目標:撤収

庭にハニワ

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既に番外編じゃあない。71

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冬至はなんとなく、迷える勇者達の相談窓口みたくなっていた。

真言と和樹が姿を消した後のこと。

閣下の姿は無いが、勇者オブ勇者の彼ならそこに居るじゃないか。

真言の追っかけ以外の一部の騎士達──主に、『嘆きの森』での冬至の本気の暴れっぷりを知らない連中が。

「最後に一手ご教授願おうか?」

と、微妙に上から目線で絡んで来たのを和樹特製金砕棒で蹴散らして。
やれやれ……と、ひと息ついて食堂で茶をすすってたところに、加藤がひょこっとやって来て。

「佐伯さん、ちょっといいかね……?」



冬至に絡んだ騎士達は、上層部の意を受けていた。
勇者オブ勇者をとりあえずボコボコにして、身動き出来なくした上で、隔離&監禁。
そして物理的に元の世界に帰れないように……と目論んでたりしたのだが……。
対人戦、つか、対集団戦闘に長けた元ヤン相手にゃ敵わなかった、と。
ま、ね?
演習場に金棒担いでやって来た、地獄の鬼めいた冬至の姿にビビってた時点で、下らない、っつか、セコい目論見は瓦解していたワケだが。
なんとゆーか、金属鎧をボコボコ凹まされて。

「……てめえらにゃ、治癒魔術って不思議技術があるんだから、これっくらいじゃあ死なないよなぁ?」

そう言って、汗とそれ以外の妙に赤い飛沫を拭いながら、にやあ、と笑った冬至に。
絡んでいった騎士達は、心の底から後悔したとかしないとか。

……相手が悪かったね。
つか、悪過ぎたね。

野生に帰った……じゃない。
昔を思い出した、元ヤンキーのケンカ殺法は、型にはまった騎士達の戦闘法とは相性最悪だったよーだ。



そんな騒ぎがあって、一旦冬至の周囲が静かになったところで。
加藤がずっと胸に抱えていた悩みを冬至にぶちまけたんだが。

加藤曰く。
元の世界に帰ったところで、自分の居場所があるかどうか……。
成人してても子供は大事だし、女房も愛してはいるが……。

「女房はダブル不倫の真っ最中でね……。もう長いこと、相手と続いていてね」

いや、そんな話を聞かされて、おれにどーしろってのよ……。

冬至は、ちょっと気が遠くなりかけた。
が。
とにかく、加藤には、胸に溜まってたモノを全部吐き出させた方が良い、と判断して聞き役に回った。

なんでも、その相手と加藤の奥さんは、もう10年以上の関係らしい。
当然、と言っちゃなんだが、向こうさんにも家族が居て。
完全なダブル不倫と分かった時には、本気でどーすりゃいいのか頭を抱えたそーだ。
簡単に別れりゃいいってモンじゃ、ないよな……。

「向こうさんの奥さんが、なかなか気丈な人でね。まず、4人で会おうって。お互い家族がある身なんだし、ちゃんと話合わないと……って、ね」

なんつーか、うん。
その、向こうさんの奥さんとやらは、強いっつーか。
何が一番大事なのか、割り切っちゃったんかね?
さっくり離婚しちゃうのが、一番手っ取り早いかもだけどね。
加藤の子供は成人してるけど、向こうさんトコには未成年も居るそーで。

加藤はず~っとこんなコトを抱えていたそーだ。
精神的に疲弊してるところに、こんな──異世界転移なんかしちゃったワケだし。

「……こっちに来て、もう半年以上立つし。もう、女房は……」

ずーん……と暗い何かを背負った加藤が落ち込んでいる。

あー……。

冬至はガリガリと頭を掻いて、落ち込む加藤に聞いてみた。

「清水先生とは、そんな話は……」
「あの人にこんな事話してもね。きっぱりと別れて新しい恋には生きればいい、だってさ。自分ももういい年したおじさんなんだけどね。……なんてゆーか、あの人、情とかしがらみとか、そーゆーモンが分からないんだよね。……まだ若いから、かねぇ」

50代のおじさんから見たら、三十路はまだまだ若い兄ちゃんでしかないよーだ。







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