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ミーガンの結婚行進曲
ごまの活躍
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「嘘っ!」
思わず手で頭や顔をかばってしゃがむ私の横を何か小さなものが駆けてきた。
「きゃーっ!」
叫び声とともにがらんがらんと激しい音がして、見ると剣が地面でくるくると回っている。
「え? 英莉、ごましお?」
ドリアーヌの顔に飛びついたらしいごましおが、倒れているドリアーにそばに王者のように立っていた。
「ごましお、どこから」
驚いて近づいた私だが、いきなり後ろから腕を掴まれ誰かに引き寄せられた。
ぎゅっとハグされ、見上げると、ディーンの横顔が間近にあった。
「ディーン?」
「ミーガン、よかった無事で」
気づけば、黒い服の騎士たちは、いきなり現れた王太子とその側近の兵士たちに戦う意欲も焼失した様子でうなだれたままだ。
「ディーン、どうして?」
「ユルゲンに聞いたよ。ドリアーヌに連れられて、君とユルゲンが会っているという連れ込み宿に行ったんだ」
「ああ、あの屋敷、そうなのね、連れ込み……えっ!」
途端、ディーンは目を細めると、
「そういう場所に男性二人でいるのはどうかと思うが」
「いや、そ、そんなとこって知らなかったし、何もなかったのよ」
なぜか焦り気味に説明してる私にディーンはくすりと笑うと、
「今度、一緒に行こうか」
と耳打ちしてきた。
「なっ……」
ますます焦る私の耳に、
「ドリアーヌ様?」
という声が聞こえてきた。
そうだった、彼女、中身が英莉ちゃんだから猫アレルギーがあるのよね。ごましおが顔めがけてとびついちゃったら大変なことに。
ディーンを押しのけ、ドリアーヌの側に行くと、騎士の一人に抱きかかえられていた。
「英莉ちゃん? ぶつぶつも出てないし、息も正常ね、英莉」
「あの、この方はドリアーヌ様では」
騎士に言われ、「あー」と答えた私は、
「えー、そういう呼び名で遊んだこともあったのよ、そうなのよ、ずいぶん前にね。もちろん、この令嬢はドリアーヌよ、ドリアーヌ」
わたわたと説明した。
「……え? わたし」
か細い声に騎士が、
「ドリアーヌ様!」
と大声を上げる。見ると、ドリアーヌがかすかに目を開き、こちらを見ていた。
「ミーガン?」
「……もしかして、ドリアーヌ?」
「ミーガンなのね」
がばっと上体を起こしたドリアーヌは、
「ごめんなさい」
と頭を下げた。
「私、ユルゲン様を奪ってしまって。あなたにひどいことも言って。私、ずっとユルゲン様が好きだったの。でもあなたと婚約して……」
ユルゲンを? そうだったのか。
ってまって。
これは、本物のドリアーヌだ。じゃあ、英莉ちゃんは?
「あの、ドリアーヌ、そのことはもう大丈夫よ。あなた、今まで変な夢を見てたんじゃない?」
そういわれて気づいたのか、ドリアーヌは「そうよ!」とあたりをきょろきょろ。
「私、変なとこにいたの。真っ白い部屋でお医者みたいな人達がいたわ」
ドリアーヌは馬車にぶつかったとかって話だった。まさか英莉ちゃんも事故にあって?
