4 / 5
第一章
3話 来客
しおりを挟む
『で、この子はお前の彼女なのか?』
『いや違う、ただのクラスメイトだ』
目の前の白人マッチョ。エヴァンは面白そうに聞いてくる。その隣にいるは楓に至っては、なんの話をしているのか分かっていなさそうだ。それもそのはず。梓音とエヴァンは、英語で話をしているのだ。しそして、何故英語を話せるのかという、疑問を楓は梓音に対して視線を送る。
「お前、英語わからないのか?」
「わ、わかりますよ? ええもちろん」
じゃあなんでそんなに目が泳いでいるんだと、梓音は思う。楓自身英語がわかるとは言ってるいるが、確実にわかっていないと思う。実際、先ほどのエヴァンとの会話で楓は聞き取れていない。そんな彼女を見たエヴァンは申し訳なさそうに口を開いた。
「スミマセン」
「いや、エヴァンあんた日本語普通に話せるだろ」
「あ、バレた?」
戯けて言う。この軍人ふざけている気がする。はぁ……と、ため息を吐いてから楓に向き直る。
「天使さん。これでわかったろ? だからもう帰ってくれ」
「また、帰れって……帰りませんよ? 貴方のその持病の事と、そこのアメリカ軍人さんのこと、どんな関係があるのか教えていただかないと」
「納得して帰れないってか?」
コクリと頷く。どうも、この少女は、自分が理解した上で納得し無いと突っ走るタイプだ。それはいいのだが、もう少し自分の身を案じたらどうなのか。男二人、しかも男の家に上がる時点で警戒心がないように思える。
「それにしてもシオ。さっきの電話での話はこの子のことか?」
「あぁ、そうだ。まさか忘れ物をして戻ってきたところにエヴィと鉢合わせるとは思わなかったが……しかもそのまま居るし」
「居て悪いですか? 私は貴方がまた卑屈になるんじゃないかと心配で来てるんです。それに、英語が話せるなんて知りませんでしたし……。あと九条君は病弱だったのではないんですか? こんないかにも体育会系の知り合いがいるとは……」
「いや、早く帰れよ。もう夜二十時だぞ。親が心配してるんじゃねえのか?」
「いえ、大丈夫です。一人暮らしをしていますので。それに先ほども言いましたが、私の家はこの真下です。すぐそこです。なんでしたら、私の家で話をしますか?」
「移動するのが面倒くさい。第一……」
「グウウウゥゥ!」
梓音の言葉をかき消す程でもないが、小さくお腹がなった。梓音でではない。エヴァンでもなさそうだ。と言うことは……楓を見ると顔を真っ赤にして俯いている。やはり彼女だった。かなり恥ずかしかったのだろう。
「はぁ、腹減ってるなら言えよ…!…なんか作るから。エヴィもなんか食うか?」
「お、ありがたい。最近軍の飯ばっかでよお、シオの飯が食えるとか感動だぜ。何せめっちゃくちゃ美味いからなぁ」
「そりゃどうも……天使さん。なんか食いたいのある? 無ければ適当に作るけど」
「な、なんでもいいです……」
「そうか……エヴィは?」
「俺もなんでも良い」
「じゃあ、簡単なので良いか」
別に残り物を出しても良いのだが、エヴァンだけならともかく、楓がいる。残り物を出すのはマナー違反だろう。炊飯器の中は生憎空っぽ。冷蔵庫の中には、エビやアサリ、貝類、野菜類がたくさんある。食糧庫の中には……サフランがあった。洗い物を減らすためにパエリアでもしよう。
「あの……何かお手伝いできることはありませんか?」
申し訳なさそうに声をかける楓は、ご飯を作ってもらう罪悪感でもあるのか、その問いには梓音は無いと答える。すると、落ち込んだようにソファに戻る。エヴァンが何か話しかけているようだ。楓も合わせて何か話している。ちょっと戯けた表情をしているあたり、きっと
英語が話せないから申し訳なく思っているのだろう。挙句、梓音から料理の手伝いを断られたのだ。何をすれば良いのかと考えている。
一応客と言えば客なのだから、大人しく料理ができるまで待っていれば良いのにと思う。梓音はまな板と包丁を取り出し、フライパンに油を注いで火をかける。フライパンが温まるまでに火が通りにくい野菜から切っていき、そのままフライパンに入れる。焼け始めの音が聞こえてきたら、炒め始める。少し火を弱めて次の食材を切る。しなやかに動くその手さばきは美しく早い。調理に集中していたため、楓がその動きを見ていることには気づかなかった。
『いや違う、ただのクラスメイトだ』
目の前の白人マッチョ。エヴァンは面白そうに聞いてくる。その隣にいるは楓に至っては、なんの話をしているのか分かっていなさそうだ。それもそのはず。梓音とエヴァンは、英語で話をしているのだ。しそして、何故英語を話せるのかという、疑問を楓は梓音に対して視線を送る。
「お前、英語わからないのか?」
「わ、わかりますよ? ええもちろん」
