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ファイル.06 マヨイガと猿の怪異
ファイル.06 マヨイガと猿の怪異(7)
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ゼロと猿の経立は睨み合いながら、次の攻撃の予備動作に入った。
「二人とも待ってください!」
二人が飛び掛かろうとした次の瞬間、二人の間に背の高い女性が割って入った。
「あなたは、八尺様ー!?」
なんと、八尺様が二人の戦いを止めに来たのだ。
「なんだお前。男同士の真剣勝負に水を差すんじゃねえよ!」
怒った猿の経立が八尺様を睨みつける。
「二人とも、聞いて。森が大変なことになっているの。退魔師たちが、森に火を放ったのよ!」
「なんだって? 本当なのか?」
「確かに、何かが焦げたような臭いを感じる……」
ゼロは鼻をひくつかせながら臭いを嗅いでいた。
「私に仲間を倒された報復のつもりなのかもしれません。とにかく森に火が燃え広がっていて危険なんです。お願いです。あなたたちも森の消火を手伝ってください」
八尺様は丁寧にお辞儀をしながら、二人に頼み込んだ。
「確かに、この森を燃やされては困る。仕方ない、犬よ、一時休戦だ。いいな?」
「もちろん、緊急事態だからな。この森の火を消すのが最優先だ」
ゼロたちは、八尺様に誘導してもらいながら森の奥へと進んでいった。
森の奥からはたくさんの黒煙が立ち上がっていて、焦げ臭い臭いが漂ってきた。
「マズいな。そこら中で黒煙があがっているぞ。こりゃあ、森の奥深くまで火が入っているぜ」
「遠くの炎もはっきりと見える。お前たち、近くの湖にいって水を汲んでこい。少しでも炎を食い止めるぞ」
「キキー」
猿の経立は仲間の猿の怪異に命令して森の消火にあたらせた。
『ゼロ、火が燃え移りそうな木をどんどん倒してくれ。少しでも森への延焼を阻止するんだ』
『わかったぜ九十九。燃えそうな木を倒せばいいんだな?』
ゼロは火が燃え移りそうな木を爪で切り裂いて倒していった。
ゼロたちは懸命に消火していったが、森の火の勢いはどんどんと増していって、炎が燃え広がっていった。
「火の勢いが強すぎる。これじゃあ俺たちがいくら火を消していってもキリがないぜ。どうしたらいいんだ」
「……龍神様なら、なんとかしてくださるかもしれないな」
猿の経立がつぶやいた。
「龍神様だって? そいつなら火を消せそうなんだな?」
「ああ。水の神様だからな。あの方なら空から水を降らせることも可能なはずだ」
「それはすごいな。それで、その龍神様はどこにいるんだ?」
「あの方はこの先にある水鏡湖のほとりにいらっしゃる。だが、今は祠に施された結界に封印されてしまっているんだ。だから、身動きが取れないはずだ」
「なるほど、なら、その結界を解けばいいんだな?」
「そう簡単に結界が解ければ苦労はしねえよ。ものすごく強力な結界なんだ。昔、この土地は水害が多発していてな。当時、ここに来た名の知れた僧侶に封印されてしまったらしいぜ。どうやら、龍神様がその水害の元凶だと勘違いされてしまったようでな」
「とばっちりもいいとこだな。だが、俺の相方なら龍神様を解放できるかもしれないぞ」
「なんだって?」
「俺の相方は神様を物に宿す能力を持ってるんだよ。それで結界から解放できるはずだ」
『やれるだろ、九十九? 時間が無い、先を急ぐからな』
『ああ、私に任せてくれ』
「二人とも待ってください!」
二人が飛び掛かろうとした次の瞬間、二人の間に背の高い女性が割って入った。
「あなたは、八尺様ー!?」
なんと、八尺様が二人の戦いを止めに来たのだ。
「なんだお前。男同士の真剣勝負に水を差すんじゃねえよ!」
怒った猿の経立が八尺様を睨みつける。
「二人とも、聞いて。森が大変なことになっているの。退魔師たちが、森に火を放ったのよ!」
「なんだって? 本当なのか?」
「確かに、何かが焦げたような臭いを感じる……」
ゼロは鼻をひくつかせながら臭いを嗅いでいた。
「私に仲間を倒された報復のつもりなのかもしれません。とにかく森に火が燃え広がっていて危険なんです。お願いです。あなたたちも森の消火を手伝ってください」
八尺様は丁寧にお辞儀をしながら、二人に頼み込んだ。
「確かに、この森を燃やされては困る。仕方ない、犬よ、一時休戦だ。いいな?」
「もちろん、緊急事態だからな。この森の火を消すのが最優先だ」
ゼロたちは、八尺様に誘導してもらいながら森の奥へと進んでいった。
森の奥からはたくさんの黒煙が立ち上がっていて、焦げ臭い臭いが漂ってきた。
「マズいな。そこら中で黒煙があがっているぞ。こりゃあ、森の奥深くまで火が入っているぜ」
「遠くの炎もはっきりと見える。お前たち、近くの湖にいって水を汲んでこい。少しでも炎を食い止めるぞ」
「キキー」
猿の経立は仲間の猿の怪異に命令して森の消火にあたらせた。
『ゼロ、火が燃え移りそうな木をどんどん倒してくれ。少しでも森への延焼を阻止するんだ』
『わかったぜ九十九。燃えそうな木を倒せばいいんだな?』
ゼロは火が燃え移りそうな木を爪で切り裂いて倒していった。
ゼロたちは懸命に消火していったが、森の火の勢いはどんどんと増していって、炎が燃え広がっていった。
「火の勢いが強すぎる。これじゃあ俺たちがいくら火を消していってもキリがないぜ。どうしたらいいんだ」
「……龍神様なら、なんとかしてくださるかもしれないな」
猿の経立がつぶやいた。
「龍神様だって? そいつなら火を消せそうなんだな?」
「ああ。水の神様だからな。あの方なら空から水を降らせることも可能なはずだ」
「それはすごいな。それで、その龍神様はどこにいるんだ?」
「あの方はこの先にある水鏡湖のほとりにいらっしゃる。だが、今は祠に施された結界に封印されてしまっているんだ。だから、身動きが取れないはずだ」
「なるほど、なら、その結界を解けばいいんだな?」
「そう簡単に結界が解ければ苦労はしねえよ。ものすごく強力な結界なんだ。昔、この土地は水害が多発していてな。当時、ここに来た名の知れた僧侶に封印されてしまったらしいぜ。どうやら、龍神様がその水害の元凶だと勘違いされてしまったようでな」
「とばっちりもいいとこだな。だが、俺の相方なら龍神様を解放できるかもしれないぞ」
「なんだって?」
「俺の相方は神様を物に宿す能力を持ってるんだよ。それで結界から解放できるはずだ」
『やれるだろ、九十九? 時間が無い、先を急ぐからな』
『ああ、私に任せてくれ』
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