上 下
58 / 90
ファイル.06 マヨイガと猿の怪異

ファイル.06 マヨイガと猿の怪異(9)

しおりを挟む
 その日の夜、T地区の怪異たちが集まり、今後の対応について話し合っていた。

 そして、怪異たちは火を放った退魔師たちに報復することを決めた。

「九十九さん。私たちは百鬼夜行をすることに決めました」

 八尺様が猿の経立とともに九十九たちの前に現れて報告した。
 二人はかなり仲良くなったようで、お互いの手を握り合っていた。

「退魔師たちに報復することにしたんですね」

「ええ。このT地区のすべての怪異が参加して、退魔師たちに報復しに向かいます」

 百鬼夜行とは、大勢の怪異たちが行列を作って、目的の場所まで行進していくことをいう。

 だが、今回の百鬼夜行は、報復のために行われる。
 怪異たちが報復という目標を達成するまで、決して止まることが無い。
 これは、この地区の怪異と退魔師の全面戦争といってもいい事態になることを意味していた。

 怪異たちは、東北地方の退魔師たちの拠点である退魔協会の施設を目指して行進を始めた。

『これが本物の百鬼夜行か。俺も初めてみるよ』

『退魔師たちは一線を超えた。この地区の怪異たちを本気で怒らせてしまったんだ。彼らはもう、おしまいだね』

 しばらくの間、九十九とゼロは行進する怪異たちを見つめていた。

「ぷー」

 その横で、サキが頬を膨らませながら不満そうにしていた。

「どうした、サキ君?」

「マヨイガから、何か持ってくればよかったなって、今でも後悔してるんですー」

「まだ根に持ってたのか」

「だって、せっかく幸せになれるチャンスだったんですよー! それをみすみす逃すことになるなんてー」

 サキはマヨイガから何も持ち出せなかったことを怒っていた。

「ふふ、大丈夫だよ、サキ君」

「なんでですか?」

「マヨイガの伝承では、何も持たずに帰った女性のところに、後日、お米が絶対に無くならないお椀が届いたんだ。だから、私たちのところにも、後で幸運が訪れるはずだよ」

「そうだったんですねー。あー、先生、あの時、それ知ってて黙ってましたねー。ヒドイですー」

「ごめんごめん。だから、これからきっといいことが起こるよ。きっとね」

 そう言うと、九十九はサキの頭を優しくなでた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

忠犬ハジッコ

SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。 「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。 ※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、  今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。  お楽しみいただければうれしいです。

イケメン男子とドキドキ同居!? ~ぽっちゃりさんの学園リデビュー計画~

友野紅子
児童書・童話
ぽっちゃりヒロインがイケメン男子と同居しながらダイエットして綺麗になって、学園リデビューと恋、さらには将来の夢までゲットする成長の物語。 全編通し、基本的にドタバタのラブコメディ。時々、シリアス。

がらくた屋 ふしぎ堂のヒミツ

三柴 ヲト
児童書・童話
『がらくた屋ふしぎ堂』  ――それは、ちょっと変わった不思議なお店。  おもちゃ、駄菓子、古本、文房具、骨董品……。子どもが気になるものはなんでもそろっていて、店主であるミチばあちゃんが不在の時は、太った変な招き猫〝にゃすけ〟が代わりに商品を案内してくれる。  ミチばあちゃんの孫である小学6年生の風間吏斗(かざまりと)は、わくわく探しのため毎日のように『ふしぎ堂』へ通う。  お店に並んだ商品の中には、普通のがらくたに混じって『神商品(アイテム)』と呼ばれるレアなお宝もたくさん隠されていて、悪戯好きのリトはクラスメイトの男友達・ルカを巻き込んで、神商品を使ってはおかしな事件を起こしたり、逆にみんなの困りごとを解決したり、毎日を刺激的に楽しく過ごす。  そんなある日のこと、リトとルカのクラスメイトであるお金持ちのお嬢様アンが行方不明になるという騒ぎが起こる。  彼女の足取りを追うリトは、やがてふしぎ堂の裏庭にある『蔵』に隠された〝ヒミツの扉〟に辿り着くのだが、扉の向こう側には『異世界』や過去未来の『時空を超えた世界』が広がっていて――⁉︎  いたずら好きのリト、心優しい少年ルカ、いじっぱりなお嬢様アンの三人組が織りなす、事件、ふしぎ、夢、冒険、恋、わくわく、どきどきが全部詰まった、少年少女向けの現代和風ファンタジー。