じゃあなんでそんなに目が泳いでいるんだと、梓音は思う。楓自身英語がわかるとは言ってるいるが、確実にわかっていないと思う。実際、先ほどのエヴァンとの会話で楓は聞き取れていない。そんな彼女を見たエヴァンは申し訳なさそうに口を開いた。
「スミマセン」
「いや、エヴァンあんた日本語普通に話せるだろ」
「あ、バレた?」
戯けて言う。この軍人ふざけている気がする。はぁ……と、ため息を吐いてから楓に向き直る。
「天使さん。これでわかったろ? だからもう帰ってくれ」
「また、帰れって……帰りませんよ? 貴方のその持病の事と、そこのアメリカ軍人さんのこと、どんな関係があるのか教えていただかないと」
「納得して帰れないってか?」
コクリと頷く。どうも、この少女は、自分が理解した上で納得し無いと突っ走るタイプだ。それはいいのだが、もう少し自分の身を案じたらどうなのか。男二人、しかも男の家に上がる時点で警戒心がないように思える。
「それにしてもシオ。さっきの電話での話はこの子のことか?」
「あぁ、そうだ。まさか忘れ物をして戻ってきたところにエヴィと鉢合わせるとは思わなかったが……しかもそのまま居るし」
「居て悪いですか? 私は貴方がまた卑屈になるんじゃないかと心配で来てるんです。それに、英語が話せるなんて知りませんでしたし……。あと九条君は病弱だったのではないんですか? こんないかにも体育会系の知り合いがいるとは……」
「いや、早く帰れよ。もう夜二十時だぞ。親が心配してるんじゃねえのか?」
「いえ、大丈夫です。一人暮らしをしていますので。それに先ほども言いましたが、私の家はこの真下です。すぐそこです。なんでしたら、私の家で話をしますか?」
「移動するのが面倒くさい。第一……」
「グウウウゥゥ!」
梓音の言葉をかき消す程でもないが、小さくお腹がなった。梓音でではない。エヴァンでもなさそうだ。と言うことは……楓を見ると顔を真っ赤にして俯いている。やはり彼女だった。かなり恥ずかしかったのだろう。
「はぁ、腹減ってるなら言えよ…!…なんか作るから。エヴィもなんか食うか?」
「お、ありがたい。最近軍の飯ばっかでよお、シオの飯が食えるとか感動だぜ。何せめっちゃくちゃ美味いからなぁ」
「そりゃどうも……天使さん。なんか食いたいのある? 無ければ適当に作るけど」
「な、なんでもいいです……」
「そうか……エヴィは?」
「俺もなんでも良い」
「じゃあ、簡単なので良いか」
別に残り物を出しても良いのだが、エヴァンだけならともかく、楓がいる。残り物を出すのはマナー違反だろう。炊飯器の中は生憎空っぽ。冷蔵庫の中には、エビやアサリ、貝類、野菜類がたくさんある。食糧庫の中には……サフランがあった。洗い物を減らすためにパエリアでもしよう。
「あの……何かお手伝いできることはありませんか?」
申し訳なさそうに声をかける楓は、ご飯を作ってもらう罪悪感でもあるのか、その問いには梓音は無いと答える。すると、落ち込んだようにソファに戻る。エヴァンが何か話しかけているようだ。楓も合わせて何か話している。ちょっと戯けた表情をしているあたり、きっと
英語が話せないから申し訳なく思っているのだろう。挙句、梓音から料理の手伝いを断られたのだ。何をすれば良いのかと考えている。
一応客と言えば客なのだから、大人しく料理ができるまで待っていれば良いのにと思う。梓音はまな板と包丁を取り出し、フライパンに油を注いで火をかける。フライパンが温まるまでに火が通りにくい野菜から切っていき、そのままフライパンに入れる。焼け始めの音が聞こえてきたら、炒め始める。少し火を弱めて次の食材を切る。しなやかに動くその手さばきは美しく早い。調理に集中していたため、楓がその動きを見ていることには気づかなかった。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
【完結】婚約者に忘れられていた私
稲垣桜
恋愛
「やっぱり帰ってきてた」
「そのようだね。あれが問題の彼女?アシュリーの方が綺麗なのにな」
私は夜会の会場で、間違うことなく自身の婚約者が、栗毛の令嬢を愛しそうな瞳で見つめながら腰を抱き寄せて、それはそれは親しそうに見つめ合ってダンスをする姿を視線の先にとらえていた。
エスコートを申し出てくれた令息は私の横に立って、そんな冗談を口にしながら二人に視線を向けていた。
ここはベイモント侯爵家の夜会の会場。
私はとある方から国境の騎士団に所属している婚約者が『もう二か月前に帰ってきてる』という話を聞いて、ちょっとは驚いたけど「やっぱりか」と思った。
あれだけ出し続けた手紙の返事がないんだもん。そう思っても仕方ないよでしょ?
