、王国のギルマスさん……いや、ジャスパーさんの言う通りだったな。

「なぁ、トライデント王国のジャスパーと話をさせてくれないか?」

「えっ?」

 ジャスパーさんと話を?一体ゼミラさんは何を考えてるのだろうか……?
 変な事にならなきゃいいが…… 
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