364 / 374
既に番外編じゃあない。71
しおりを挟む
冬至はなんとなく、迷える勇者達の相談窓口みたくなっていた。
真言と和樹が姿を消した後のこと。
閣下の姿は無いが、勇者オブ勇者の彼ならそこに居るじゃないか。
真言の追っかけ以外の一部の騎士達──主に、『嘆きの森』での冬至の本気の暴れっぷりを知らない連中が。
「最後に一手ご教授願おうか?」
と、微妙に上から目線で絡んで来たのを和樹特製金砕棒で蹴散らして。
やれやれ……と、ひと息ついて食堂で茶をすすってたところに、加藤がひょこっとやって来て。
「佐伯さん、ちょっといいかね……?」
冬至に絡んだ騎士達は、上層部の意を受けていた。
勇者オブ勇者をとりあえずボコボコにして、身動き出来なくした上で、隔離&監禁。
そして物理的に元の世界に帰れないように……と目論んでたりしたのだが……。
対人戦、つか、対集団戦闘に長けた元ヤン相手にゃ敵わなかった、と。
ま、ね?
演習場に金棒担いでやって来た、地獄の鬼めいた冬至の姿にビビってた時点で、下らない、っつか、セコい目論見は瓦解していたワケだが。
なんとゆーか、金属鎧をボコボコ凹まされて。
「……てめえらにゃ、治癒魔術って不思議技術があるんだから、これっくらいじゃあ死なないよなぁ?」
そう言って、汗とそれ以外の妙に赤い飛沫を拭いながら、にやあ、と笑った冬至に。
絡んでいった騎士達は、心の底から後悔したとかしないとか。
……相手が悪かったね。
つか、悪過ぎたね。
野生に帰った……じゃない。
昔を思い出した、元ヤンキーのケンカ殺法は、型にはまった騎士達の戦闘法とは相性最悪だったよーだ。
そんな騒ぎがあって、一旦冬至の周囲が静かになったところで。
加藤がずっと胸に抱えていた悩みを冬至にぶちまけたんだが。
加藤曰く。
元の世界に帰ったところで、自分の居場所があるかどうか……。
成人してても子供は大事だし、女房も愛してはいるが……。
「女房はダブル不倫の真っ最中でね……。もう長いこと、相手と続いていてね」
いや、そんな話を聞かされて、おれにどーしろってのよ……。
冬至は、ちょっと気が遠くなりかけた。
が。
とにかく、加藤には、胸に溜まってたモノを全部吐き出させた方が良い、と判断して聞き役に回った。
なんでも、その相手と加藤の奥さんは、もう10年以上の関係らしい。
当然、と言っちゃなんだが、向こうさんにも家族が居て。
完全なダブル不倫と分かった時には、本気でどーすりゃいいのか頭を抱えたそーだ。
簡単に別れりゃいいってモンじゃ、ないよな……。
「向こうさんの奥さんが、なかなか気丈な人でね。まず、4人で会おうって。お互い家族がある身なんだし、ちゃんと話合わないと……って、ね」
なんつーか、うん。
その、向こうさんの奥さんとやらは、強いっつーか。
何が一番大事なのか、割り切っちゃったんかね?
さっくり離婚しちゃうのが、一番手っ取り早いかもだけどね。
加藤の子供は成人してるけど、向こうさんトコには未成年も居るそーで。
加藤はず~っとこんなコトを抱えていたそーだ。
精神的に疲弊してるところに、こんな──異世界転移なんかしちゃったワケだし。
「……こっちに来て、もう半年以上立つし。もう、女房は……」
ずーん……と暗い何かを背負った加藤が落ち込んでいる。
あー……。
冬至はガリガリと頭を掻いて、落ち込む加藤に聞いてみた。
「清水先生とは、そんな話は……」
「あの人にこんな事話してもね。きっぱりと別れて新しい恋には生きればいい、だってさ。自分ももういい年したおじさんなんだけどね。……なんてゆーか、あの人、情とかしがらみとか、そーゆーモンが分からないんだよね。……まだ若いから、かねぇ」
50代のおじさんから見たら、三十路はまだまだ若い兄ちゃんでしかないよーだ。
真言と和樹が姿を消した後のこと。
閣下の姿は無いが、勇者オブ勇者の彼ならそこに居るじゃないか。
真言の追っかけ以外の一部の騎士達──主に、『嘆きの森』での冬至の本気の暴れっぷりを知らない連中が。
「最後に一手ご教授願おうか?」
と、微妙に上から目線で絡んで来たのを和樹特製金砕棒で蹴散らして。
やれやれ……と、ひと息ついて食堂で茶をすすってたところに、加藤がひょこっとやって来て。
「佐伯さん、ちょっといいかね……?」
冬至に絡んだ騎士達は、上層部の意を受けていた。
勇者オブ勇者をとりあえずボコボコにして、身動き出来なくした上で、隔離&監禁。
そして物理的に元の世界に帰れないように……と目論んでたりしたのだが……。
対人戦、つか、対集団戦闘に長けた元ヤン相手にゃ敵わなかった、と。
ま、ね?
