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30話 ハンバーグ
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モウ乳を手に入れた俺達、サンビークに戻ってくると門番とシェミィが一緒に居るのが見えた。
初めてシェミィを連れて来た時に少し怖がっていた門番だ、今はそれ程怖がってる様子はなく、どちらかと言えば野良猫を眺めるかのような顔をしていた。
「あれ、シェミィ?どうしてここに?」
「あぁコウガさんおかえりなさい。10分前より従魔が来まして、貴女方の帰りを待っていたかのようでしたよ」
シェミィがカエデに擦り寄ってくる、おかえりと言ってくれてるように感じた。
「シェミィ、お迎えに来てくれたんだね!ありがとう!」
「10分前に来たって言ってたわよね?私達がもうすぐ帰って来る事を感じ取ってたのかしら?」
「かもしれないな、テイムによってカエデの魔力を感じ取れるようになってるのかも。さて、シェミィも来てくれたんだし、みんなでのんびり帰ろうか!」
「そだね!」
テイムって口に出して思い出した、明日はテイムについて調べに行こうか、従順テイムのやり方しか分からないからな。
そして依頼やクエストをこなすついでに、俺とカエデでテイム練習しても良いかもしれない。
後、メイランから貰ったドラゴン族変身やドラゴン特性についても教えて貰わなくちゃな。
「なぁ明日の事なんだが、テイムの勉強とドラゴン族変身の慣らしをやりたいんだがいいか?クエストや依頼をこなしつつになるんだが」
「もちろん!私もテイム練習しなきゃって思ってたからね」
「ええ、私もそれで良いわ。コウガ様にドラゴン族の素晴らしさを体験して頂きたいわ」
「よし、決まりだな!」
「ならまずはテイムについて調べなきゃね」
「だな」
そして宿に戻ってきた俺達は、ハンバーグを作る為にキッチンを借りる。
ここに客用の簡易キッチンがあるという、前世じゃ信じられない光景を目の当たりにした。
やはり冒険者は自炊する人も多いらしく需要があるらしい。
「さて、ハンバーグ作りを始めよう!」
「おー!」
「ふふ、楽しみだわ」
宿からの借り物エプロンを着けて手洗いをしてから調理に取り掛かる。
材料を全て取り出して全員の手が届く範囲に置いておき、計量カップや計り、調味料も並べておく。
「まずはカエデ、パンを小さくちぎって皿に入れといてくれるか?」
「わかった、小さくってどれくらいとかあるの?」
パンを手に取り1度小さくちぎって見せる。
「これくらいでいい、外側の硬い生地も関係なく全てちぎって欲しい」
「はーい!」
カエデに俺の手に持っているパンを手渡すとちぎり始めた。
「メイランはネギタマを微塵切りに出来るか?」
「ええ、出来るわよ」
「よし、なら1玉を微塵切りにしてこの皿に入れてくれ、これはハンバーグに使う。そして新たなネギタマを4等分に切って、それの1つだけをまた微塵切りにして別皿に入れてくれるか?それはソースに使う」
「分かったわ、まずはネギタマの外側を剥いて洗って来るわね」
「おっけー、頼むぞ」
メイランが流し台に行ったのを確認してから俺はモウの肉を手に取る。
ブラックモウにしても良かったのだが、あれは多分ステーキの方が美味しいと思い普通のモウ肉にした。
作るのは牛100%ハンバーグだ、合挽き肉にしても良いのだが、牛と豚の比率は知らないのでやめておいた。
モウの肉を小さくなるように細かく切っていく、そして脂の部分の1部は切り離しておき、フライパン使う際の油にする、要するに牛脂だな。
肉を細かくしているとメイランも隣に来てネギタマを微塵切りにしていく。
きっと料理上手できちんと基本を教えてくれる母だったのだろう、手つきはゆっくりなのだが微塵切りのやり方や手の形も基本通りで迷いがない。
暫く肉を切っていると。
