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昔むかし…ってほどでもなく。4
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こちらの命を狙っておきながら、さあこれから殺し合い、という時におかしな事を言い出した女ギツネ。
…訳が分かりませんでした。
誰と見間違っているのやら、こんな…女の姿になっていても、カルの事は覚えているとでも言うのか…。
何故か、女ギツネが見ているのは、女になったカルではなく、自分でした。
女ギツネは自分を見つめて戯言を言い出しました。
何年アナタを待っていたと思っているの?いい加減待ちくたびれたわ。それなのに、女連れで来るなんて、どういうこと?アタシ以外の女なんか殺してよ!殺してしまいなさいよ!
…イカレてる?
カーラと顔を合わせて、首を傾げてしまいました。
まあ、これを片付ければすべて終わり。
自分もカーラも武器を手に、女ギツネへと向かいました。
すると急に女ギツネの様子が変わり、先ほどとは違うことを喚き始めました。
カルを殺したのはお前だ!お前がいなければ、カルが死ぬことも無かったのに!
そう言い出したかと思えば。
なんで助けてくれなかったの…。アンタならアタシを助けるのなんて、訳もなかったハズなのに、なんで見捨てたの?
今度は泣き言を言い出しました。
…1人の中に、何人かの違う女が入っているようでした。
壊れているわね。
カーラは静かに言いました。
さっさと片付けてしまいましょう。旦那様が待ちわびているもの。
割とためらいは無いようでした。
あら、だってわたしは努力したもの。
常に誰かに何かしてもらうことしか考えて無い、何かしてもらうのが当然、なんて思っている甘ったれなんかに興味なんて持てないわ。…この子はずっと変わらないままだったのね。それに…わたしを……オレを殺したのはお前だろう?マリー・ルイーズ・エミリー・ローズ・ステイシア。
…それ1人の名前じゃあ無いだろう…。
どうりで覚えていなかった訳です。
女ギツネは狂ったように喚き続けました。
ウソだウソだウソだ!
カルを殺したのは白キズ!
アタシを見捨てたのは白キズ!
助けてくれなかったのは白キズ!
悪いのは白キズなんだ!
白キズ!白キズ!白キズ!
お前が全部悪いんだ!
お前があぁぁぁ!
女ギツネの足元から、黒い影が一気に吹き上がり、刃となって自分達に斬りつけてきました。…何故か自分の顔を重点的に狙って。
手にした武器…小刀で応戦しようにも実体の無い影でしたので、傷付けられるままとなってしまいました。救いは影の一片が小さく、さほど威力が無い、ということくらいでしょうか。鬱陶しいことに変わりは無いですが。
何事か喚き散らしている女ギツネに、カーラは言いました。
お前が全部他人のせいにして、すべて他人任せにして、自分では何一つしようとしなかったから、こんなことになったのだろう。だいたいお前がオレに纏わりついたのは、白キズに見せつける為だったろうが。まったく相手にされて無かったがな。そんなことも分からずにオレにすべて依存しやがって…。何をするにも何時でも何処でも纏わりついてきて、どれだけ鬱陶しかったことか…。
後半完全に男に戻ったカーラは、心底嫌そうでした。そして、女ギツネの攻撃が自分に集中しているのを良い事に、少しずつ立ち位置を変えながら、女ギツネを惑乱させようとしていました。
…今まで溜まっていたモノを、吐き出していただけかも知れませんが…。
第一、お前がオレを刺した時も、お前が機関の連中のオモチャになってた時も、趣味の偏った娼館に売り飛ばされた時も、白キズは居なかったぞ。その頃白キズは、国に居なかったんだからな。外国で任務に着いていた白キズに、何をどう出来たっていうんだ?
カーラ──カルの言葉に、女ギツネは過剰反応しました。
ウソだウソだウソだ──!
アタシのそばには、いつも白い髪の男が──!
白髪頭なんか、そこら中にいくらでも居るだろうが。白髪っぽい頭も、オレを含めりゃ尚更。お前の頭の中じゃあどうなっているんだか知らないけどな?オレは──わたしはお前なんかに付きまとわれて、正直迷惑していたし、白キズはお前ごときには一切興味が無かったわ。ねぇ、あなた。
途中から女に戻って話し続けたカーラは、自分に向かって微笑みかけました。元男とは到底思えない、艶のある微笑みを。
女ギツネはすっかり混乱して、いつしか影の刃片も数が減り、浮遊しているだけになっていました。ブツブツと呟いている女ギツネ。
ウソだ──カルはアタシを愛していたし、白キズはいつもアタシを見ていたし……。
そんな女ギツネにカーラは。
お前を愛していた事など無かったわ。白キズはどう?
カーラの問いに、自分は答えました。
今回、こんな馬鹿げた事に巻き込まれるまで、そんな子供がいた事すら忘れていたな。それに…なあ、カーラ。
あら、なにかしら?
お前は道端の石ころの一つ一つにいちいち気を配るか?気にせず歩くだろう。
そうね。特に何も思わないわね。
と、言うより気付かないことの方が多いわね。だって道端に転がっているだけなんですもの。端にあるモノなんて、気にしないわ。
そうでしょう?
