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ファイル.06 マヨイガと猿の怪異
ファイル.06 マヨイガと猿の怪異(6)
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「よう、お嬢さん。俺は猿の経立っていうんだ。俺はお前を気に入ってな。今日から俺の嫁になってもらうぜ」
猿の経立はサキの目の前に立つと、顔を近づけて挨拶した。
彼もサキを気に入って後をつけてきたらしい。
「まったく、サキ君は怪異に好かれやすい体質なのは知ってたけど、これほどまでとはねえ」
「ううー、突然プロポーズされて、なんか複雑な気分ですー」
「猿の経立といったな。彼女は私の大切な助手だから、君に渡すわけにはいかないな」
九十九が、サキと猿の経立の間に身体を入れて、サキを守りながら話しかけた。
「なら、力づくでも認めさせてやるよ」
猿の経立はプロポーズを邪魔をした九十九に対して、腕を振り上げて威嚇するポーズを取った。
「お前は元々は猿そのものだったはずだ。その見た目も人間から奪ったんだろう?」
猿の経立は九十九の問いかけを無視して突き飛ばし、サキに壁ドンをした。
「ふふ、かっこいいだろう? この顔と身体、結構気に入ってるんだぜ」
「うー、ノーコメントですー」
サキは苦笑いしながら答えた。
『九十九、俺にこいつと戦わせてくれ』
『ゼロ、君はまだ完全じゃないが……』
『猿に負けるようじゃ、狼失格なんだよ。ま、ここは俺に任せてくれ』
「随分と調子に乗ってるじゃねーか、サル野郎。悪いが、俺も彼女を気に入っていてね。猿ごときには渡せねえな」
突然、九十九の雰囲気と口調が変化したことに、猿の経立は驚きを隠せなかった。
「なるほど、こっちの女は犬と融合していたのか。それで、犬の方が表に出てきたようだな。ははっ、それじゃあ俺とは仲良くなれねーわな。犬猿の仲って言うしな。まあいい、大人しく嬢ちゃんを渡しな」
「俺が猿の言うことを聞くとでも?」
九十九と入れ替わったゼロが猿の経立を睨みつける。
「ははは、それもそうだ。それじゃあ、力づくで奪わせてもらうぜ」
猿の経立は仲間の猿の怪異から木製の棍棒を受け取ると、ゼロに襲いかかってきた。
「はは、お前ら四足歩行の犬と違って、俺たちは武器を自由に使えるんだよ!」
猿の経立は棍棒をゼロに激しく叩きつけてきた。
ゼロはその攻撃をスレスレのところで回避していくが、周りにいる猿の怪異たちがゼロに石を投げつけて追撃してきた。
「ちっ、厄介な猿どもだぜ。それなら……」
ゼロは猿の怪異たちを睨みつけながら、雄叫びをあげた。
「わおおおおおおおおん」
その声を聞いたとたん、猿の怪異たちは身体が金縛りにかかったように動かなくなった。
「ほう、雄叫びで俺の子分たちを全て気絶させるとは、犬にしてはやるじゃねえか。はは、面白え。ここからは俺とお前のタイマン勝負だ。どっちかがぶっ倒れるまでやり合おうぜ」
「いいだろう。狼と猿の格の違いを見せつけてやる。さあこい。俺の爪で切り刻んでやるよ」
猿の経立はサキの目の前に立つと、顔を近づけて挨拶した。
彼もサキを気に入って後をつけてきたらしい。
「まったく、サキ君は怪異に好かれやすい体質なのは知ってたけど、これほどまでとはねえ」
「ううー、突然プロポーズされて、なんか複雑な気分ですー」
「猿の経立といったな。彼女は私の大切な助手だから、君に渡すわけにはいかないな」
九十九が、サキと猿の経立の間に身体を入れて、サキを守りながら話しかけた。
「なら、力づくでも認めさせてやるよ」
猿の経立はプロポーズを邪魔をした九十九に対して、腕を振り上げて威嚇するポーズを取った。
「お前は元々は猿そのものだったはずだ。その見た目も人間から奪ったんだろう?」
猿の経立は九十九の問いかけを無視して突き飛ばし、サキに壁ドンをした。
「ふふ、かっこいいだろう? この顔と身体、結構気に入ってるんだぜ」
「うー、ノーコメントですー」
サキは苦笑いしながら答えた。
『九十九、俺にこいつと戦わせてくれ』
『ゼロ、君はまだ完全じゃないが……』
『猿に負けるようじゃ、狼失格なんだよ。ま、ここは俺に任せてくれ』
「随分と調子に乗ってるじゃねーか、サル野郎。悪いが、俺も彼女を気に入っていてね。猿ごときには渡せねえな」
突然、九十九の雰囲気と口調が変化したことに、猿の経立は驚きを隠せなかった。
「なるほど、こっちの女は犬と融合していたのか。それで、犬の方が表に出てきたようだな。ははっ、それじゃあ俺とは仲良くなれねーわな。犬猿の仲って言うしな。まあいい、大人しく嬢ちゃんを渡しな」
「俺が猿の言うことを聞くとでも?」
九十九と入れ替わったゼロが猿の経立を睨みつける。
「ははは、それもそうだ。それじゃあ、力づくで奪わせてもらうぜ」
猿の経立は仲間の猿の怪異から木製の棍棒を受け取ると、ゼロに襲いかかってきた。
「はは、お前ら四足歩行の犬と違って、俺たちは武器を自由に使えるんだよ!」
猿の経立は棍棒をゼロに激しく叩きつけてきた。
ゼロはその攻撃をスレスレのところで回避していくが、周りにいる猿の怪異たちがゼロに石を投げつけて追撃してきた。
「ちっ、厄介な猿どもだぜ。それなら……」
ゼロは猿の怪異たちを睨みつけながら、雄叫びをあげた。
「わおおおおおおおおん」
その声を聞いたとたん、猿の怪異たちは身体が金縛りにかかったように動かなくなった。
「ほう、雄叫びで俺の子分たちを全て気絶させるとは、犬にしてはやるじゃねえか。はは、面白え。ここからは俺とお前のタイマン勝負だ。どっちかがぶっ倒れるまでやり合おうぜ」
「いいだろう。狼と猿の格の違いを見せつけてやる。さあこい。俺の爪で切り刻んでやるよ」
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