上 下
9 / 120

今いる世界

しおりを挟む
「ところで今日はどういった御用向きで?」

落ち着いたところでアリスが切り出してくる。

やっと本題にいけそうだ。

「何しに来たのでしたっけ」

とぼけるサチの尻の肉をアリスには見えないようにつまんで引っ張る。

「あっちょっと。大丈夫です、ちゃんと覚えていますから」

なんでちょっとまんざらでもない顔するかな。

俺がアリス達を気にするから構ってほしいんかな。

「今日はソウに色々知ってもらおうと思って」

「詳しくお伺いしても?」

アリスがビシッとした姿勢で聞く体勢をとるのでざっくり俺の経緯を説明する。

「なるほど、それで先ほど駆け出しと仰ってたのですね」

「そゆこと。すまんが頼む」

「お任せください。優秀な者を召喚致しますので少々お待ちください」

その場で直立状態で目を閉じたと思ったらものの数分でメイドが二人入ってくる。

「お呼びでしょうか」

二人ともさっき名付けた子達だ。

確か空色の服がシンディで、濃い紫の服がユーミだったはず。

「シンディさん、ユーミさん。本日の業務は全て別の者に任せてこちらの手伝いをしてください」

よし、合ってた。

「了解です。下の者に指示します」

二人は目を閉じてさっきアリスが二人を呼んだ時と同じように静止する。

サチみたいに念じると意思疎通ができるのかな。いいな、便利そうだ。

「完了。それでアリスさん、何をすれば?」

シンディが先に目を開けてアリスに聞く。クールな感じするな。

「こちらも終わりました、ふぅ」

ユーミも目を開ける。こっちは頑張り屋って感じかな。

「はい。主様の質問に答えるのが私達の今日の仕事です」

「すまんね」

通常業務に割り込んでしまったようで悪い気がしてくる。

「いえ、旦那様のお役にたてるのであれば」

「が、頑張ります!」

ホント見た目が余り変わらないのにコントラストあるな。

「本当は私が全部教えてもいいのですが、ソウは異世界人なので情報集積が得意な貴女達なら正確性が増すかと思いまして」

「なるほど」

サチの言葉にメイドと俺が頷く。

「なんでソウまで一緒に頷いているのですか」

「いや、言われてみればサチでも説明できるのに何でここに来たのかなって思ってて」

「誰でも間違いをしますし、解釈の違いも出来れば避けたいですから」

あー、あの爺さん見てればそういう考えにもなるわな。

「それでは主様、よろしくお願いします」

「うん、よろしく」

正面に机を挟んでメイドが三人。

隣にはサチ。

何かスパルタ家庭教師が付いた気分になってきた。



勉強方法は質疑応答形式。

俺が知りたい事を聞くと四人のうち誰かが答えてくれる。

必要があれば画像を空間投影もしてくれるようだ。ハイテク。

「じゃあ世界についてからかな」

本当に色々わからんからな、とりあえず今生活している空間について知りたいんだよな。

「しょ、少々お待ちください」

ん?メイド三人が離れてコソコソ相談し始めた。

「どどど、どうしましょう」

「アリスさん、これは我々を試しているのではないでしょうか」

「二人とも落ち着いて下さい」

なんだ?どうした?

