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ミーガンの結婚行進曲
一緒に生きていく
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「そんなもんじゃないかな。たとえ失敗だと思っても、それがいい方向にいくこともある。失敗から学ぶこともある。生きてれば失敗なんて山のようにあるんだから」
「そうだけど……」
「王太子妃っていう立場が重いのはわかるよ。俺も王太子で後々は王になれと言われてきた。けど、怖いと感じないことなんてないんだ」
いつも自信満々に見えるのに。ディーンは手のひらを空に向け、指の間から瞬く星を見ている。
「世の中には優秀な人間は山のようにいる。だけど、王太子と言う立場の俺を周りの人間は持ち上げる。近くに俺より優秀な人間がいてもだ。そんなの変だろう? 俺はだから、いつも失敗しないように誰もが立場に関係なく認めてくれるように頑張ってきたんだ。誰も文句が言えないように」
手を降ろし、下を向いたディーンは「それでもさ」とつぶやくように言う。
「俺だって失敗はする。言わなきゃよかったってことを言ってしまって後悔することもある」
それはそうだろう。人間なんだもの、と思ってハッとする。
私は努力もしないで端からあきらめてるってこと?
「ディーン、私」
にこりとしたディーンはうなづき、私の手をとると、顔をじっと見つめる。
「俺と2人で生きてほしい」
真剣な表情から目が離せない。
「ミーガンが失敗しそうになったら俺が助けるし、俺が失敗しそうになったら援護してほしい。俺の側にいてほしいんだ、これからずっと」
ディーンの目がまるで夜空の星のように澄んでいて綺麗だな、なんて思ってしまう。
「ミーガン・ボナート、俺と結婚してください」
真剣な表情はいつになく緊張してる。なんだかとても愛おしくって、私は小さくうなづいた。
「ありがとう、ディーン。私でよければ」
そっと肩を引き寄せられ、優しく抱きしめられた。
「ありがとう、ミーガン」
抱きしめられたまま、ディーンは私の髪をなでた。
何だか恥ずかしくて顔を上げられない。
だが、ディーンは「そのかわり」と言い出した。
「へ?」
いきなり怖いんですけど。
「そのかわり、ひとつだけいうこと聞いてほしい」
「な、なに?」
「子供の名前は俺がつける。わかった?」
「はい? それ、どういう」
「ミーガンに命名はさせないってこと」
「ちょっと! それどういう意味よ」
「理由聞く? なあ、ごましお」
二人に挟まれたままのごましおが「みゃあ」と鳴いて、ディーンがくすくすと笑いだした。
「命名力がないって言いたいのね」
「もうっ」と言った私も吹き出してしまって。
ふたりで笑いあいながら、いつまでもこうして笑いあって過ごしていけることを星に願った。
~7年後~
あれ?
誰かが僕の名前を呼んでいる。
「アーサー?」
アーサー・ルクルット。
僕の名前だ、父様がつけてくれた名前。
「母様?」
涙目の母様が僕をぎゅっと抱きしめた。
「僕……」
「よかった、本当によかった」
抱きしめられたまま見ると、父様が小さな妹のリリーを抱えてほっとした顔でこちらを見ていた。
「父様。リリー」
「にいに」
小さな妹がちっちゃな手を伸ばしてくる。
「よかった、気が付いて。お前、木から落ちて気を失っていたんだ」
「木? あ、そうか。僕、ごましおが木に登ってたから。あれ? 僕、ごましおだったよ」
僕から離れた母様が目を見開いて、僕の額に手をやる。
「熱はないわね。アーサー? 母様のことわかるわよね」
「うん」
「あなた、ごましおって。ごましおはほら」
見ると、暖炉の前で丸くなっている。
「だって、僕、ごましおって。そうだ、母様がつけたんだよね、ごましおって名前。それで、僕、バスケットに入れられて。ひどい女の人が母様を剣で、僕、飛びついて噛みついてやったんだ。ねえ、その人どうなったの? そのあとはここにいて」
説明してた僕ははっとした。
「そうか、僕、夢見てたんだね。なんだ、変な夢だね」
顔を見合わせていた母様と父様。
ふたりは眉を下げ、僕の頭をなでてくれた。
「よくやった、アーサー。お前のおかげでミーガン、母様は助かったんだぞ」
と父様が言い、母様は、
「ありがとう、アーサー」
とまたぎゅっと僕を抱きしめた。
何だか訳がわからないけど、母様に
「小さな王子様」
と言われ、僕はとっても嬉しかったんだ。
※ ※ ※ ※ ※
お疲れさまでした。
ミーガンの結婚行進曲はこれで終了となります。
が……
あと少しだけ、婚約中の出来事を書き足そうと思っています。
以前書いたレラのお母さん、ロマンス小説家のミランダ夫人の目線でお話は進みます。
まだ書いていない答え合わせみたいなこともあったのと、
近況でも書いたのですが、大賞に参加したら、文字数が足らない!ってことに気づきまして(汗)
もう少しだけお付き合いいただけたら嬉しいです。
できたら投票の方もどうぞよろしくお願いします。
「そうだけど……」
「王太子妃っていう立場が重いのはわかるよ。俺も王太子で後々は王になれと言われてきた。けど、怖いと感じないことなんてないんだ」
いつも自信満々に見えるのに。ディーンは手のひらを空に向け、指の間から瞬く星を見ている。
「世の中には優秀な人間は山のようにいる。だけど、王太子と言う立場の俺を周りの人間は持ち上げる。近くに俺より優秀な人間がいてもだ。そんなの変だろう? 俺はだから、いつも失敗しないように誰もが立場に関係なく認めてくれるように頑張ってきたんだ。誰も文句が言えないように」
手を降ろし、下を向いたディーンは「それでもさ」とつぶやくように言う。
「俺だって失敗はする。言わなきゃよかったってことを言ってしまって後悔することもある」
それはそうだろう。人間なんだもの、と思ってハッとする。
私は努力もしないで端からあきらめてるってこと?