「ご主人様、パンちぎり終わったよ!」
パンの用意が終わったようだ、肉とネギタマももうすぐ用意出来るから先に材料をボウルに入れてもらうか。
「ならカエデ、そこにあるボウルにちぎったパン入れて、モウ乳を計量カップの数字100になるまで入れてボウルに入れて欲しい、クックの卵も1個入れたいんだが割れるか?」
「大丈夫!」
「おっけー任せた」
指示しながらも肉を切っていると
コンコングシャ
「あっ!」
卵を割ろうとして力を入れすぎたようだ、卵が崩れて机とエプロンがベタベタになった。
「カエデ!大丈夫か!?」
「あ、う……うん、大丈夫……ごめんなさい、力加減間違えた……」
あれだけ上機嫌だったカエデの耳と尻尾がへにょんと垂れてしまっった、そして若干涙目に。
「失敗は誰にでもある、大丈夫だぞカエデ。片付けてからもう1回やろう」
「うん……」
「微塵切り終わったわ、コウガ様はお肉がまだ終わってないみたいだし、カエデの方は私に任せて欲しいわ。ネギタマはどうしたらいいかしら?」
「すまん、頼む。ネギタマはここに置いといてくれ」
「分かったわ。じゃカエデ、エプロンを洗いに行ってきて、卵を片付けと拭き掃除は私がやるわ、」
「ありがとうメイランちゃん……」
2人は卵を片付けて拭き掃除をしてもらってる間に肉を切り終わったので、フライパンに脂を入れて馴染ませた後にネギタマを入れて飴色になるまで炒める、そして皿にあけて粗熱を取る。
そうしてる内に拭き掃除が終わったようだ。
「カエデ大丈夫かしら?」
「今は落ち込んでるだろうが、もう1度やって成功させてあげたら大丈夫だ、俺がサポートしてやればいい」
「そうね」
カエデが新しいエプロンを着けて帰ってきた。
「ただいま、ごめんご主人様、メイランちゃん」
「さっきも言ったが、失敗は誰にでもあるから大丈夫だカエデ、もう1回チャレンジしようか」
「うん、大丈夫かな……」
「大丈夫、俺が後ろから一緒にやってあげるから」
俺がカエデの後ろから手を回しカエデの手を握る。
「あっ……」
「さ、やるぞ」
カエデの手を握り、卵を1つ手に取ってコンコンと叩くと卵がひび割れる。
「力加減はこれくらいでいい、後はゆっくり親指を割れ目に入れてパカッと開くんだ」
「う、うん!」
ゆっくり割れ目に親指を入れてパカッと横に開くと白身と黄身がボウルの中へ。
「出来た……!」
「よしよし、よくやった」
「ありがとうご主人様!」
若干顔が赤くなってるカエデだが、上手く出来て気分が上がってきたようだ。
「よし、それじゃ肉とネギタマを入れてから、塩と胡椒を入れて……っと、じゃカエデにもうひと仕事だ。このボウルの中身を素手でこねるんだ」
「これを素手で!?」
「あぁ、俺が手本を見せてやるから真似てくれ」
俺が少し手本を見せる、ぐちゃぐちゃと音をたてて、グーパーグーパーしながらこねる
「こんな感じだ、カエデやってみてくれ」
「わ、分かった!」
カエデが恐る恐るボウルに手を入れてこね始める。
「うわぁ……ネトネトするね」
「だろ?全部が均等に混ざるまでこねてくれ」
「分かった!」
カエデが一生懸命ハンバーグのタネをこねる、するとタネが纏まってきたので丸くするように伝えると、ハンバーグのタネは綺麗な丸になった。
「よしよし、こんなもんだな。これを4等分にして、4等分でもまだ大きいから更に半分にしようか。カエデ、これをまず縦と横に切れ込みを入れて4等分にして1つを俺に渡してくれ」
「分かった、よいしょ……こう?」
縦と横に綺麗に切れ込みを入れて、1つを俺に手渡してくれた。
「おっけーだ、これを更に半分にして……メイラン、これを持って俺と同じようにしてくれるか?これがかなり重要な過程なんだ」
「わ、分かったわ。大丈夫かしら」
「大丈夫、同じようにしてくれたらいいからな。まずは見ててくれ」
俺はハンバーグのタネを両手で楕円形になるように形作る、そして片手から片手に軽く投げるように空気を抜く。