「はぁ・・・。ソウ、質問の仕方が意地悪です」

「え?」

「そんな抽象的な質問をされても困るのが普通です」

「あ!あぁ、そうか。すまんすまん、三人とも戻って戻って」

手招きすると申し訳なさそうにメイドたちが戻る。

「質問の仕方が悪かった。俺が聞きたいのは今居るこの世界、なんだっけ、なんとか空間」

「上位天使の生活空間」

「それ。概要でいいから教えてくれ。あと上位天使ってのも」

「かしこまりました」

お、これなら大丈夫そうだな。

メイドが正面から退くと下界を見るときと似たような空間投影パネルが出現する。

「では説明します」

「うん」

画面の下部に地面の上に小さい建物や山や森、中部に雲と雲の上に建ってる建物、そして上部に雲と浮遊島。

ただ、中部と上部の間に二本線が入ってて上側が点線になっている。

「俗に下界と呼んでいる部分がこちらになります」

シンディが指先からビームポインタのような光を出して画面の下部と中部を円で囲む。

「下の部分は地上なのはわかるが中央のはなんだ?」

「下界の天界です」

「下界の天界?」

「はい。下界には様々な種族が居ますがその中に天使という種族がいます」

「うん」

「その天使種が生活しているのがこの部分の天界と呼ばれる部分になります」

「う、うん」

ややこしくなってきた。

「今旦那様がいらっしゃるのはこちらになります」

今度は画面上部を円で囲む。

「その二本線は?」

「下界との境界です。ここと下界では次元が違うのです」

「次元・・・」

わけわかんなくなってきた。

「簡単に別世界って思えばいいと思います!」

ユーミがフォローしてくれる。なるほど。

「主様ならご存知だと思いますが、下界が下位、こちらが上位です」

うん、だろうな。時間止めたりしちゃってるもんな。

「ん?でも天使はこっちもいるよね。どうやって行き来してんだ?」

「いえ、していません」

「ん?どういうこと?」

「下界の天使種はこちらで下位天使と呼ばれてます」

「サチは上位?」

「そうです。一緒の天使種と考えない方がいいですよ。嫌悪する人もいるので」

当たり前と言わんばかりの顔をされた。

「わかった、肝に銘じておこう」

怒られそうだし。

「まとめるとだ。俺の今居る空間は俺が神として見ている下界とは別次元にあって、その中にそれぞれ天使がいるってことでいいのか?」

「はい。その認識であっています」

「俺が下界を見てる場所もその上の生活空間にあるのか?」

「いえ、ソウの仕事場はその二重線の間、そこです、ここにあると思ってください」

サチが指差すとそれをシンディが察して二重線の間に光を当ててくれる。

「この上が点線になってるのは?」

「ここには上位天使側の一部の方だけ行き来が可能という意味です。残念ながら私達天機人はいけません」

ユーミが肩を落としながら言う。

「そんな事はありませんよ」

「え?」

「神様の承認があれば可能です」

「そうなのですか!?」

サチの言葉にユーミが食いつく。

アリスやシンディは無反応だな。

「ソウに頼めば行けるようになると思いますが、オススメはしません。無が広がる空間なので」

「あー確かに何もないな」

集中することはできるが好んで居たいとは思わないな。今居る空間の方が好きだ。

「そうなのですか。アリスさんが止める理由がわかりました」

「でしょう。私達の存在意義がありませんからね」

心からメイドなんだな、彼女達は。

しかし、うーん、将来的に俺とサチだけじゃ下界管理厳しい気もするんだよな。

その時はその時で考えるか。

「話の流れついでですまんが天機人についても軽く教えてくれるか?」

「私達ですか?」

「うん、折角だし」

「かしこまりました。では、少し休憩を入れてからにしましょう」

こういうとき茶は出るが茶菓子とか出ないのがこの世界の残念なところだな。

どうにかしたいところだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

「お前のような役立たずは不要だ」と追放された三男の前世は世界最強の賢者でした~今世ではダラダラ生きたいのでスローライフを送ります~

平山和人
ファンタジー
主人公のアベルは転生者だ。一度目の人生は剣聖、二度目は賢者として活躍していた。 三度目の人生はのんびり過ごしたいため、アベルは今までの人生で得たスキルを封印し、貴族として生きることにした。 そして、15歳の誕生日でスキル鑑定によって何のスキルも持ってないためアベルは追放されることになった。 アベルは追放された土地でスローライフを楽しもうとするが、そこは凶悪な魔物が跋扈する魔境であった。 襲い掛かってくる魔物を討伐したことでアベルの実力が明らかになると、領民たちはアベルを救世主と崇め、貴族たちはアベルを取り戻そうと追いかけてくる。 果たしてアベルは夢であるスローライフを送ることが出来るのだろうか。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

元勇者パーティーの雑用係だけど、実は最強だった〜無能と罵られ追放されたので、真の実力を隠してスローライフします〜

一ノ瀬 彩音
ファンタジー
元勇者パーティーで雑用係をしていたが、追放されてしまった。 しかし彼は本当は最強でしかも、真の実力を隠していた! 今は辺境の小さな村でひっそりと暮らしている。 そうしていると……? ※第3回HJ小説大賞一次通過作品です!

スキル運で、運がいい俺を追放したギルドは倒産したけど、俺の庭にダンジョン出来て億稼いでます。~ラッキー~

暁 とと
ファンタジー
スキル運のおかげでドロップ率や宝箱のアイテムに対する運が良く、確率の低いアイテムをドロップしたり、激レアな武器を宝箱から出したりすることが出来る佐藤はギルドを辞めさられた。  しかし、佐藤の庭にダンジョンが出来たので億を稼ぐことが出来ます。 もう、戻ってきてと言われても無駄です。こっちは、億稼いでいるので。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

処理中です...