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~ジュド・ロックナーの恋愛事情~
夜会に行かないとダメですか
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「ジュド様、お支度は」
と部屋に入ってきたのは侍従のステファンだ。
俺の世話係だが、俺とそう変わらない年齢で頭もいいうえに剣の腕もたつ。
「支度? 何だっけ?」
「夜会ですよ」
「あー……」
俺は途端に顔をゆがめた。
「行かないとダメかな」
ステファンは、しかめっ面になると、
「当たり前です。勝手に婚約者を決められるなんて言語道断と仰ったのはジュド様ですよ」
あー、言ったっけ、そんなこと
「父上も伯父上もは恋愛結婚ではないですか、なのに息子の相手は勝手に決めるんですか。自分の相手ぐらい自分で見つけたい、それぐらいできないで大臣としてやっていくなんてできはしません、と言われてましたよね」
あー、言ったか。こうして聞くと意味わからんが。
何とか嫁取り話から逃げたかったんだよな。それに、勝手に決められるのが嫌なのは本心だ。
「まあ、どのかたからもいいお返事をいただけなかったんですから」
さらっとひどいことを言う。
「ステファン!」
「失礼いたしました。ともかく、夜会には喜んで出席いたしますとお返事したんですから」
さして悪いことを言ってはいないというような涼しい顔で返される。
「でもさあ、あれだろ、今日の夜会はクオラソムプ伯爵家の、そこってメリ……」
うなづいたステファンは、
「メリガレット・ルイリヤ・クオラソムプご令嬢です」
だよなあ、とため息をつく。
どうやら今回のことはクオラソムプ家が大乗り気らしい。俺が王太子になるって言った時も筆頭に現れてたし。あの時はミーガンに頼んで偽婚約者になってもらったのだが。
「だけどさあ、あの子、すごい顔してミーガンに何か飲まそうとしたんだぞ」
「はあ」
「お前はあの場にいなかったから知らないだろうけど」
ミーガンに嫌がらせをする犯人を捕まえる目的でお茶会に乗り込んだ、といっても陰に隠れて見張っていたんだ。そのとき、メリガレット嬢は、ミーガンにものすごくお茶を勧めていた。それはすごく。
「あのときの顔ったら、本当に怖かったんだぞ」
「はいはい」
さっさと俺の着替えを促したステファンは、
「さあ、行きますよ」
とまだわめいてる俺の背中を押した。
と部屋に入ってきたのは侍従のステファンだ。
俺の世話係だが、俺とそう変わらない年齢で頭もいいうえに剣の腕もたつ。
「支度? 何だっけ?」
「夜会ですよ」
「あー……」
俺は途端に顔をゆがめた。
「行かないとダメかな」
ステファンは、しかめっ面になると、
「当たり前です。勝手に婚約者を決められるなんて言語道断と仰ったのはジュド様ですよ」
あー、言ったっけ、そんなこと
「父上も伯父上もは恋愛結婚ではないですか、なのに息子の相手は勝手に決めるんですか。自分の相手ぐらい自分で見つけたい、それぐらいできないで大臣としてやっていくなんてできはしません、と言われてましたよね」
あー、言ったか。こうして聞くと意味わからんが。
何とか嫁取り話から逃げたかったんだよな。それに、勝手に決められるのが嫌なのは本心だ。
「まあ、どのかたからもいいお返事をいただけなかったんですから」
さらっとひどいことを言う。
「ステファン!」
「失礼いたしました。ともかく、夜会には喜んで出席いたしますとお返事したんですから」
さして悪いことを言ってはいないというような涼しい顔で返される。
「でもさあ、あれだろ、今日の夜会はクオラソムプ伯爵家の、そこってメリ……」
うなづいたステファンは、
「メリガレット・ルイリヤ・クオラソムプご令嬢です」
だよなあ、とため息をつく。
どうやら今回のことはクオラソムプ家が大乗り気らしい。俺が王太子になるって言った時も筆頭に現れてたし。あの時はミーガンに頼んで偽婚約者になってもらったのだが。
「だけどさあ、あの子、すごい顔してミーガンに何か飲まそうとしたんだぞ」
「はあ」
「お前はあの場にいなかったから知らないだろうけど」
ミーガンに嫌がらせをする犯人を捕まえる目的でお茶会に乗り込んだ、といっても陰に隠れて見張っていたんだ。そのとき、メリガレット嬢は、ミーガンにものすごくお茶を勧めていた。それはすごく。
「あのときの顔ったら、本当に怖かったんだぞ」
「はいはい」
さっさと俺の着替えを促したステファンは、
「さあ、行きますよ」
とまだわめいてる俺の背中を押した。
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