「「おお……」」
ペタン、ペタンと音を鳴らし、若干大きめなので余分に20回程空気抜きをして真ん中を凹ませる。
「こんな感じだ、この投げる事でこの塊の中の空気が抜けるんだ。」
「ご主人様、なんで空気を抜く必要があるの?」
「それはな、焼く時に空気がこの中にあると、空気が膨張してハンバーグの形が崩れて肉汁も逃げちゃうんだ」
「なんと!肉汁美味しいのに勿体ない!」
「そう、形が美しくない上美味しさ半減だ。嫌だろ?だからこの過程は怠らずしっかりな。頼むぞメイラン」
「分かったわ」
メイランも真似して形を作り、片手から片手にペタンペタンと空気抜きを行う、1回見ただけでなかなか上手くやれている。
「ご主人様、私にも出来ないかな?でも落としちゃったらやばいよね……」
「それならやりやすいやり方があるぞ、空気の抜けが若干悪くなるが、少し回数増やせば大丈夫だろう。よく見ててくれ」
「うん!」
ハンバーグのタネを手に取り形を作る、そして片手で持ち上げてもう片手を真下に置く、そしてそのままタネを手放して真下の手の上に自然落下させる。
「これなら投げる必要がなくて落とす事ない、カエデみたいに心配な人でも出来るぞ。25回くらいしたら大丈夫だろう」
「分かった!やってみる!」
カエデがタネを手に取ると形を作って自然落下させる、片手をちゃんと真下に置いていた為に落とさずキャッチ出来た。
「これなら私でも出来そう!」
「よしよし、これを2つ頼むぞ」
「うん!」
俺達3人でハンバーグの形を作っていく、4等分の更に半分の為8つのハンバーグの形が出来上がった。
「綺麗に出来たな、2人とも良く頑張ってくれた。これで後は焼いたらハンバーグの肉は出来上がりだ」
「これを焼いていくのね、普通に焼けば良いのかしら?」
「表面は中火の少し弱めくらいで3分くらい、裏面は裏返してからすぐに弱火にして蓋をして蒸し焼きにするんだ」
「なるほど、熱を籠らせて中まで火を通すのね?」
「その通り、蒸し焼きは1個1個が大きめだから……大体12分くらい蒸し焼きして肉汁が透明色ならOKだ」
「分かったわ、コウガ様しっかり見ててくれると助かるわね、間違えそうならすぐ言ってちょうだい」
「了解だ」
「頑張ってメイランちゃん!」
フライパンに脂を馴染ませて弱めの中火にかけてハンバーグを4つ乗せる、3分後に焼き色を見てから裏返し弱火にして蓋をした。
「こんな感じかしらね」
「あぁ、いいぞ。これで12分待ちだな」
「了解、蓋は開けちゃダメなのよね?」
「熱が逃げちゃうから12分きっちり待ってくれな、俺はキャベジを千切りにしてくる」
「分かったわ」
キャベジを千切りにしていくが、洗うのと切り終わるまでに10分と掛からなかった。
「カエデ、皿にこのキャベジを乗せてくれるか?」
「うん!」
カエデが手際よくキャベジを更に盛り付けてくれる。
そろそろ12分だ。
「メイラン、1度蓋をあけてフォークで軽くハンバーグを刺してくれるか?」
「ええ」
軽くフォークを刺すと透明な肉汁が溢れてきた、4つ共同じだった。
「よし、良い焼き具合だ!この4つを皿へ!」
メイランがキャベジの乗った皿にハンバーグを盛り付けていく。
「出来たわ!」
「よしよし、良い感じだ!もう1回同じように頼む!俺はソースを即席で作る」
「任せて」
俺は微塵切りにしてもらったネギタマと醤油、砂糖、以前にカエデと買ったタレを混ぜて、味を見ながら足りない調味料を足していく。
「よし、こんな感じで良さそうだ」
「ご主人様、タレ少し味見していい?」
「あぁいいぞ、あーん」
「あっ、あーん……っ!美味しい!」
「だろ?力作だ」
「あら、カエデだけ羨ましいわね、私も味見させて欲しいわ」
「分かった分かった、あーん」
「あーん、んんっ良い味ね」
ハンバーグも8つ全て出来上がったので、最後に渾身のタレをかけて出来上がりだ!