月神山の不気味な洋館

ひろみ透夏
児童書・童話
初めての夜は不気味な洋館で?! 満月の夜、級友サトミの家の裏庭上空でおこる怪現象を見せられたケンヂは、正体を確かめようと登った木の上で奇妙な物体と遭遇。足を踏み外し落下してしまう……。  話は昼間にさかのぼる。 両親が泊まりがけの旅行へ出かけた日、ケンヂは友人から『旅行中の両親が深夜に帰ってきて、あの世に連れて行く』という怪談を聞かされる。 その日の放課後、ふだん男子と会話などしない、おとなしい性格の級友サトミから、とつぜん話があると呼び出されたケンヂ。その話とは『今夜、私のうちに泊りにきて』という、とんでもない要求だった。

シンクの卵

名前も知らない兵士
児童書・童話
小学五年生で文房具好きの桜井春は、小学生ながら秘密組織を結成している。  メンバーは四人。秘密のアダ名を使うことを義務とする。六年生の閣下、同級生のアンテナ、下級生のキキ、そして桜井春ことパルコだ。  ある日、パルコは死んだ父親から手紙をもらう。  手紙の中には、銀貨一枚と黒いカードが入れられており、カードには暗号が書かれていた。  その暗号は市境にある廃工場の場所を示していた。  とある夜、忍び込むことを計画した四人は、集合場所で出くわしたファーブルもメンバーに入れて、五人で廃工場に侵入する。  廃工場の一番奥の一室に、誰もいないはずなのにランプが灯る「世界を変えるための不必要の部屋」を発見する五人。  そこには古い机と椅子、それに大きな本とインクが入った卵型の瓶があった。  エポックメイキング。  その本に万年筆で署名して、正式な秘密組織を発足させることを思いつくパルコ。  その本は「シンクの卵」と呼ばれ、書いたことが現実になる本だった。

霊感兄妹の大冒険 古城にはモンスターがいっぱい⁉

幽刻ネオン
児童書・童話
★あらすじ ある日、冬休みに別荘へお泊りをすることになった仲良し皇兄妹(すめらぎ きょうだい)。 元気で明るく心優しい中学二年生の次女、あやね。 お嬢さま口調で礼儀正しい中学一年生の末っ子、エミリー。 ボーイッシュでクールな中学三年生の長女、憂炎(ユーエン)。 生意気だけど頼れるイケメンダークな高校二年生の長男、大我(タイガ)の四人。 そんな兄妹が向かったのは・・・・・なんと古城⁉ 海外にいる両親から「古城にいる幽霊をなんとかしてほしい」と頼まれて大ピンチ! しかし、実際にいたのは幽霊ではなく・・・・・・⁉ 【すべてを知ったらニゲラレナイ】 はたして兄妹たちは古城の謎が解けるのだろうか?  最恐のミッションに挑む霊感兄妹たちの最恐ホラーストーリー。

佐藤さんの四重奏

makoto(木城まこと)
児童書・童話
佐藤千里は小学5年生の女の子。昔から好きになるものは大抵男子が好きになるもので、女子らしくないといじめられたことを機に、本当の自分をさらけ出せなくなってしまう。そんな中、男子と偽って出会った佐藤陽がとなりのクラスに転校してきて、千里の本当の性別がバレてしまい――? 弦楽器を通じて自分らしさを見つける、小学生たちの物語。 第2回きずな児童書大賞で奨励賞をいただきました。ありがとうございます!

悪魔さまの言うとおり~わたし、執事になります⁉︎~

橘花やよい
児童書・童話
女子中学生・リリイが、入学することになったのは、お嬢さま学校。でもそこは「悪魔」の学校で、「執事として入学してちょうだい」……って、どういうことなの⁉待ち構えるのは、きれいでいじわるな悪魔たち! 友情と魔法と、胸キュンもありの学園ファンタジー。 第2回きずな児童書大賞参加作です。

処理中です...