…訳が分かりませんでした。
誰と見間違っているのやら、こんな…女の姿になっていても、カルの事は覚えているとでも言うのか…。
何故か、女ギツネが見ているのは、女になったカルではなく、自分でした。
女ギツネは自分を見つめて戯言を言い出しました。
何年アナタを待っていたと思っているの?いい加減待ちくたびれたわ。それなのに、女連れで来るなんて、どういうこと?アタシ以外の女なんか殺してよ!殺してしまいなさいよ!
…イカレてる?
カーラと顔を合わせて、首を傾げてしまいました。
まあ、これを片付ければすべて終わり。
自分もカーラも武器を手に、女ギツネへと向かいました。
すると急に女ギツネの様子が変わり、先ほどとは違うことを喚き始めました。
カルを殺したのはお前だ!お前がいなければ、カルが死ぬことも無かったのに!
そう言い出したかと思えば。
なんで助けてくれなかったの…。アンタならアタシを助けるのなんて、訳もなかったハズなのに、なんで見捨てたの?
今度は泣き言を言い出しました。
…1人の中に、何人かの違う女が入っているようでした。
壊れているわね。
カーラは静かに言いました。
さっさと片付けてしまいましょう。旦那様が待ちわびているもの。
割とためらいは無いようでした。
あら、だってわたしは努力したもの。
常に誰かに何かしてもらうことしか考えて無い、何かしてもらうのが当然、なんて思っている甘ったれなんかに興味なんて持てないわ。…この子はずっと変わらないままだったのね。それに…わたしを……オレを殺したのはお前だろう?マリー・ルイーズ・エミリー・ローズ・ステイシア。
…それ1人の名前じゃあ無いだろう…。
どうりで覚えていなかった訳です。
女ギツネは狂ったように喚き続けました。
ウソだウソだウソだ!
カルを殺したのは白キズ!
アタシを見捨てたのは白キズ!
助けてくれなかったのは白キズ!
悪いのは白キズなんだ!
白キズ!白キズ!白キズ!
お前が全部悪いんだ!
お前があぁぁぁ!
女ギツネの足元から、黒い影が一気に吹き上がり、刃となって自分達に斬りつけてきました。…何故か自分の顔を重点的に狙って。
手にした武器…小刀で応戦しようにも実体の無い影でしたので、傷付けられるままとなってしまいました。救いは影の一片が小さく、さほど威力が無い、ということくらいでしょうか。鬱陶しいことに変わりは無いですが。
何事か喚き散らしている女ギツネに、カーラは言いました。
お前が全部他人のせいにして、すべて他人任せにして、自分では何一つしようとしなかったから、こんなことになったのだろう。だいたいお前がオレに纏わりついたのは、白キズに見せつける為だったろうが。まったく相手にされて無かったがな。そんなことも分からずにオレにすべて依存しやがって…。何をするにも何時でも何処でも纏わりついてきて、どれだけ鬱陶しかったことか…。
後半完全に男に戻ったカーラは、心底嫌そうでした。そして、女ギツネの攻撃が自分に集中しているのを良い事に、少しずつ立ち位置を変えながら、女ギツネを惑乱させようとしていました。
…今まで溜まっていたモノを、吐き出していただけかも知れませんが…。
第一、お前がオレを刺した時も、お前が機関の連中のオモチャになってた時も、趣味の偏った娼館に売り飛ばされた時も、白キズは居なかったぞ。その頃白キズは、国に居なかったんだからな。外国で任務に着いていた白キズに、何をどう出来たっていうんだ?
カーラ──カルの言葉に、女ギツネは過剰反応しました。
ウソだウソだウソだ──!
アタシのそばには、いつも白い髪の男が──!
白髪頭なんか、そこら中にいくらでも居るだろうが。白髪っぽい頭も、オレを含めりゃ尚更。お前の頭の中じゃあどうなっているんだか知らないけどな?オレは──わたしはお前なんかに付きまとわれて、正直迷惑していたし、白キズはお前ごときには一切興味が無かったわ。ねぇ、あなた。
途中から女に戻って話し続けたカーラは、自分に向かって微笑みかけました。元男とは到底思えない、艶のある微笑みを。
女ギツネはすっかり混乱して、いつしか影の刃片も数が減り、浮遊しているだけになっていました。ブツブツと呟いている女ギツネ。
ウソだ──カルはアタシを愛していたし、白キズはいつもアタシを見ていたし……。
そんな女ギツネにカーラは。
お前を愛していた事など無かったわ。白キズはどう?
カーラの問いに、自分は答えました。
今回、こんな馬鹿げた事に巻き込まれるまで、そんな子供がいた事すら忘れていたな。それに…なあ、カーラ。
あら、なにかしら?
お前は道端の石ころの一つ一つにいちいち気を配るか?気にせず歩くだろう。
そうね。特に何も思わないわね。
と、言うより気付かないことの方が多いわね。だって道端に転がっているだけなんですもの。端にあるモノなんて、気にしないわ。
そうでしょう?
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