「ディーン、私」
にこりとしたディーンはうなづき、私の手をとると、顔をじっと見つめる。
「俺と2人で生きてほしい」
真剣な表情から目が離せない。
「ミーガンが失敗しそうになったら俺が助けるし、俺が失敗しそうになったら援護してほしい。俺の側にいてほしいんだ、これからずっと」
ディーンの目がまるで夜空の星のように澄んでいて綺麗だな、なんて思ってしまう。
「ミーガン・ボナート、俺と結婚してください」
真剣な表情はいつになく緊張してる。なんだかとても愛おしくって、私は小さくうなづいた。
「ありがとう、ディーン。私でよければ」
そっと肩を引き寄せられ、優しく抱きしめられた。
「ありがとう、ミーガン」
抱きしめられたまま、ディーンは私の髪をなでた。
何だか恥ずかしくて顔を上げられない。
だが、ディーンは「そのかわり」と言い出した。
「へ?」
いきなり怖いんですけど。
「そのかわり、ひとつだけいうこと聞いてほしい」
「な、なに?」
「子供の名前は俺がつける。わかった?」
「はい? それ、どういう」
「ミーガンに命名はさせないってこと」
「ちょっと! それどういう意味よ」
「理由聞く? なあ、ごましお」
二人に挟まれたままのごましおが「みゃあ」と鳴いて、ディーンがくすくすと笑いだした。
「命名力がないって言いたいのね」
「もうっ」と言った私も吹き出してしまって。
ふたりで笑いあいながら、いつまでもこうして笑いあって過ごしていけることを星に願った。
~7年後~
あれ?
誰かが僕の名前を呼んでいる。
「アーサー?」
アーサー・ルクルット。
僕の名前だ、父様がつけてくれた名前。
「母様?」
涙目の母様が僕をぎゅっと抱きしめた。
「僕……」
「よかった、本当によかった」
抱きしめられたまま見ると、父様が小さな妹のリリーを抱えてほっとした顔でこちらを見ていた。
「父様。リリー」
「にいに」
小さな妹がちっちゃな手を伸ばしてくる。
「よかった、気が付いて。お前、木から落ちて気を失っていたんだ」
「木? あ、そうか。僕、ごましおが木に登ってたから。あれ? 僕、ごましおだったよ」
僕から離れた母様が目を見開いて、僕の額に手をやる。
「熱はないわね。アーサー? 母様のことわかるわよね」
「うん」
「あなた、ごましおって。ごましおはほら」
見ると、暖炉の前で丸くなっている。
「だって、僕、ごましおって。そうだ、母様がつけたんだよね、ごましおって名前。それで、僕、バスケットに入れられて。ひどい女の人が母様を剣で、僕、飛びついて噛みついてやったんだ。ねえ、その人どうなったの? そのあとはここにいて」
説明してた僕ははっとした。
「そうか、僕、夢見てたんだね。なんだ、変な夢だね」
顔を見合わせていた母様と父様。
ふたりは眉を下げ、僕の頭をなでてくれた。
「よくやった、アーサー。お前のおかげでミーガン、母様は助かったんだぞ」
と父様が言い、母様は、
「ありがとう、アーサー」
とまたぎゅっと僕を抱きしめた。
何だか訳がわからないけど、母様に
「小さな王子様」
と言われ、僕はとっても嬉しかったんだ。
※ ※ ※ ※ ※
お疲れさまでした。
ミーガンの結婚行進曲はこれで終了となります。
が……
あと少しだけ、婚約中の出来事を書き足そうと思っています。
以前書いたレラのお母さん、ロマンス小説家のミランダ夫人の目線でお話は進みます。
まだ書いていない答え合わせみたいなこともあったのと、
近況でも書いたのですが、大賞に参加したら、文字数が足らない!ってことに気づきまして(汗)
もう少しだけお付き合いいただけたら嬉しいです。
できたら投票の方もどうぞよろしくお願いします。
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