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17.無意味/解く鎖
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しおりを挟む「――っ!」
その瞬間、兄の手を強く振り払っていた。
あの日のことを思い出したわけじゃない。
これ以上、どうしたらいいのか分からなかった。もう向き合いたくなった。逃げてしまいたかった。なにも知りたくなかった。
「……おっ、……俺、は……、」
苦し紛れに口を開いたところで何を話せばいいかすら分からない。
それでも兄の言葉を遮ってしまいたかった。
「……俺は、申し訳ないって……ずっと思ってて……」
「ああ」
「何度も、謝ろうと……」
「気づいてたよ」
今思えば、そうだったのだろう。
ケティに近づくなと忠告してきたのも、彼の話題を出したとき明らかに動揺していたのも、すべて知っていたから――。
「でも、お前に謝らせるわけにはいかなかった。オレは自分を守ることばっかりで、お前やケティのことをちっとも考えてなかったから……」
兄は力無く微笑む。涙で潤んだ目を細めて。
「ごめんな、龍広」
――嫌だ。
「オレが、ケティをちゃんと受け入れてさえすれば、こんなことにはならなかったのに……」
――もう、謝らないで。
「……どうしてなのか、自分でも分からなくて……ただ、怖くて……」
言葉を詰まらせながら自分を責め続ける兄の姿は、まるで俺自身のようだった。
「オレ、……あいつのこと、好きだったのになぁ……」
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