「く、くるま? っていうものにぶつかったって言うのよ、変でしょう? 私、馬車にぶつかったのにね」
と、途端にあたりを見回し「ここはお屋敷ではないのね。私、いったい」と首を傾げた。
私はディーンに振り返ると、
「ドリアーヌ様はずっと気を失っていらしたみたいです。今までのことは覚えていないの。だから、養生が必要です。すぐ、ユルゲン様のところに連れて行ってあげてください」
ドリアーヌについていた騎士たちは一様に悩んでいるようだったが、ディーンはうなづくとすぐに馬車に乗せるようにと指示を出した。
そして私はディーンの馬に乗せられた。
月夜の中、林を抜けていく。
ディーンの前に乗せられ、私の腕の中にはごましおが入ったバスケット。
心配した御者さんは馬車に乗ってディーンたちの後ろからついてきてくれたらしい。今はドリアーヌを乗せて移動してくれている。
「そいつのおかげだよ」
ディーンは面白そうに子猫が入ったバスケットに目をやった。
「ごましお、御者さんと逃がしたんだけど途中で会ったの?」
「ああ、俺たちはミーガンとドリアーヌを追ってきてたんだ。その途中で走ってくる小さな馬車に会って」
町を抜けて、林を抜けようとしていたところに前方から、小さな馬車は大慌てで走ってきたらしい。
「待て!」
と兵士のテレンスが馬車を停めた。
真っ青な顔いろの御者さんはディーンや兵士の姿を見てほっとしたのか、
「大変です! お嬢さんを助けてください!」
と涙ながらに訴えてきた。
「お嬢さん? ディーン様、それはミーガン様では」
テレンスまで青い顔になりつつしがみついてくる御者に場所を聞いていた。
そこに馬車の中から、
「みゃーーーーーー!!!!」
と声が聞こえてきて。
馬から降りたディーンは馬車の中に顔を突っ込むと、
「ごましおか!?」
と声をかけた。それに返事をするように「みゃあああああ!」という声。
バスケットを開けると、ミーガンの家で見た子猫が飛びついてきた。
「ごましお、お前の飼い主を助けに行くぞ」
肩にごましおを乗せたディーンはテレンスたちと林を抜けて私を助けに走ってくれた。
そして対峙している私とドリアーヌを見つけた。ちょうどドリアーヌが剣を持って私に突っ込んできたその時で、ごましおはディーンの側から飛び降りると、ドリアーヌめがけて飛び込んでいったらしい。
よくよく猫に助けられる運命にあるらしい。
ごましおは本物の猫だと思うけど。
美味しいものをたくさん食べさせてあげないと、なんて考えていた。
思わず手で頭や顔をかばってしゃがむ私の横を何か小さなものが駆けてきた。
「きゃーっ!」
叫び声とともにがらんがらんと激しい音がして、見ると剣が地面でくるくると回っている。
「え? 英莉、ごましお?」
ドリアーヌの顔に飛びついたらしいごましおが、倒れているドリアーにそばに王者のように立っていた。
「ごましお、どこから」
驚いて近づいた私だが、いきなり後ろから腕を掴まれ誰かに引き寄せられた。
ぎゅっとハグされ、見上げると、ディーンの横顔が間近にあった。
「ディーン?」
「ミーガン、よかった無事で」
気づけば、黒い服の騎士たちは、いきなり現れた王太子とその側近の兵士たちに戦う意欲も焼失した様子でうなだれたままだ。
「ディーン、どうして?」
「ユルゲンに聞いたよ。ドリアーヌに連れられて、君とユルゲンが会っているという連れ込み宿に行ったんだ」
「ああ、あの屋敷、そうなのね、連れ込み……えっ!」
途端、ディーンは目を細めると、
「そういう場所に男性二人でいるのはどうかと思うが」
「いや、そ、そんなとこって知らなかったし、何もなかったのよ」
なぜか焦り気味に説明してる私にディーンはくすりと笑うと、
「今度、一緒に行こうか」
と耳打ちしてきた。
「なっ……」
ますます焦る私の耳に、
「ドリアーヌ様?」
という声が聞こえてきた。
そうだった、彼女、中身が英莉ちゃんだから猫アレルギーがあるのよね。ごましおが顔めがけてとびついちゃったら大変なことに。
ディーンを押しのけ、ドリアーヌの側に行くと、騎士の一人に抱きかかえられていた。
「英莉ちゃん? ぶつぶつも出てないし、息も正常ね、英莉」
「あの、この方はドリアーヌ様では」
騎士に言われ、「あー」と答えた私は、
「えー、そういう呼び名で遊んだこともあったのよ、そうなのよ、ずいぶん前にね。もちろん、この令嬢はドリアーヌよ、ドリアーヌ」
わたわたと説明した。
「……え? わたし」
か細い声に騎士が、
「ドリアーヌ様!」
と大声を上げる。見ると、ドリアーヌがかすかに目を開き、こちらを見ていた。
「ミーガン?」
「……もしかして、ドリアーヌ?」
「ミーガンなのね」
がばっと上体を起こしたドリアーヌは、
「ごめんなさい」
と頭を下げた。
「私、ユルゲン様を奪ってしまって。あなたにひどいことも言って。私、ずっとユルゲン様が好きだったの。でもあなたと婚約して……」
ユルゲンを? そうだったのか。
ってまって。
これは、本物のドリアーヌだ。じゃあ、英莉ちゃんは?
