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内装相談会
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「ほー、これは見事な」
完成した新しい建物を前に感嘆の声が出る。
この農園には他にも建物がいくつかあるが、それよりかなり洒落た建物になっている。
今までの建物は倉庫や寮といった雰囲気が強かったがこれはレストランという感じだな。
「一応料理を出す場として恥ずかしくないような作りに依頼しました」
俺の隣で説明するのはさっき自己紹介してもらったリミ、それにユキと天機人のワカバとモミジもいる。
サチはルミナと一緒に農園の現状視察に行ってしまった。
現状視察も大事だからな、適材適所という事なんだろう。
「なかなかいいじゃないか」
「ありがとうございます。しかし問題がありまして」
「問題?」
「とりあえず中へ、どうぞ」
ユキに促され中に入るとまだ何も無い、テーブルも椅子すらない、未着手な状態だ。
ワカバとモミジが広い空間の中を追いかけっこしてる。自由だね君ら。
「どういうこと?」
建物が形になったと聞いたから来たんだが、これではまだ料理を出す環境じゃないな。
「恥ずかしながら私達では何が必要か見当がつかなくて、色々相談はしたのですが」
あー、ノウハウが無いから内装をどうすりゃいいのかわからないのか。
それもそうか。食に関しては初心者だからなぁ。
「それで、できれば、助言をもらえたら、と」
なるほど、俺が呼ばれた理由が分かった。
別に自分達でやってくれてもいいと思ったが、元々彼らは警備隊だから困った時は上に指示を仰ぐ習慣が付いてるんだろう。
「うん、わかった。どこか座って相談しよう」
「はい」
「ワカバ、モミジ、遊んでないで行くわよ」
「はーい!」
「あい」
以前造島師が大収穫際のときに作った机と椅子に座る。
「さて、とりあえずどういう方針か教えてもらえる?」
「わかりました」
リミが率先して答えてくれる。
今のところ決まっている事が農園関係者以外に提供する場合、ユキやリミといった上手い人の料理を出す。
そして配給の担当は基本的にはワカバとモミジの二人。
それに加えて手の空いてる農園関係者が加わるという感じ。
「私はテーブルと椅子を並べればいいと言ったのですが、ユキが渋りまして」
「渋るってそんな・・・」
「ユキちゃんは料理を作るところもあった方がいいって、ねっ!」
「う、うん」
あーそうか。
会話を聞いて自分の固定概念に気付く。
空間収納があるから別に厨房を作る必要がないのか。
うちのキッチンも最初は簡単な水洗いが出来る流しがあるぐらいの質素なものだったなそういえば。
今はあまり持ち運んだり移動しない調理器具が置いてあって賑やかになっているけど。
「どうしてユキは必要だと思ったんだ?」
「えっと、料理を作るところからみてもらった方がいいと思ったから、です」
「わかる」
モミジが深く頷いてる。
「調理する場所を作ると座れる場所が減りますし、私は反対したのですが」
「えー、だって二人とも作ってるところカッコいいじゃん、来た人にも見てもらおうよー」
「と、こんな感じにワカバとモミジをはじめユキの意見を推す者がいまして」
「なるほどね」
効率を考えればリミの案がいいとは思うが、ユキが言う案も心に与える事を考えるとこれはこれで良い案だと思う。
さて、どうしたものかな。
「ねぇ、リミちゃん」
「なに?ユキ」
「この前の料理してるソウ様、かっこよくなかった?」
「・・・かっこよかったわよ」
「憧れない?」
「・・・憧れる」
「作れば私達もそうやって見てもらえるよ?」
「う・・・」
大人しいユキがリミを言いくるめてる。それだけ熱意があるのか。
それより本人を前にそういう会話するの止めてくれないかな。物凄く恥ずかしいんだが。
「ソウ様、真っ赤」
「冷えたタオルありますよー」
茶化すモミジに気の利いたワカバの対応でますます恥ずかしい。ふぃー、顔が熱い熱い。
「・・・はぁ、わかったわよ。ユキの案でいきましょ」
「うん、リミちゃん、ありがとう」
「そういうわけでソウ様、調理場所を作る方向になりました」
「うん、わかった」
調理場の有無については俺の出番なかったな。
その後もあれこれ相談は続いた。
「個室?部屋を作るのですか?」
「あった方がよくないか?静かに食べたい人もいるだろう」
「あ、それわかる」
ユキが肯定すると横でモミジがうんうんと頷く。
「舞台?」
「この前みたいな時に集まった時に色々できるだろ」
「それいいですね!」
「確かに集会するとき便利ですね」
これにはリミとワカバが賛同する。
「この倉庫の中にある更に小さい仕切りはなんだ?」
「反省室です。主につまみ食いをするルミナテース様を入れます」
「えぇ・・・」
あいつ園長なのに何やってんだ。
「壁にはモミジちゃんの絵を」
「却下」
「それはちょっと・・・」
「いらないだろ」
「姉さん黙って」
「全部言う前に否定された!?」
そんな感じで相談は進み、内装案が次第に形になっていった。
「こんなもんか」
「そうですね。お手数おかけしました」
「完成を楽しみにしてるよ」
「はい、ありがとうございます」
