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13.臆病者/破壊者 ※

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 ◆ ◆ ◆


 無機質なパイプベッドの上。
 舌先が、神経をなぶっている。

「ん……、ふっ……」

 痺れるような甘い刺激。
 少し身悶えるだけでも、ベッドは甲高い音を立てて軋む。
 シーツに鼻を寄せると、ケティのつけている甘い香りが鼻腔を満たす。その濃厚な香りが全身に染み込んでいく気がして、たまらなかった。

「うっ、ふぅ、……んんぅ!」

 漏れそうになる声は手首を噛み、打ち消す。

「んっ、……っ、ふっ!」

 与えられる刺激は俺の身体を突き抜け、ベッドにまで伝わっている。跳ね上がる度に聞こえるスプリング音はまるで嬌声だった。
 視界のすみには、脚の間に沈んでいるケティの頭がある。その深い赤色の髪を撫でながら、腰を振った。スプリングは激しくなる。構わず、彼の舌が良いところに触れるよう、促していく。

「はっ、あ……っ、ん!」

 高まっていく快感に胸が震えたとき――ケティは俺のものから口を放した。

「……え?」
 熱を帯び始めていた身体が中途半端に放り出される。
「待っ、て……」
 懇願も虚しく、彼は身を起こそうとする。慌ててその肩を掴もうとしたが、すり抜けるように逃げられてしまった。
「やっ……もっと……!」

 俺は夢中で彼の腕にすがりついていた。
 足りない。
 まだ、こんなものじゃ足りない。
 
「今日はずいぶんと積極的ね」

 彼はまるで猫のように、手の甲で口元を拭っている。
 いつもならば、どんなに拒絶してもしつこく攻めてくるというのに。
 乱れた髪を撫でつけながら、素っ気なく、ふいっと背を向けてくる。

「あたし、そうやって求められると萎えちゃうのよね……」

 その間にも俺の熱は高ぶり、疼き続けているというのに。

 このままじゃ、気がおさまらなかった。

「……だっ! お、……お願っ……なんでも、する、……から……」

 もっと汚してほしい。
 もっと。もっと。


「ふふっ」

 小さく肩を震わせケティは笑った。冗談よ、と言いたげに。

「あたしね、なんだか今日はとっても気分がいいの」

 こちらを振り返ってくれたケティは俺の左手を取ると、自らの口元へと導いた。
 ゆっくりと、その紅色が開かれる。

「いじめたくなっちゃう」

 親指を唇だけで食んだ。

「……ケティ……」

 同時に強く歯を立ててくる。

「──ンッ!」

 彼の前歯と指の骨がぶつかり合い、ザリッ、という音が聞こえた。
 爪と肉の境目に歯を立てられ、身が裂けていくような痛みが走る。
 それでも彼は容赦無く力を入れ続ける。

「ぁああ……ぐ、あ!」

 食いちぎられそうな感覚と共に身体が大きく跳ね上がった。そこでは痛みしか生み出されないはずなのに、

「……ケ、ティ、……や、あっ!」

 吐息の中には明らかに違う感覚が混ざってきている。
 彼は口内で指に愛撫を繰り返した。まるで下のものを舐めるときのように、舌全体で包み込んで、這わせてくる。
 
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