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片思い中の男
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いきなり腕を掴まれ驚いたが。
クロが腕から飛び降り私の足元でシャーっとうなり背中をまるくし威嚇している。
「ごめんごめん、驚かせるつもりはなかったんだ」
黒いフードを外した男が、何も持ってませんよというふうに両手を上げた。
茶色い髪が目にかかりそうなぐらい長くぼさぼさで黒縁の眼鏡をかけている。
ベストにブーツ姿は街中の商人たちや若い男性とかわらない。
「何の用ですか?」
とりあえず、強盗とかではなさそうだが。
男性は「あんた、ノームの森の魔女なんだろ?」
まただ。
「魔女ではないですけど、そんなもんです」
小さく首を傾げた男性は、
「まあいいか、あのさあ、あんたのとこにフェリシアが行ったんだろ」
「はあ、来られましたけど」
と見ると、男性は首の後ろに手をやりぼそぼそと小声になる。
「あ~、あの、あいつ、恋に効くとかいうハーブを買っていったんだよな」
「そうですよ。匂い袋とハーブティも」
「そうだよな。それで、それは」
ますます声が小さくなる。
「はい?」
「それは、誰のために」
「誰のため?」
「だから、恋に効くんだろ、相手がいることだろ」
いくら鈍くても流石にわかる。
クロも呆れた顔してるんじゃないかしら、と見ると、私の後ろからじっと男性を見ていた。
なんだこいつ、とでも思ってんのかな。
何だかかわいそうな気もしてきたが、男の顔を見上げると、
「フェルプス公爵家の」
途端に手を広げ、
「あー、わかった」
と一言。
デヴィッドか、と言う声が聞こえた。
恋敵ってことかな。
この男性はフェリシアに恋してる。
そういうお相手もゲームの中にでてきたっけ。もしかして大きな商家の息子? 幼馴染?
あきらめきれないのか、男性は、
「フェリシアは、デヴィッドのことが好きだって言ってたか?」
「へ?」
「だから、デヴィッドが好きだから、ライバルに負けたくないから、ハーブを売ってくれって行ったんだろ」
あのとき、フェリシアはなんて言ってた?
レラと同じものを売って欲しい。
デヴィッドは自分のことを物珍しいと思ってるんだろうといっていた。叔母さんはデヴィッドはフェリシアを好きに違いないと思ってるみたいだが。
フェリシア本人はデヴィッドを落としたいとは言ってはいたが、好きだとか愛してるだとかは。だけどそんなことは人前で言いにくいだろう。
それに、
「なんとしても、王太子妃から王妃になるんだって」
真剣に言い切っていた。
まわりに勧められてなんとなくとかではなく、真剣に好きなのかもと思っていた。それを聞いた男性は一瞬ぽかんとした顔をして、それからアハハと笑い出した。
「何かおかしかったですか?」
「あ、いや、すまん。ただ、フェリシアらしいなと思って」
何がおかしいのか、楽しげに笑いつつ、
「ありがとう、魔女さん」
とウインクして去っていった。
一瞬、めちゃくちゃイケメンに見えたんですけど。メガネ取ったら大変! なタイプの人だったのかも。
まさかクロも同じことを思ったんじゃないだろうが、すたすたと去っていった男の後を追っていく。
「クロ!」
ジャックさんのとこに行かないといけないのに。クロを放っておくわけにもいかない。
あわてて、その後を追った。
クロが腕から飛び降り私の足元でシャーっとうなり背中をまるくし威嚇している。
「ごめんごめん、驚かせるつもりはなかったんだ」
黒いフードを外した男が、何も持ってませんよというふうに両手を上げた。
茶色い髪が目にかかりそうなぐらい長くぼさぼさで黒縁の眼鏡をかけている。
ベストにブーツ姿は街中の商人たちや若い男性とかわらない。
「何の用ですか?」
とりあえず、強盗とかではなさそうだが。
男性は「あんた、ノームの森の魔女なんだろ?」
まただ。
「魔女ではないですけど、そんなもんです」
小さく首を傾げた男性は、
「まあいいか、あのさあ、あんたのとこにフェリシアが行ったんだろ」
「はあ、来られましたけど」
と見ると、男性は首の後ろに手をやりぼそぼそと小声になる。
「あ~、あの、あいつ、恋に効くとかいうハーブを買っていったんだよな」
「そうですよ。匂い袋とハーブティも」
「そうだよな。それで、それは」
ますます声が小さくなる。
「はい?」
「それは、誰のために」
「誰のため?」
「だから、恋に効くんだろ、相手がいることだろ」
いくら鈍くても流石にわかる。
クロも呆れた顔してるんじゃないかしら、と見ると、私の後ろからじっと男性を見ていた。
なんだこいつ、とでも思ってんのかな。
何だかかわいそうな気もしてきたが、男の顔を見上げると、
「フェルプス公爵家の」
途端に手を広げ、
「あー、わかった」
と一言。
デヴィッドか、と言う声が聞こえた。
恋敵ってことかな。
この男性はフェリシアに恋してる。
そういうお相手もゲームの中にでてきたっけ。もしかして大きな商家の息子? 幼馴染?
あきらめきれないのか、男性は、
「フェリシアは、デヴィッドのことが好きだって言ってたか?」
「へ?」
「だから、デヴィッドが好きだから、ライバルに負けたくないから、ハーブを売ってくれって行ったんだろ」
あのとき、フェリシアはなんて言ってた?
レラと同じものを売って欲しい。
デヴィッドは自分のことを物珍しいと思ってるんだろうといっていた。叔母さんはデヴィッドはフェリシアを好きに違いないと思ってるみたいだが。
フェリシア本人はデヴィッドを落としたいとは言ってはいたが、好きだとか愛してるだとかは。だけどそんなことは人前で言いにくいだろう。
それに、
「なんとしても、王太子妃から王妃になるんだって」
真剣に言い切っていた。
まわりに勧められてなんとなくとかではなく、真剣に好きなのかもと思っていた。それを聞いた男性は一瞬ぽかんとした顔をして、それからアハハと笑い出した。
「何かおかしかったですか?」
「あ、いや、すまん。ただ、フェリシアらしいなと思って」
何がおかしいのか、楽しげに笑いつつ、
「ありがとう、魔女さん」
とウインクして去っていった。
一瞬、めちゃくちゃイケメンに見えたんですけど。メガネ取ったら大変! なタイプの人だったのかも。
まさかクロも同じことを思ったんじゃないだろうが、すたすたと去っていった男の後を追っていく。
「クロ!」
ジャックさんのとこに行かないといけないのに。クロを放っておくわけにもいかない。
あわてて、その後を追った。
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