さてと、サチはまだ戻ってこないようだし、少し園内を見て回ろうかな。
完成した新しい建物を前に感嘆の声が出る。
この農園には他にも建物がいくつかあるが、それよりかなり洒落た建物になっている。
今までの建物は倉庫や寮といった雰囲気が強かったがこれはレストランという感じだな。
「一応料理を出す場として恥ずかしくないような作りに依頼しました」
俺の隣で説明するのはさっき自己紹介してもらったリミ、それにユキと天機人のワカバとモミジもいる。
サチはルミナと一緒に農園の現状視察に行ってしまった。
現状視察も大事だからな、適材適所という事なんだろう。
「なかなかいいじゃないか」
「ありがとうございます。しかし問題がありまして」
「問題?」
「とりあえず中へ、どうぞ」
ユキに促され中に入るとまだ何も無い、テーブルも椅子すらない、未着手な状態だ。
ワカバとモミジが広い空間の中を追いかけっこしてる。自由だね君ら。
「どういうこと?」
建物が形になったと聞いたから来たんだが、これではまだ料理を出す環境じゃないな。
「恥ずかしながら私達では何が必要か見当がつかなくて、色々相談はしたのですが」
あー、ノウハウが無いから内装をどうすりゃいいのかわからないのか。
それもそうか。食に関しては初心者だからなぁ。
「それで、できれば、助言をもらえたら、と」
なるほど、俺が呼ばれた理由が分かった。
別に自分達でやってくれてもいいと思ったが、元々彼らは警備隊だから困った時は上に指示を仰ぐ習慣が付いてるんだろう。
「うん、わかった。どこか座って相談しよう」
「はい」
「ワカバ、モミジ、遊んでないで行くわよ」
「はーい!」
「あい」
以前造島師が大収穫際のときに作った机と椅子に座る。
「さて、とりあえずどういう方針か教えてもらえる?」
「わかりました」
リミが率先して答えてくれる。
今のところ決まっている事が農園関係者以外に提供する場合、ユキやリミといった上手い人の料理を出す。
そして配給の担当は基本的にはワカバとモミジの二人。
それに加えて手の空いてる農園関係者が加わるという感じ。
「私はテーブルと椅子を並べればいいと言ったのですが、ユキが渋りまして」
「渋るってそんな・・・」
「ユキちゃんは料理を作るところもあった方がいいって、ねっ!」
「う、うん」
あーそうか。
会話を聞いて自分の固定概念に気付く。
空間収納があるから別に厨房を作る必要がないのか。
うちのキッチンも最初は簡単な水洗いが出来る流しがあるぐらいの質素なものだったなそういえば。
今はあまり持ち運んだり移動しない調理器具が置いてあって賑やかになっているけど。
「どうしてユキは必要だと思ったんだ?」
「えっと、料理を作るところからみてもらった方がいいと思ったから、です」
「わかる」
モミジが深く頷いてる。
「調理する場所を作ると座れる場所が減りますし、私は反対したのですが」
「えー、だって二人とも作ってるところカッコいいじゃん、来た人にも見てもらおうよー」
「と、こんな感じにワカバとモミジをはじめユキの意見を推す者がいまして」
「なるほどね」
効率を考えればリミの案がいいとは思うが、ユキが言う案も心に与える事を考えるとこれはこれで良い案だと思う。
さて、どうしたものかな。
「ねぇ、リミちゃん」
「なに?ユキ」
「この前の料理してるソウ様、かっこよくなかった?」
「・・・かっこよかったわよ」
「憧れない?」
「・・・憧れる」
「作れば私達もそうやって見てもらえるよ?」
「う・・・」
大人しいユキがリミを言いくるめてる。それだけ熱意があるのか。
それより本人を前にそういう会話するの止めてくれないかな。物凄く恥ずかしいんだが。
「ソウ様、真っ赤」
「冷えたタオルありますよー」
茶化すモミジに気の利いたワカバの対応でますます恥ずかしい。ふぃー、顔が熱い熱い。
「・・・はぁ、わかったわよ。ユキの案でいきましょ」
「うん、リミちゃん、ありがとう」
「そういうわけでソウ様、調理場所を作る方向になりました」
「うん、わかった」
調理場の有無については俺の出番なかったな。
その後もあれこれ相談は続いた。
「個室?部屋を作るのですか?」
「あった方がよくないか?静かに食べたい人もいるだろう」
「あ、それわかる」
ユキが肯定すると横でモミジがうんうんと頷く。
「舞台?」
「この前みたいな時に集まった時に色々できるだろ」
「それいいですね!」
「確かに集会するとき便利ですね」
これにはリミとワカバが賛同する。
「この倉庫の中にある更に小さい仕切りはなんだ?」
「反省室です。主につまみ食いをするルミナテース様を入れます」
「えぇ・・・」
あいつ園長なのに何やってんだ。
「壁にはモミジちゃんの絵を」
「却下」
「それはちょっと・・・」
「いらないだろ」
「姉さん黙って」
「全部言う前に否定された!?」
そんな感じで相談は進み、内装案が次第に形になっていった。
「こんなもんか」
「そうですね。お手数おかけしました」
「完成を楽しみにしてるよ」
「はい、ありがとうございます」
さてと、サチはまだ戻ってこないようだし、少し園内を見て回ろうかな。
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