「これが俺の世界の再現食、ハンバーグだ!!」
「出来たぁぁ!」
「レシピは覚えたわ、これで私もコウガ様の胃袋も……」
「メイラン何か言ったか?」
「いえ、楽しみだなって言ったのよ」
「だな、みんなで作ったハンバーグだ!席に座って早く食べようか」
「「はーい!」」
みんな席に付き、いただきますをする。
カエデが我先にとハンバーグを切り分けて1切れを口に運ぶ。
「っ!!!美味しい!!!肉汁が凄いよ!」
「上手く出来て良かった、俺も1口……、おお!モウの肉美味いな!肉汁もしっかり閉じ込められてて良い感じだ!」
「えぇ、あのネトネトしたお肉がこんな風になるなんで思わなかったわ。美味しいわね」
「にゃーう」
シェミィ含め全員が美味しいと太鼓判を押されたハンバーグ、これから1~2週間に1~2回食事に出てくる事になる思い出の料理となった。
初めてシェミィを連れて来た時に少し怖がっていた門番だ、今はそれ程怖がってる様子はなく、どちらかと言えば野良猫を眺めるかのような顔をしていた。
「あれ、シェミィ?どうしてここに?」
「あぁコウガさんおかえりなさい。10分前より従魔が来まして、貴女方の帰りを待っていたかのようでしたよ」
シェミィがカエデに擦り寄ってくる、おかえりと言ってくれてるように感じた。
「シェミィ、お迎えに来てくれたんだね!ありがとう!」
「10分前に来たって言ってたわよね?私達がもうすぐ帰って来る事を感じ取ってたのかしら?」
「かもしれないな、テイムによってカエデの魔力を感じ取れるようになってるのかも。さて、シェミィも来てくれたんだし、みんなでのんびり帰ろうか!」
「そだね!」
テイムって口に出して思い出した、明日はテイムについて調べに行こうか、従順テイムのやり方しか分からないからな。
そして依頼やクエストをこなすついでに、俺とカエデでテイム練習しても良いかもしれない。
後、メイランから貰ったドラゴン族変身やドラゴン特性についても教えて貰わなくちゃな。
「なぁ明日の事なんだが、テイムの勉強とドラゴン族変身の慣らしをやりたいんだがいいか?クエストや依頼をこなしつつになるんだが」
「もちろん!私もテイム練習しなきゃって思ってたからね」
「ええ、私もそれで良いわ。コウガ様にドラゴン族の素晴らしさを体験して頂きたいわ」
「よし、決まりだな!」
「ならまずはテイムについて調べなきゃね」
「だな」
そして宿に戻ってきた俺達は、ハンバーグを作る為にキッチンを借りる。
ここに客用の簡易キッチンがあるという、前世じゃ信じられない光景を目の当たりにした。
やはり冒険者は自炊する人も多いらしく需要があるらしい。
「さて、ハンバーグ作りを始めよう!」
「おー!」
「ふふ、楽しみだわ」
宿からの借り物エプロンを着けて手洗いをしてから調理に取り掛かる。
材料を全て取り出して全員の手が届く範囲に置いておき、計量カップや計り、調味料も並べておく。
「まずはカエデ、パンを小さくちぎって皿に入れといてくれるか?」
「わかった、小さくってどれくらいとかあるの?」
パンを手に取り1度小さくちぎって見せる。
「これくらいでいい、外側の硬い生地も関係なく全てちぎって欲しい」
「はーい!」
カエデに俺の手に持っているパンを手渡すとちぎり始めた。
「メイランはネギタマを微塵切りに出来るか?」
「ええ、出来るわよ」
「よし、なら1玉を微塵切りにしてこの皿に入れてくれ、これはハンバーグに使う。そして新たなネギタマを4等分に切って、それの1つだけをまた微塵切りにして別皿に入れてくれるか?それはソースに使う」
「分かったわ、まずはネギタマの外側を剥いて洗って来るわね」
「おっけー、頼むぞ」
メイランが流し台に行ったのを確認してから俺はモウの肉を手に取る。
ブラックモウにしても良かったのだが、あれは多分ステーキの方が美味しいと思い普通のモウ肉にした。
作るのは牛100%ハンバーグだ、合挽き肉にしても良いのだが、牛と豚の比率は知らないのでやめておいた。
モウの肉を小さくなるように細かく切っていく、そして脂の部分の1部は切り離しておき、フライパン使う際の油にする、要するに牛脂だな。
肉を細かくしているとメイランも隣に来てネギタマを微塵切りにしていく。
きっと料理上手できちんと基本を教えてくれる母だったのだろう、手つきはゆっくりなのだが微塵切りのやり方や手の形も基本通りで迷いがない。
暫く肉を切っていると。