「あの、ドリアーヌ、そのことはもう大丈夫よ。あなた、今まで変な夢を見てたんじゃない?」
そういわれて気づいたのか、ドリアーヌは「そうよ!」とあたりをきょろきょろ。
「私、変なとこにいたの。真っ白い部屋でお医者みたいな人達がいたわ」
ドリアーヌは馬車にぶつかったとかって話だった。まさか英莉ちゃんも事故にあって?
「く、くるま? っていうものにぶつかったって言うのよ、変でしょう? 私、馬車にぶつかったのにね」
と、途端にあたりを見回し「ここはお屋敷ではないのね。私、いったい」と首を傾げた。
私はディーンに振り返ると、
「ドリアーヌ様はずっと気を失っていらしたみたいです。今までのことは覚えていないの。だから、養生が必要です。すぐ、ユルゲン様のところに連れて行ってあげてください」
ドリアーヌについていた騎士たちは一様に悩んでいるようだったが、ディーンはうなづくとすぐに馬車に乗せるようにと指示を出した。
そして私はディーンの馬に乗せられた。
月夜の中、林を抜けていく。
ディーンの前に乗せられ、私の腕の中にはごましおが入ったバスケット。
心配した御者さんは馬車に乗ってディーンたちの後ろからついてきてくれたらしい。今はドリアーヌを乗せて移動してくれている。
「そいつのおかげだよ」
ディーンは面白そうに子猫が入ったバスケットに目をやった。
「ごましお、御者さんと逃がしたんだけど途中で会ったの?」
「ああ、俺たちはミーガンとドリアーヌを追ってきてたんだ。その途中で走ってくる小さな馬車に会って」
町を抜けて、林を抜けようとしていたところに前方から、小さな馬車は大慌てで走ってきたらしい。
「待て!」
と兵士のテレンスが馬車を停めた。
真っ青な顔いろの御者さんはディーンや兵士の姿を見てほっとしたのか、
「大変です! お嬢さんを助けてください!」
と涙ながらに訴えてきた。
「お嬢さん? ディーン様、それはミーガン様では」
テレンスまで青い顔になりつつしがみついてくる御者に場所を聞いていた。
そこに馬車の中から、
「みゃーーーーーー!!!!」
と声が聞こえてきて。
馬から降りたディーンは馬車の中に顔を突っ込むと、
「ごましおか!?」
と声をかけた。それに返事をするように「みゃあああああ!」という声。
バスケットを開けると、ミーガンの家で見た子猫が飛びついてきた。
「ごましお、お前の飼い主を助けに行くぞ」
肩にごましおを乗せたディーンはテレンスたちと林を抜けて私を助けに走ってくれた。
そして対峙している私とドリアーヌを見つけた。ちょうどドリアーヌが剣を持って私に突っ込んできたその時で、ごましおはディーンの側から飛び降りると、ドリアーヌめがけて飛び込んでいったらしい。
よくよく猫に助けられる運命にあるらしい。
ごましおは本物の猫だと思うけど。
美味しいものをたくさん食べさせてあげないと、なんて考えていた。
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