目標:撤収

庭にハニワ

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既に番外編じゃあない。77

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中庭にやって来た帰還希望者達をざっと見ながら、真言が言った。

「? ……どーやら深沢は、残る事にしたよーだな」
「ん? あぁ、そーだな。あそこに居るな。彼女? と2人、べったり引っ付いてさ」

和樹が、中庭への入り口を示した。

確かに。
残留希望っポい奴らがちらほらと、彼氏彼女を連れてこっちを見ている。
どーやらお見送りしてくれるつもりらしいな。
伝令神の暴露騒ぎからこっち、まったく姿を見ない一部の大人達とは違うね。
……物理的に身動き出来ない、第2王子のお妃候補(確定)なんてヤツも居るけどな。

わざわざのお見送りとか、微妙に律儀だな。
まぁ、先の人生、心に決めたヤツらのコトはもういいや。

真言は、ざっくりと残留組の事をスルー。
帰還希望組に声を掛けた。

「んじゃ、帰還希望者は、ちょっとこっち来いー。……そう、その円の中心あたりに集まれー」

来い来い、と手招きする真言。
和樹も同じように手招きしている。



ぞろぞろと集まった帰還希望者達。
真言と和樹。
冬至、尚人、悟。
春香と千里。
職能勇者から青山と田中。
バスの運ちゃん加藤。
それに、こっちの世界で出来上がったカップル1組と、元の世界にお相手が居るヤツ2人。
そして、この世界にはどーにも馴染めない! と女子が1人。
男女の割合的に、野郎の方が多いとか。

「普通、現実見てんのは女の方だと思ってたんだけどな」

真言がぽつり、と言った。
和樹が半笑いで返した。

「いや、だから愛に生きるんだろ?」
「……安易に生きるワケか」

真言と和樹のジャレ合いに、冬至が乗っかる。

「思いの外、夢見る乙女が多かったってダケだろ」
「うわ、始末に終えねぇ」
「やっぱ愛じゃなくて安易だろ」
「紅林……上手いコト言ってんじゃないですよ」
「いや、別に上手くは無くね!?」

なんだろう……。
委員長まで乗っかってるよ……。

そこはかとなく緊迫していたハズの雰囲気が、台無しになった。
悟と千里は、半目になった。



「ねぇ、紅林君? 楽しそうなところ悪いんだけど……」

なんとなく生温かい空気の中、春香が真言に声を掛けた。
その場に居た全員が、春香に注目した。

「…っ……なんか、魔術師の人達が……」

注目を受けた春香が、ちょっとビクッとしながら、どこか怯えたように言った。

ん?

改めて、結界の外を見る帰還希望者達。

「げ」
「うっわ」
「えええ……」

結界の外では、魔術師達が滾っていた。

顔を真っ赤に染めて、口々に何か叫んでいる魔術師連中。
が。
聞き取れないほどに、各々が同時に何事かを好き放題に叫んでいるので全力でスルーした。

そのうち血圧上がってぶっ倒れるヤツ出てくんじゃね?

と、どこか他人事のよーに、興奮する魔術師連中を眺める真言。

まぁどーでもいいか。
じゃ、そろそろ……。

と、真言が異次元倉庫からごっそりと、人数分の魔石を引っ張り出した。
その様を見て、更に色めき立つ魔術師連中……。

あ。

「真言よー、本当に倒れたヤツが出始めたぞー」

和樹が、状況の経過報告をしている。

「……倒れたのをそのまま放っとくんじゃなくて、せめて後方に下げてあげればいいのに……」

尚人が、呆れたように言った。



そんな外野の騒ぎは一切スルーして、真言は帰還希望者達に一つずつ魔石──魔物の胎内から出たモノよりも、内包する魔力が強い──を、手渡して。

「絶対に手放すな。死にたくないだろ?」

と、さりげなく脅迫。
微妙な顔をする帰還希望者達に、ざっくりと手順を説明する。

とりあえず、円の中心に集まって、その石をしっかり握ってろ。
後は俺に任せろ。

……だって、さ。

ざっくり過ぎないか?

思わず和樹の方を見た帰還希望者達だったが。
和樹は見事な半笑いだった。
その顔には、しょーがねーよ真言だし、と、付き合いの長い者だけが理解した、妥協と諦めがまとわりついていた。



そんな中。

「閣下!」

第二騎士団団長を始めとした、『嘆きの森』の演習に参加した騎士の一団がやって来て。

「お帰りになるそうですが……。我ら一同、またのお越しをお待ちしておりますぞーっ!」

言いたい事だけ言って、妙にサワヤカな笑みを残して去って行った……。

えええええ……。









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