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第1章 この出会いに感謝する。
1-7
しおりを挟む初めてのキスは中学生の頃だった。大学生の女に奪われた唇は、ただ、震えていた。それから繰り返される色んな女とする口付けには、何の意味も無くなっていた。誰を愛するわけでもなく、愛されるわけでもない。欲望をぶつけ合うだけの行為に感情は無かった。求められれば返していた愛の言葉も、貴臣にとってはただの言葉に過ぎない。
そんな口付けに嫌悪感を覚えたのは二十歳の時。深夜に覆いかぶさってきたのは、義母だった。何かに取り憑かれたようにぶつぶつと言いながら迫ってくる女に恐怖を覚えた。父親の顔がよぎり無下にも出来ない義母に無理やりされた触れるだけのキスは、激しい吐き気をもたらした。それでも”息子”として対応しなければならないと、優しく諭してやった。あの時から、口付けが出来ない。
「社長? 大丈夫ですか?」
はっと気づいた時には、手を綺麗にした藤本が目の前でコンドームを付けていた。タイムトリップしていたかのように、脳の疲労を感じていた。自身に目を向けると少し元気を無くしていた。
「___そこで足を開け」
顎でベッドを指して藤本を見下す様に視線を投げると、高揚した顔の藤本がベッドに乗り上げた。何の愛撫もしていないのに、しっとりと濡れているそこは貴臣を受け入れる準備が出来ていた。力を入れてそこを奮い立てようとした。しかしそれ以上は無理だと少し頭を垂れる分身は元気にはならない。
組み敷いている女を見ると、期待にらんらんと瞳を輝かせていた。長いため息が出た。なんと醜い姿だろう。ヘッドボードに立てかけられたクッションを藤本の顔に乗せて、再び自身に力を入れると少しだけ起き上がった。あと一息だった。
何を想像しようかと視線を彷徨わせると、再び目に入ったのはあの女の写真だった。藤本は待ちきれないように内ももを貴臣の腰に摺り寄せてくる。無意識に手を伸ばして写真を持っていた。こちらに笑顔を向けている写真に、どくりと胸が高鳴る。徐々に元気を取り戻すそこは、だめだと言う命令を聞く気は無いようだ。
まるで意思を無視する身体は、クッションの上にその写真を乗せていた。妙に興奮した。強い背徳感に高揚していく身体は、犯罪者と紙一重である。わかっている、理解している。私は間違っている。それでもどうしようもなく興奮していた。
水谷沙也加。こいつは私を狂わせる。
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