「ご主人様、パンちぎり終わったよ!」
パンの用意が終わったようだ、肉とネギタマももうすぐ用意出来るから先に材料をボウルに入れてもらうか。
「ならカエデ、そこにあるボウルにちぎったパン入れて、モウ乳を計量カップの数字100になるまで入れてボウルに入れて欲しい、クックの卵も1個入れたいんだが割れるか?」
「大丈夫!」
「おっけー任せた」
指示しながらも肉を切っていると
コンコングシャ
「あっ!」
卵を割ろうとして力を入れすぎたようだ、卵が崩れて机とエプロンがベタベタになった。
「カエデ!大丈夫か!?」
「あ、う……うん、大丈夫……ごめんなさい、力加減間違えた……」
あれだけ上機嫌だったカエデの耳と尻尾がへにょんと垂れてしまっった、そして若干涙目に。
「失敗は誰にでもある、大丈夫だぞカエデ。片付けてからもう1回やろう」
「うん……」
「微塵切り終わったわ、コウガ様はお肉がまだ終わってないみたいだし、カエデの方は私に任せて欲しいわ。ネギタマはどうしたらいいかしら?」
「すまん、頼む。ネギタマはここに置いといてくれ」
「分かったわ。じゃカエデ、エプロンを洗いに行ってきて、卵を片付けと拭き掃除は私がやるわ、」
「ありがとうメイランちゃん……」
2人は卵を片付けて拭き掃除をしてもらってる間に肉を切り終わったので、フライパンに脂を入れて馴染ませた後にネギタマを入れて飴色になるまで炒める、そして皿にあけて粗熱を取る。
そうしてる内に拭き掃除が終わったようだ。
「カエデ大丈夫かしら?」
「今は落ち込んでるだろうが、もう1度やって成功させてあげたら大丈夫だ、俺がサポートしてやればいい」
「そうね」
カエデが新しいエプロンを着けて帰ってきた。
「ただいま、ごめんご主人様、メイランちゃん」
「さっきも言ったが、失敗は誰にでもあるから大丈夫だカエデ、もう1回チャレンジしようか」
「うん、大丈夫かな……」
「大丈夫、俺が後ろから一緒にやってあげるから」
俺がカエデの後ろから手を回しカエデの手を握る。
「あっ……」
「さ、やるぞ」
カエデの手を握り、卵を1つ手に取ってコンコンと叩くと卵がひび割れる。
「力加減はこれくらいでいい、後はゆっくり親指を割れ目に入れてパカッと開くんだ」
「う、うん!」
ゆっくり割れ目に親指を入れてパカッと横に開くと白身と黄身がボウルの中へ。
「出来た……!」
「よしよし、よくやった」
「ありがとうご主人様!」
若干顔が赤くなってるカエデだが、上手く出来て気分が上がってきたようだ。
「よし、それじゃ肉とネギタマを入れてから、塩と胡椒を入れて……っと、じゃカエデにもうひと仕事だ。このボウルの中身を素手でこねるんだ」
「これを素手で!?」
「あぁ、俺が手本を見せてやるから真似てくれ」
俺が少し手本を見せる、ぐちゃぐちゃと音をたてて、グーパーグーパーしながらこねる
「こんな感じだ、カエデやってみてくれ」
「わ、分かった!」
カエデが恐る恐るボウルに手を入れてこね始める。
「うわぁ……ネトネトするね」
「だろ?全部が均等に混ざるまでこねてくれ」
「分かった!」
カエデが一生懸命ハンバーグのタネをこねる、するとタネが纏まってきたので丸くするように伝えると、ハンバーグのタネは綺麗な丸になった。
「よしよし、こんなもんだな。これを4等分にして、4等分でもまだ大きいから更に半分にしようか。カエデ、これをまず縦と横に切れ込みを入れて4等分にして1つを俺に渡してくれ」
「分かった、よいしょ……こう?」
縦と横に綺麗に切れ込みを入れて、1つを俺に手渡してくれた。
「おっけーだ、これを更に半分にして……メイラン、これを持って俺と同じようにしてくれるか?これがかなり重要な過程なんだ」
「わ、分かったわ。大丈夫かしら」
「大丈夫、同じようにしてくれたらいいからな。まずは見ててくれ」
俺はハンバーグのタネを両手で楕円形になるように形作る、そして片手から片手に軽く投げるように空気を抜く。
「「おお……」」
ペタン、ペタンと音を鳴らし、若干大きめなので余分に20回程空気抜きをして真ん中を凹ませる。
「こんな感じだ、この投げる事でこの塊の中の空気が抜けるんだ。」
「ご主人様、なんで空気を抜く必要があるの?」
「それはな、焼く時に空気がこの中にあると、空気が膨張してハンバーグの形が崩れて肉汁も逃げちゃうんだ」
「なんと!肉汁美味しいのに勿体ない!」