まあ、帰ってきているのはいいけど、女も一緒?
誰?
あれ?
せめて婚約者の私に『もうすぐ戻れる』とか、『もう帰ってきた』の一言ぐらいあってもいいんじゃない?
もうあなたなんてポイよポイッ。
※ゆる~い設定です。
※ご都合主義です。そんなものかと思ってください。
※視点が一話一話変わる場面もあります。
五年目の浮気、七年目の破局。その後のわたし。
あとさん♪
恋愛
大恋愛での結婚後、まるまる七年経った某日。
夫は愛人を連れて帰宅した。(その愛人は妊娠中)
笑顔で愛人をわたしに紹介する夫。
え。この人、こんな人だったの(愕然)
やだやだ、気持ち悪い。離婚一択!
※全15話。完結保証。
※『愚かな夫とそれを見限る妻』というコンセプトで書いた第四弾。
今回の夫婦は子無し。騎士爵(ほぼ平民)。
第一弾『妻の死を人伝てに聞きました。』
第二弾『そういうとこだぞ』
第三弾『妻の死で思い知らされました。』
それぞれ因果関係のない独立したお話です。合わせてお楽しみくださると一興かと。
※この話は小説家になろうにも投稿しています。
※2024.03.28 15話冒頭部分を加筆修正しました。
(完結)お姉様を選んだことを今更後悔しても遅いです!
青空一夏
恋愛
私はブロッサム・ビアス。ビアス候爵家の次女で、私の婚約者はフロイド・ターナー伯爵令息だった。結婚式を一ヶ月後に控え、私は仕上がってきたドレスをお父様達に見せていた。
すると、お母様達は思いがけない言葉を口にする。
「まぁ、素敵! そのドレスはお腹周りをカバーできて良いわね。コーデリアにぴったりよ」
「まだ、コーデリアのお腹は目立たないが、それなら大丈夫だろう」
なぜ、お姉様の名前がでてくるの?
なんと、お姉様は私の婚約者の子供を妊娠していると言い出して、フロイドは私に婚約破棄をつきつけたのだった。
※タグの追加や変更あるかもしれません。
※因果応報的ざまぁのはず。
※作者独自の世界のゆるふわ設定。
※過去作のリメイク版です。過去作品は非公開にしました。
※表紙は作者作成AIイラスト。ブロッサムのイメージイラストです。
お兄ちゃんはお医者さん!?
すず。
恋愛
持病持ちの高校1年生の女の子。
如月 陽菜(きさらぎ ひな)
病院が苦手。
如月 陽菜の主治医。25歳。
高橋 翔平(たかはし しょうへい)
内科医の医師。
※このお話に出てくるものは
現実とは何の関係もございません。
※治療法、病名など
ほぼ知識なしで書かせて頂きました。
お楽しみください♪♪
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
あなたなんて大嫌い
みおな
恋愛
私の婚約者の侯爵子息は、義妹のことばかり優先して、私はいつも我慢ばかり強いられていました。
そんなある日、彼が幼馴染だと言い張る伯爵令嬢を抱きしめて愛を囁いているのを聞いてしまいます。
そうですか。
私の婚約者は、私以外の人ばかりが大切なのですね。
私はあなたのお財布ではありません。
あなたなんて大嫌い。
【完結】真実の愛とやらに目覚めてしまった王太子のその後
綾森れん
恋愛
レオノーラ・ドゥランテ侯爵令嬢は夜会にて婚約者の王太子から、
「真実の愛に目覚めた」
と衝撃の告白をされる。
王太子の愛のお相手は男爵令嬢パミーナ。
婚約は破棄され、レオノーラは王太子の弟である公爵との婚約が決まる。
一方、今まで男爵令嬢としての教育しか受けていなかったパミーナには急遽、王妃教育がほどこされるが全く進まない。
文句ばかり言うわがままなパミーナに、王宮の人々は愛想を尽かす。
そんな中「真実の愛」で結ばれた王太子だけが愛する妃パミーナの面倒を見るが、それは不幸の始まりだった。
周囲の忠告を聞かず「真実の愛」とやらを貫いた王太子の末路とは?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる