目標:撤収

庭にハニワ

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その頃、ヤツらは。1

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総合ギルドガラン支部。
ここ最近…と言うか、とあるチームが来てからいろんなことが怒濤のよ~に起きていた…。
10日に一回あるか無いかの迷惑な問題が。

「…さすがに1日に3つも4つも厄介事が起きるとは思っても見なかったな~…」

ボヤく支部長。
只今、支部長の部屋に集まっているのは狩猟、魔法、生産、傭兵、各部署の部長達。補佐として、副支部長も居る。
頭痛のタネだったフェルマック魔法学園の生徒と、正直何しに来たのか分からない子供先生。
この2人は新たに学園から来た本気モードの副学園長──主に身体強化系の魔法と模擬戦を教える犬族の獣人──が、問答無用で引っ立てていった。
…ありゃあ…ただじゃ済まねえな…。
学園長、お怒りか。

「…今の学園長って…確か…精霊族の人だっけか?」

傭兵部長の疑問に答えたのは、魔法部長。

「ええ。たしか風精霊の…シルフの方だったと記憶してます。ここ50年ほどは、彼女が」
「ま、学園の事は学園で何とかしてもらおうぜ。問題は、だ」

支部長が、額を押さえながら言った。

「あの聖女(笑)をどーするか、だな」

あー。
その場にいた全員が頷いた。
とりあえずメンドくさい、ということだけは確定している案件だ。

「…バシリスクの瞳を移植って…一体何をどうやったんだろ~な…」

生産部長の言葉に答えたのは狩猟部長。

「そもそもバシリスクの変異種なんざ、どこにいたってんだよ。すっげーレア物だぞ」
「どっかで見つけたってんなら、まだ良い方だぞ。地道に育ててた、なんて事だったら…」

傭兵部長の言葉に、全員が頭を抱え込んだ。

「…冗談にしとけ。頼むから…」

狩猟部長が、思いっきり顔をしかめて言った。

「今はそんな、もしも話なんか置いとけ」

支部長が言った。

「それよりも聖女(笑)だ。教会は当てになんないんだろ?」

支部長が、副支部長に問いかける。

「破門した尼僧のことなど知らぬ。もはや我らとは関わりの無い者である…と」

それを聞いた傭兵部長は。

「…完っ璧に切り捨てやがったな。責任逃れも甚だしい」
「当てにならねー教会なんざほっとけ。どーせアイツら意味があるんだか無いんだか、さっぱり分からねえ教議とやらを捻くり回して悦に入ってるだけだしな」
「…一応、奉仕活動もしているんですがね。炊き出しとか治療行為とか…」

生産部長の言いたい放題に、魔法部長が苦笑しながら答えた。

「勇者(笑)はハナっから当てにならねーしな」

狩猟部長は頷きながら言った。
このままだと単なる愚痴こぼし大会になりそうだ。

支部長が、全員に問いかける。

「とりあえず、聖女(笑)からバシリスクの瞳を取り除くってのは、無理か?」

…全員が、黙り込んだ。

「…そーいやあ、今、聖女(笑)はどーしてるんだ?」

生産部長の問いに、傭兵部長が。

「とりあえず、説教部屋に隔離してる」

あー。

説教部屋とは、やらかしたギルド員を連行して文字通り説教する部屋で。その説教内容は連行した部署によって違ったりする。物理的に、だったり魔法的に、だったり。
そして、こっそりと地下にあったりする。

「で、世話役に双子を付けてる」

その場にちょっと安心したような空気が流れた。
聖女(笑)サマは一応、仮にも性別女だから。
おっさんで囲んでいるワケにもいかず、かといって、女を近づけるワケにもいかず。
性別女を聖女(笑)に付ければ、魅了されて聖女(笑)の意のままになる恐れもあり。
どーしたもんだか…と、悩んだりしたのだ。

双子──キリエとキリカの兄弟は、性的嗜好がちょっとややこしいコトになってる兄弟。
兄のキリエは男として男が好きで。弟のキリカは女として男が好きで。…腐海の住人たちに大人気な兄弟である。
…正直メンドくさい。

傭兵としては優秀だし。
望まない者をムリヤリなんかしようとはしないし、女子供や初心者には柔らかい対応をするので、実は結構信頼されている。

「聖女(笑)は自分の望み通りに女──キリカだな──が来た、と思って魅了眼を使ったらしいがな。見た目と心は女でも、身体は男だ。まったく魅了されなかった。で、次に聖女を名乗っていながら色仕掛けで男の護衛──キリエの方だ──を、思い通りにしようとしたが、これも失敗。なんかいろいろ自信無くして大人しくなってるとさ」

傭兵部長の報告に、全員が思った。
…このまま大人しくしていてくれりゃあ良いのに…と。






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