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学校視察
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下界を観察しているが、映像は見られるものの下界の人達の声は聞こえない。
基本的にサチを通さないと何を言っているのかわからないのだ。
聞こうと思えば聞けるらしいが、それをやると俺の場合、全世界の声が一斉に聞こえてしまうので止められている。
前の神様の爺様はこれを一人でやってのけていたのだから凄い人だったんだなと仕事をしていて感じる。
ただ、決定的に運営力が無いとサチがバッサリ言ってたが。
さて、今日は穀倉地帯にある老夫婦の家に焦点を当てて観察している。
朝は早く、作る朝食は自分達の分を大幅に超える大容量。
手伝いで泊まりに来ている冒険者の分だ。
役割分担しながら夫婦で手際よく調理している。
婆さんや、あれ取っとくれ。
爺さんあれじゃわからんがな。これじゃろ?
おーこれじゃ。さすがばあさんじゃ。
そんな会話してるんだろうな。見ていてほっこりする。
日中は畑に出て農作業。
といっても大半の作業は冒険者達がやってくれるので指示だけ出す感じ。
爺さん、ここはこれでいいんか?
おぉ、それで進めとくれ。おぬしは筋がいいの。
ははは、冒険者続けられなくなったら農家にでもなるかな。
みたいな会話をきっとしているんだろう。
ここに来る冒険者達は若者が大半で、残りは第一線から退いたベテランという面子だ。
脂の乗った稼ぐ層は他の報酬のいい仕事があるので滅多にこっちには来ないようだ。
結構この若者とベテランの組み合わせがいい仕事を生み出している。
体力のある若者にベテランが技術を教え、冒険者として育つ。
育った若者は第一線で働き、ベテランになると自分が若かった頃のようにここに来て若者に教える。
俺が若かった頃はなー。
へー、勉強になるっす!
たぶんそんな会話しながら農作業しているんだろう。
夜になると老夫婦から夕食が振舞われ、仲良く食べている様子が伺える。
ここでは酒は滅多に出ない。夜に見回りがあるからだ。
見回りも若者とベテランの組み合わせ。
夜ならではの立ち回りなどを指導している姿が見える。
いいか、敵を見つけても直ぐに自分でどうにかしようとするんじゃない。まずは敵の規模を把握するんだ。
はい!ためになります!
元気なのはいいが、夜は静かにな。
そんな感じで冒険者達は代わる代わる朝まで集落を警備してくれている。
「あのっソウっ」
「なんだ?」
サチが何か堪えた様子でこっちを振り返る。
「いくらやる事が無いからって映像見ながら声を当てるのはちょっと」
「あ、声出てた?」
「はい。もーおかしくておかしくて、おなか痛いです」
何を堪えてるのかと思ったら笑うのを堪えてたのか。
今日は願い事も少なかったので、観察に専念してたんだが、まさか口に出てるとは。お恥ずかしい。
「それで実際はどうなんだ?」
「大体あっていましたよ。一致している部分があって面白かったです」
「そうか」
案外表情だけで分かるものだな。
下界の人達の事はある程度わかったんだけどな。
「だー!下を引っ張るな!脱げる!」
「いえーい、ぬがせー!」
「あははははは」
今俺は複数の子供に取り囲まれて下の服を脱がされそうになるのを必死に押さえている。
子供の思考はさっぱりわからない。
どうしてこうなった!