演習場に金棒担いでやって来た、地獄の鬼めいた冬至の姿にビビってた時点で、下らない、っつか、セコい目論見は瓦解していたワケだが。
なんとゆーか、金属鎧をボコボコ凹まされて。
「……てめえらにゃ、治癒魔術って不思議技術があるんだから、これっくらいじゃあ死なないよなぁ?」
そう言って、汗とそれ以外の妙に赤い飛沫を拭いながら、にやあ、と笑った冬至に。
絡んでいった騎士達は、心の底から後悔したとかしないとか。
……相手が悪かったね。
つか、悪過ぎたね。
野生に帰った……じゃない。
昔を思い出した、元ヤンキーのケンカ殺法は、型にはまった騎士達の戦闘法とは相性最悪だったよーだ。
そんな騒ぎがあって、一旦冬至の周囲が静かになったところで。
加藤がずっと胸に抱えていた悩みを冬至にぶちまけたんだが。
加藤曰く。
元の世界に帰ったところで、自分の居場所があるかどうか……。
成人してても子供は大事だし、女房も愛してはいるが……。
「女房はダブル不倫の真っ最中でね……。もう長いこと、相手と続いていてね」
いや、そんな話を聞かされて、おれにどーしろってのよ……。
冬至は、ちょっと気が遠くなりかけた。
が。
とにかく、加藤には、胸に溜まってたモノを全部吐き出させた方が良い、と判断して聞き役に回った。
なんでも、その相手と加藤の奥さんは、もう10年以上の関係らしい。
当然、と言っちゃなんだが、向こうさんにも家族が居て。
完全なダブル不倫と分かった時には、本気でどーすりゃいいのか頭を抱えたそーだ。
簡単に別れりゃいいってモンじゃ、ないよな……。
「向こうさんの奥さんが、なかなか気丈な人でね。まず、4人で会おうって。お互い家族がある身なんだし、ちゃんと話合わないと……って、ね」
なんつーか、うん。
その、向こうさんの奥さんとやらは、強いっつーか。
何が一番大事なのか、割り切っちゃったんかね?
さっくり離婚しちゃうのが、一番手っ取り早いかもだけどね。
加藤の子供は成人してるけど、向こうさんトコには未成年も居るそーで。
加藤はず~っとこんなコトを抱えていたそーだ。
精神的に疲弊してるところに、こんな──異世界転移なんかしちゃったワケだし。
「……こっちに来て、もう半年以上立つし。もう、女房は……」
ずーん……と暗い何かを背負った加藤が落ち込んでいる。
あー……。
冬至はガリガリと頭を掻いて、落ち込む加藤に聞いてみた。
「清水先生とは、そんな話は……」
「あの人にこんな事話してもね。きっぱりと別れて新しい恋には生きればいい、だってさ。自分ももういい年したおじさんなんだけどね。……なんてゆーか、あの人、情とかしがらみとか、そーゆーモンが分からないんだよね。……まだ若いから、かねぇ」
50代のおじさんから見たら、三十路はまだまだ若い兄ちゃんでしかないよーだ。
10
お気に入りに追加
575
あなたにおすすめの小説
ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました
杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」
王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。
第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。
確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。
唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。
もう味方はいない。
誰への義理もない。
ならば、もうどうにでもなればいい。
アレクシアはスッと背筋を伸ばした。
そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺!
◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。
◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。
◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。
◆全8話、最終話だけ少し長めです。
恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。
◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。
◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03)
◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます!
9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!
この度、双子の妹が私になりすまして旦那様と初夜を済ませてしまったので、私は妹として生きる事になりました
秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
伯爵令嬢のアンネリーゼは侯爵令息のオスカーと結婚をした。籍を入れたその夜、初夜を迎える筈だったが急激な睡魔に襲われて意識を手放してしまった。そして、朝目を覚ますと双子の妹であるアンナマリーが自分になり代わり旦那のオスカーと初夜を済ませてしまっていた。しかも両親は「見た目は同じなんだし、済ませてしまったなら仕方ないわ。アンネリーゼ、貴女は今日からアンナマリーとして過ごしなさい」と告げた。
そして妹として過ごす事になったアンネリーゼは妹の代わりに学院に通う事となり……更にそこで最悪な事態に見舞われて……?
何度も死に戻りで助けてあげたのに、全く気付かない姉にパーティーを追い出された 〜いろいろ勘違いしていますけど、後悔した時にはもう手遅れです〜
超高校級の小説家
ファンタジー
武門で名を馳せるシリウス男爵家の四女クロエ・シリウスは妾腹の子としてプロキオン公国で生まれました。
クロエが生まれた時にクロエの母はシリウス男爵家を追い出され、シリウス男爵のわずかな支援と母の稼ぎを頼りに母子二人で静かに暮らしていました。
しかし、クロエが12歳の時に母が亡くなり、生前の母の頼みでクロエはシリウス男爵家に引き取られることになりました。
クロエは正妻と三人の姉から酷い嫌がらせを受けますが、行き場のないクロエは使用人同然の生活を受け入れます。
クロエが15歳になった時、転機が訪れます。
プロキオン大公国で最近見つかった地下迷宮から降りかかった呪いで、公子が深い眠りに落ちて目覚めなくなってしまいました。
焦ったプロキオン大公は領地の貴族にお触れを出したのです。
『迷宮の謎を解き明かし公子を救った者には、莫大な謝礼と令嬢に公子との婚約を約束する』
そこそこの戦闘の素質があるクロエの三人の姉もクロエを巻き込んで手探りで迷宮の探索を始めました。
最初はなかなか上手くいきませんでしたが、根気よく探索を続けるうちにクロエ達は次第に頭角を現し始め、迷宮の到達階層1位のパーティーにまで上り詰めました。
しかし、三人の姉はその日のうちにクロエをパーティーから追い出したのです。
自分達の成功が、クロエに発現したとんでもないユニークスキルのおかげだとは知りもせずに。
前世腐女子、今世でイケメン攻略対象者二人から溺愛されるなんて聞いてません!
湊未来
恋愛
『ここは、いったい何処の世界ですのぉぉぉ!!』
リンベル伯爵家の一人娘アイシャには、生まれた時から前世の記憶がある。社畜だった前世、腐女子として楽しい人生を謳歌していたアイシャは、朝目覚めたら、中世ヨーロッパ風の世界へと転生していた。
アラサー腐女子が赤ちゃんに転生!?
お世話という名の羞恥地獄を耐え、七歳を迎えたアイシャだったが、未だにこの世界が、何処なのか分からない。ゲームの世界なのか、本の世界なのか、はたまた、アイシャの知らない異世界なのか……
『だったら、好きに生きたっていいわよね!』
今世も腐女子として、趣味に生きようと決意したアイシャへ次々と襲いかかる恋の罠。そして、ある事件をきっかけに目覚める『白き魔女』としての力。しかし、そんなアイシャの前に立ちはだかる『もう一人の白き魔女』の存在。
果たしてアイシャは、今世でも腐女子として己の趣味を満喫できるのか?
そして、アイシャの転生した世界と白き魔女の秘密とは?