「そう、形が美しくない上美味しさ半減だ。嫌だろ?だからこの過程は怠らずしっかりな。頼むぞメイラン」
「分かったわ」
メイランも真似して形を作り、片手から片手にペタンペタンと空気抜きを行う、1回見ただけでなかなか上手くやれている。
「ご主人様、私にも出来ないかな?でも落としちゃったらやばいよね……」
「それならやりやすいやり方があるぞ、空気の抜けが若干悪くなるが、少し回数増やせば大丈夫だろう。よく見ててくれ」
「うん!」
ハンバーグのタネを手に取り形を作る、そして片手で持ち上げてもう片手を真下に置く、そしてそのままタネを手放して真下の手の上に自然落下させる。
「これなら投げる必要がなくて落とす事ない、カエデみたいに心配な人でも出来るぞ。25回くらいしたら大丈夫だろう」
「分かった!やってみる!」
カエデがタネを手に取ると形を作って自然落下させる、片手をちゃんと真下に置いていた為に落とさずキャッチ出来た。
「これなら私でも出来そう!」
「よしよし、これを2つ頼むぞ」
「うん!」
俺達3人でハンバーグの形を作っていく、4等分の更に半分の為8つのハンバーグの形が出来上がった。
「綺麗に出来たな、2人とも良く頑張ってくれた。これで後は焼いたらハンバーグの肉は出来上がりだ」
「これを焼いていくのね、普通に焼けば良いのかしら?」
「表面は中火の少し弱めくらいで3分くらい、裏面は裏返してからすぐに弱火にして蓋をして蒸し焼きにするんだ」
「なるほど、熱を籠らせて中まで火を通すのね?」
「その通り、蒸し焼きは1個1個が大きめだから……大体12分くらい蒸し焼きして肉汁が透明色ならOKだ」
「分かったわ、コウガ様しっかり見ててくれると助かるわね、間違えそうならすぐ言ってちょうだい」
「了解だ」
「頑張ってメイランちゃん!」
フライパンに脂を馴染ませて弱めの中火にかけてハンバーグを4つ乗せる、3分後に焼き色を見てから裏返し弱火にして蓋をした。
「こんな感じかしらね」
「あぁ、いいぞ。これで12分待ちだな」
「了解、蓋は開けちゃダメなのよね?」
「熱が逃げちゃうから12分きっちり待ってくれな、俺はキャベジを千切りにしてくる」
「分かったわ」
キャベジを千切りにしていくが、洗うのと切り終わるまでに10分と掛からなかった。
「カエデ、皿にこのキャベジを乗せてくれるか?」
「うん!」
カエデが手際よくキャベジを更に盛り付けてくれる。
そろそろ12分だ。
「メイラン、1度蓋をあけてフォークで軽くハンバーグを刺してくれるか?」
「ええ」
軽くフォークを刺すと透明な肉汁が溢れてきた、4つ共同じだった。
「よし、良い焼き具合だ!この4つを皿へ!」
メイランがキャベジの乗った皿にハンバーグを盛り付けていく。
「出来たわ!」
「よしよし、良い感じだ!もう1回同じように頼む!俺はソースを即席で作る」
「任せて」
俺は微塵切りにしてもらったネギタマと醤油、砂糖、以前にカエデと買ったタレを混ぜて、味を見ながら足りない調味料を足していく。
「よし、こんな感じで良さそうだ」
「ご主人様、タレ少し味見していい?」
「あぁいいぞ、あーん」
「あっ、あーん……っ!美味しい!」
「だろ?力作だ」
「あら、カエデだけ羨ましいわね、私も味見させて欲しいわ」
「分かった分かった、あーん」
「あーん、んんっ良い味ね」
ハンバーグも8つ全て出来上がったので、最後に渾身のタレをかけて出来上がりだ!
「これが俺の世界の再現食、ハンバーグだ!!」
「出来たぁぁ!」
「レシピは覚えたわ、これで私もコウガ様の胃袋も……」
「メイラン何か言ったか?」
「いえ、楽しみだなって言ったのよ」
「だな、みんなで作ったハンバーグだ!席に座って早く食べようか」
「「はーい!」」
みんな席に付き、いただきますをする。
カエデが我先にとハンバーグを切り分けて1切れを口に運ぶ。
「っ!!!美味しい!!!肉汁が凄いよ!」
「上手く出来て良かった、俺も1口……、おお!モウの肉美味いな!肉汁もしっかり閉じ込められてて良い感じだ!」
「えぇ、あのネトネトしたお肉がこんな風になるなんで思わなかったわ。美味しいわね」
「にゃーう」
シェミィ含め全員が美味しいと太鼓判を押されたハンバーグ、これから1~2週間に1~2回食事に出てくる事になる思い出の料理となった。
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