「ソウ、今日は学校へ行きます」
仕事終わりに今日の予定をサチが教えてくれる。
「学校?何か習ってるのか?」
「いえ、そうではなく視察です。定期的に様子を見に行って顔を覚えてもらうのです」
「あー、サチは有名人だもんな」
「その有名人というのやめてください。・・・急に恥ずかしくなります」
口を尖らせて照れてる。可愛い。
「とにかく。顔を覚えてもらうという意味ではソウもその対象なのですから同行してください」
「あいよ」
転移して少し歩いた先にはレンガ造りの建物があった。
その上空には子供の天使と大人の天使が飛びまわっている。
ここが学校かー。
「まあまあまあ、サチナリア様、ようこそおいでくださいました」
校舎に近付くと中からお迎えの人が出てきた。
「お久しぶりです、学校長。私もここの出身なのですから様付けはやめてくださいと前にも言ったではないですか」
「いえいえ、これは必要なことなのよ。それにこんな立派になった子をいつまでもちゃんで呼べないわ」
「はぁ、そういうものですか」
「うふふ、そういうものよ」
へー。という事はここはサチの母校でもあるのか。
それに割と押しの強いサチがこうも簡単に押し負けるとは。
この学校長という人はなかなか凄い人なのかもしれない。
「それで学校長、こちら先日の説明会でお話した神様のソウです」
「まあまあ、ご挨拶が遅れて申し訳ありません。私この学校の学校長を勤めさせていただいておりますミラと申します。以後よろしくお願いいたします、ソウ様」
「こちらこそよろしく」
両手でこちらの手を握って挨拶をしてくる。
なんだろう、この暖かい手はとても人を落ち着かせる不思議な感じがする。
「ささ、立ち話もなんですから中へどうぞ」
ミラへ促され、俺とサチは校舎の中に入った。
ミラに続いて校内を歩き、来賓室に案内される。
校内は木を多く使ったつくりをしており、どことなく温かみのある雰囲気をしている。
別世界だから校内の構造も違うのかと思ってたが、俺の知ってる学校とあまり変わりは無い。
効率を求めると廊下と部屋という形になるのかな。
来賓室の椅子に座り、出されたお茶に口を付ける。
来賓室と言っても俺が知ってる学校の校長室のような質のいい椅子が置いてあるとかそういうのではなく、空き部屋に椅子とテーブルを置いただけと言う感じだ。
「あら、じゃあ泳げるようになってきたの?」
「はい、ソウのおかげで何とか克服してきました」
「まあまあ、それはよかったわねぇ」
「えぇ、雨の日はお風呂が楽しい事も分かりましたし」
「あら、お風呂?そういえばあの人最近お風呂作りに凝ってるって言ってたわね」
「いいですよ、あれは」
「そうなの?じゃあ今度みせてもらうかしら」
サチとミラはこんな感じで世間話を続けている。
ちょっと気になる事もあるが、話の腰を折るのも悪いし、あとでサチに聞いてみるかな。
ぼんやりお茶を啜りながら世間話をしている二人を見ていると鐘が鳴る。
「あら、もうこんな時間。そろそろお二人を子供達に紹介するので移動しましょうか」
「はい」
「あいよ」
基本的にサチを通さないと何を言っているのかわからないのだ。
聞こうと思えば聞けるらしいが、それをやると俺の場合、全世界の声が一斉に聞こえてしまうので止められている。
前の神様の爺様はこれを一人でやってのけていたのだから凄い人だったんだなと仕事をしていて感じる。
ただ、決定的に運営力が無いとサチがバッサリ言ってたが。
さて、今日は穀倉地帯にある老夫婦の家に焦点を当てて観察している。
朝は早く、作る朝食は自分達の分を大幅に超える大容量。
手伝いで泊まりに来ている冒険者の分だ。
役割分担しながら夫婦で手際よく調理している。
婆さんや、あれ取っとくれ。
爺さんあれじゃわからんがな。これじゃろ?
おーこれじゃ。さすがばあさんじゃ。
そんな会話してるんだろうな。見ていてほっこりする。
日中は畑に出て農作業。
といっても大半の作業は冒険者達がやってくれるので指示だけ出す感じ。
爺さん、ここはこれでいいんか?
おぉ、それで進めとくれ。おぬしは筋がいいの。
ははは、冒険者続けられなくなったら農家にでもなるかな。
みたいな会話をきっとしているんだろう。
ここに来る冒険者達は若者が大半で、残りは第一線から退いたベテランという面子だ。
脂の乗った稼ぐ層は他の報酬のいい仕事があるので滅多にこっちには来ないようだ。
結構この若者とベテランの組み合わせがいい仕事を生み出している。
体力のある若者にベテランが技術を教え、冒険者として育つ。
育った若者は第一線で働き、ベテランになると自分が若かった頃のようにここに来て若者に教える。
俺が若かった頃はなー。
へー、勉強になるっす!
たぶんそんな会話しながら農作業しているんだろう。
夜になると老夫婦から夕食が振舞われ、仲良く食べている様子が伺える。
ここでは酒は滅多に出ない。夜に見回りがあるからだ。
見回りも若者とベテランの組み合わせ。
夜ならではの立ち回りなどを指導している姿が見える。
いいか、敵を見つけても直ぐに自分でどうにかしようとするんじゃない。まずは敵の規模を把握するんだ。
はい!ためになります!
元気なのはいいが、夜は静かにな。
そんな感じで冒険者達は代わる代わる朝まで集落を警備してくれている。
「あのっソウっ」
「なんだ?」
サチが何か堪えた様子でこっちを振り返る。
「いくらやる事が無いからって映像見ながら声を当てるのはちょっと」
「あ、声出てた?」
「はい。もーおかしくておかしくて、おなか痛いです」
何を堪えてるのかと思ったら笑うのを堪えてたのか。
今日は願い事も少なかったので、観察に専念してたんだが、まさか口に出てるとは。お恥ずかしい。
「それで実際はどうなんだ?」
「大体あっていましたよ。一致している部分があって面白かったです」
「そうか」
案外表情だけで分かるものだな。
下界の人達の事はある程度わかったんだけどな。
「だー!下を引っ張るな!脱げる!」
「いえーい、ぬがせー!」
「あははははは」
今俺は複数の子供に取り囲まれて下の服を脱がされそうになるのを必死に押さえている。
子供の思考はさっぱりわからない。
どうしてこうなった!
「ソウ、今日は学校へ行きます」
仕事終わりに今日の予定をサチが教えてくれる。
「学校?何か習ってるのか?」
「いえ、そうではなく視察です。定期的に様子を見に行って顔を覚えてもらうのです」
「あー、サチは有名人だもんな」
「その有名人というのやめてください。・・・急に恥ずかしくなります」
口を尖らせて照れてる。可愛い。
「とにかく。顔を覚えてもらうという意味ではソウもその対象なのですから同行してください」
「あいよ」
転移して少し歩いた先にはレンガ造りの建物があった。
その上空には子供の天使と大人の天使が飛びまわっている。
ここが学校かー。
「まあまあまあ、サチナリア様、ようこそおいでくださいました」
校舎に近付くと中からお迎えの人が出てきた。
「お久しぶりです、学校長。私もここの出身なのですから様付けはやめてくださいと前にも言ったではないですか」
「いえいえ、これは必要なことなのよ。それにこんな立派になった子をいつまでもちゃんで呼べないわ」
「はぁ、そういうものですか」
「うふふ、そういうものよ」
へー。という事はここはサチの母校でもあるのか。
それに割と押しの強いサチがこうも簡単に押し負けるとは。
この学校長という人はなかなか凄い人なのかもしれない。
「それで学校長、こちら先日の説明会でお話した神様のソウです」
「まあまあ、ご挨拶が遅れて申し訳ありません。私この学校の学校長を勤めさせていただいておりますミラと申します。以後よろしくお願いいたします、ソウ様」
「こちらこそよろしく」
両手でこちらの手を握って挨拶をしてくる。
なんだろう、この暖かい手はとても人を落ち着かせる不思議な感じがする。
「ささ、立ち話もなんですから中へどうぞ」
ミラへ促され、俺とサチは校舎の中に入った。
ミラに続いて校内を歩き、来賓室に案内される。
校内は木を多く使ったつくりをしており、どことなく温かみのある雰囲気をしている。
別世界だから校内の構造も違うのかと思ってたが、俺の知ってる学校とあまり変わりは無い。
効率を求めると廊下と部屋という形になるのかな。
来賓室の椅子に座り、出されたお茶に口を付ける。
来賓室と言っても俺が知ってる学校の校長室のような質のいい椅子が置いてあるとかそういうのではなく、空き部屋に椅子とテーブルを置いただけと言う感じだ。
「あら、じゃあ泳げるようになってきたの?」
「はい、ソウのおかげで何とか克服してきました」
「まあまあ、それはよかったわねぇ」
「えぇ、雨の日はお風呂が楽しい事も分かりましたし」
「あら、お風呂?そういえばあの人最近お風呂作りに凝ってるって言ってたわね」
「いいですよ、あれは」
「そうなの?じゃあ今度みせてもらうかしら」
サチとミラはこんな感じで世間話を続けている。
ちょっと気になる事もあるが、話の腰を折るのも悪いし、あとでサチに聞いてみるかな。
ぼんやりお茶を啜りながら世間話をしている二人を見ていると鐘が鳴る。
「あら、もうこんな時間。そろそろお二人を子供達に紹介するので移動しましょうか」
「はい」
「あいよ」
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