アラサー腐女子が転生し、知らない異世界で自分の趣味を満喫していたら、いつの間にか幼なじみに外堀り埋められて逃げられなくなっていた話。
腐女子として趣味に生きたい令嬢アイシャ×ダブルヒーローでお届けするラブコメディ。
はじまり、はじまり〜♪
※恋愛コメディ時々シリアスになる予定です。
※男同士の絡みは雰囲気程度です。
※こちらの作品は二年前に投稿した『転生アラサー腐女子はモブですから!?』の大幅改稿版になります。7万字の追加修正をしておりますが、話の流れの変更はありません。
※湊未来作成、AI画像使用
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
【完結】悪役令嬢に転生したのでこっちから婚約破棄してみました。
ぴえろん
恋愛
私の名前は氷見雪奈。26歳彼氏無し、OLとして平凡な人生を送るアラサーだった。残業で疲れてソファで寝てしまい、慌てて起きたら大好きだった小説「花に愛された少女」に出てくる悪役令嬢の「アリス」に転生していました。・・・・ちょっと待って。アリスって確か、王子の婚約者だけど、王子から寵愛を受けている女の子に嫉妬して毒殺しようとして、その罪で処刑される結末だよね・・・!?いや冗談じゃないから!他人の罪で処刑されるなんて死んでも嫌だから!そうなる前に、王子なんてこっちから婚約破棄してやる!!
ハズレ嫁は最強の天才公爵様と再婚しました。
光子
恋愛
ーーー両親の愛情は、全て、可愛い妹の物だった。
昔から、私のモノは、妹が欲しがれば、全て妹のモノになった。お菓子も、玩具も、友人も、恋人も、何もかも。
逆らえば、頬を叩かれ、食事を取り上げられ、何日も部屋に閉じ込められる。
でも、私は不幸じゃなかった。
私には、幼馴染である、カインがいたから。同じ伯爵爵位を持つ、私の大好きな幼馴染、《カイン=マルクス》。彼だけは、いつも私の傍にいてくれた。
彼からのプロポーズを受けた時は、本当に嬉しかった。私を、あの家から救い出してくれたと思った。
私は貴方と結婚出来て、本当に幸せだったーーー
例え、私に子供が出来ず、義母からハズレ嫁と罵られようとも、義父から、マルクス伯爵家の事業全般を丸投げされようとも、私は、貴方さえいてくれれば、それで幸せだったのにーーー。
「《ルエル》お姉様、ごめんなさぁい。私、カイン様との子供を授かったんです」
「すまない、ルエル。君の事は愛しているんだ……でも、僕はマルクス伯爵家の跡取りとして、どうしても世継ぎが必要なんだ!だから、君と離婚し、僕の子供を宿してくれた《エレノア》と、再婚する!」
夫と妹から告げられたのは、地獄に叩き落とされるような、残酷な言葉だった。
カインも結局、私を裏切るのね。
エレノアは、結局、私から全てを奪うのね。
それなら、もういいわ。全部、要らない。
絶対に許さないわ。
私が味わった苦しみを、悲しみを、怒りを、全部返さないと気がすまないーー!
覚悟していてね?
私は、絶対に貴方達を許さないから。
「私、貴方と離婚出来て、幸せよ。
私、あんな男の子供を産まなくて、幸せよ。
ざまぁみろ」
不定期更新。
この世界は私の考えた世界の話です。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。
(完結)お姉様を選んだことを今更後悔しても遅いです!
青空一夏
恋愛
私はブロッサム・ビアス。ビアス候爵家の次女で、私の婚約者はフロイド・ターナー伯爵令息だった。結婚式を一ヶ月後に控え、私は仕上がってきたドレスをお父様達に見せていた。
すると、お母様達は思いがけない言葉を口にする。
「まぁ、素敵! そのドレスはお腹周りをカバーできて良いわね。コーデリアにぴったりよ」
「まだ、コーデリアのお腹は目立たないが、それなら大丈夫だろう」
なぜ、お姉様の名前がでてくるの?
なんと、お姉様は私の婚約者の子供を妊娠していると言い出して、フロイドは私に婚約破棄をつきつけたのだった。
※タグの追加や変更あるかもしれません。
※因果応報的ざまぁのはず。
※作者独自の世界のゆるふわ設定。
※過去作のリメイク版です。過去作品は非公開にしました。
※表紙は作者作成AIイラスト。ブロッサムのイメージイラストです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる