目標:撤収

庭にハニワ

文字の大きさ
上 下
359 / 374

既に番外編じゃあない。66

しおりを挟む
こそこそと大広間を抜け出して、真言の部屋に向かった和樹達。
真言が王城から居なくなっている……という事実を隠蔽する為に、真言はこの王城に居るぞー、タイミング悪いだけだぞー、と思わせる為に、6人はしょっちゅう真言の部屋に集合していた。
故に、真言の部屋は彼らにとって、勝手知ったる他人の部屋、である。
和樹なんか、部屋の主より馴染んでいる。

「よーう、集まってるなー」

6人が部屋の中で待っていると、真言が山盛りの料理を持ったメイドを引き連れてやってきた。
もちろん、ドリンク類も持ってきた。
酒以外、な。
どうやら、未成年に飲ませる酒は無い、らしいな、真言的には。
……冬至には、ちょっとだけ申し訳ないが。
ほんのちょっとだけ。

「うっわまた大量な……。なに、お前腹減ってんの?」

和樹が料理の山を見て、呆れたように言った。
真言の手には、小ぶりなローストチキンが4つばかり盛られた皿を載せたワゴンが。
メイド1は、一口大にカットされたサンドイッチの皿の山。
メイド2は、茹でた魚介類と温野菜、それらを付ける為のソースを同じ皿に盛った物。
メイド3はカットフルーツ。
メイド4は焼き菓子と揚げ菓子が大量に盛られた皿を……。
そしてメイド5がドリンク類を載せたワゴンを押してきた。

誰だ、プチシューでタワー作る、なんてコト、料理人に教えたのは。
勇者女子部か、それとも……。

生温かい目線を向けてくる和樹に、真言は。

「俺はシュークリームは教えてないぞ」

あれは、面倒だからな。
そう言いながら、料理をテーブルセッティングする真言。

……どーやら、作り方だけは知っているらしい。
アレか。
神々に譲渡した、異世界菓子のレシピを覚えた新しい『菓子の精霊』とやらが、さっそく働いてんのか。
ひょっとして、世界中に蔓延してんのか、菓子の精霊。
……まぁ、別にどーでもいいか。



さて。
真言は大量に持ち込んだ料理を、ガツガツと猛烈な勢いで食べ始めた。
かなり、空腹だったようだ。
その様を、なんとなく見ていた和樹達も、料理に手を出し始めた。
……夕食、食べてなかったからね。

ちょっとした夕食会みたくなって、メイド達は嬉しそーに真言達の世話を焼く。
料理を全て食べ尽くし、満足感に満たされた真言達。
テーブルを片付け、座る彼らの前に食後の茶とちょっと摘まむモノを用意すると、メイド達は一礼して全員が部屋を退出した。
余計な色目は一切使わず、素晴らしいメイドっぷりだった。

本来、メイドってこーゆーモンだよな?

と、ハニトラ要員だった部屋付きメイド達を生温かく見送って。
真言は、さて、とばかりに言い始めた。

「んじゃ、一息ついたところで。まずは、俺が居なかった間、ナニがどーなったのかざっくり聞かせてくれ。詳しくなくていいから、ざっくりと」

ざっくりって2回言った……ってコトは、あらすじ的なカンジで良いってコトだよな。

和樹は、冬至達の方へ視線を向けた。
全員が、頷いた。
どーやら、和樹が話せ、というコトらしい。

「あー……。んじゃ、質問は後でまとめて。んで、なんか足りないトコがあったら、その都度補足してくれ」

頭をガシガシと掻きながら、真言と冬至達にそう言うと、和樹はゆっくりと話し始めた。



──……………──

「……あー、つまり、だ」

話をざっくりと聞いた真言は。
ちょっと呆れながら、まぁしょうがないか……とばかりに頭を振って。

「勇者達は全員、王城に引きこもり、と。そんで、どっぷりとハニトラに浸かったり、城内でぐだぐだしてた、と。……この3ヶ月、ムダに過ごしてたのか」

真言は自然と、じとっとした目になっていた。

親の顔が見たいけど、親はここには居ないしな。
しかし……さっきの様子で、多分そーなんじゃないかな? とは思っていたが。

「清水と矢ぐっちゃんとガイドの人は、あっさり王国側に取り込まれたのか。……ぶっちゃけ、そんな気はしてたけど。こー……予想通りになると、笑う気すら起きないな。……じゃ、あのオトナ3人は、元の世界には戻らないって方向で、OK ?」

真言はあっさりと、オトナ3人──清水、矢口、森野(バスガイド)を切り捨てた。
説得する気すら無いらしい。

改めて、一同を見渡して、真言は。

「んじゃ、そろそろ俺の方の話、するか?」

和樹達は、一斉に頷いた。
何度も。








しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【短編集】ゴム服に魅せられラバーフェチになったというの?

ジャン・幸田
大衆娯楽
ゴムで出来た衣服などに関係した人間たちの短編集。ラバーフェチなどの作品集です。フェチな作品ですので18禁とさせていただきます。 【ラバーファーマは幼馴染】 工員の「僕」は毎日仕事の行き帰りに田畑が広がるところを自転車を使っていた。ある日の事、雨が降るなかを農作業する人が異様な姿をしていた。 その人の形をしたなにかは、いわゆるゴム服を着ていた。なんでラバーフェティシズムな奴が、しかも女らしかった。「僕」がそいつと接触したことで・・・トンデモないことが始まった!彼女によって僕はゴムの世界へと引き込まれてしまうのか? それにしてもなんでそんな恰好をしているんだ? (なろうさんとカクヨムさんなど他のサイトでも掲載しています場合があります。単独の短編としてアップされています)

お幸せに、婚約者様。私も私で、幸せになりますので。

ごろごろみかん。
恋愛
仕事と私、どっちが大切なの? ……なんて、本気で思う日が来るとは思わなかった。 彼は、王族に仕える近衛騎士だ。そして、婚約者の私より護衛対象である王女を優先する。彼は、「王女殿下とは何も無い」と言うけれど、彼女の方はそうでもないみたいですよ? 婚約を解消しろ、と王女殿下にあまりに迫られるので──全て、手放すことにしました。 お幸せに、婚約者様。 私も私で、幸せになりますので。

少年達はラバーに包まれ地下空間へと閉じ込められる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

【第1部完結】Solomon of worth~人生2周目、清く正しくギルド職員やってます!

シノン
ファンタジー
そこそこブラック企業で、毎日仕事、仕事、仕事、寝る前にちょこっとだけゲーム! まあ大人になるってこういうことだよねと日々を生きていた俺。 ある日の休日出勤で階段から転げ落ちてきたベビーカーの赤ん坊を助けたら、死んだ。 気がつくと機械的な神様に出会い、俺がやってたゲームの世界に転生することになったんだけど……。 願ったギフトがこの世界では危険すぎるなんて、聞いてないよ!! 注意書き ① 戦闘描写などに伴い、暴力表現、流血表現など一部残酷と思われる表現があります。 ② この世界では、種族性別問わず婚姻関係を結べます。   (※某ゲームの親密度を上げるとキャラクター同士が結婚出来るよ、同姓とも出来るよ~な感じです)   年齢制限が必要な性描写はありませんが、同性、異性で恋人、夫婦関係の人物が登場します。   そういう関係の登場人物が出ることがありますというだけで、恋愛が主体の話ではないことをご了承ください。 小説家になろう様、カクヨム様に投稿してます。

恋に臆病な僕らのリスタート ~傷心を癒してくれたのはウリ専の男でした~

有村千代
BL
傷心の堅物リーマン×淫らな癒し系ウリ専。淫猥なようであたたかく切ない、救済系じれじれラブ。 <あらすじ> サラリーマンの及川隆之は、長年付き合っていた彼女に別れを告げられ傷心していた。 その手にあったのは婚約指輪で、投げやりになって川に投げ捨てるも、突如として現れた青年に拾われてしまう。 彼の優しげな言葉に乗せられ、飲みに行った先で身の上話をする隆之。しかしあろうことか眠り込んでしまい、再び意識が戻ったときに見たものは…、 「俺に全部任せてよ、気持ちよくしてあげるから」 なんと、自分の上で淫らに腰を振る青年の姿!? ウリ専・風俗店「Oasis」――ナツ。渡された名刺にはそう書いてあったのだった。 後日、隆之は立て替えてもらった料金を支払おうと店へ出向くことに。 「きっと寂しいんだよね。俺さ――ここにぽっかり穴が開いちゃった人、見過ごせないんだ」 そう口にするナツに身も心もほだされていきながら、次第に彼が抱える孤独に気づきはじめる。 ところが、あくまでも二人は客とボーイという金ありきの関係。一線を超えぬまま、互いに恋愛感情が膨らんでいき…? 【傷心の堅物リーマン×淫らな癒し系ウリ専(社会人/歳の差)】 ※『★』マークがついている章は性的な描写が含まれています ※全10話+番外編1話(ほぼ毎日更新) ※イチャラブ多めですが、シリアス寄りの内容です ※作者X(Twitter)【https://twitter.com/tiyo_arimura_】 ※マシュマロ【https://bit.ly/3QSv9o7】 ※掲載箇所【エブリスタ/アルファポリス/ムーンライトノベルズ/BLove/fujossy/pixiv/pictBLand】

破滅転生〜女神からの加護を受けて異世界に転生する〜

アークマ
ファンタジー
人生が詰んだような生き方をして来た阿村 江はある日金を借りに家に帰ると妹、阿村 加奈の代わりに加奈に恨みがある男に刺され死んでしまう。 次に目が覚めた時、女神と名乗る女性が現れ「あなたを異世界で私のできうる限りの最高の状態で異世界に転生させます」と言われ渋々だが第二の人生を異世界でおくることを決める。新たな世界では前のような人生ではなく最高の人生をおくろうと江は転生した世界で考えていた。

ちっちゃな王妃様に最も愛されている男

くる ひなた
ファンタジー
 記念すべき百代目のヴィンセント国王ウルには、ちっちゃくて可愛い妻がいる。  しかし、彼がこの幼馴染の愛娘マイリを娶ったのには、王国の創始に関わるのっぴきならない事情があった。  鬼畜面の守衛も、あらゆる可愛さを魔界に置いてきたような悪魔も、敵対している大司祭さえ、ちっちゃな王妃にかかればみんな「かわゆい!」  器は、元気いっぱいの愛くるしい幼女。  中身は、代々の国王に寄り添ってきた人智を超えた存在。  そのうんと大きな愛情に包まれた若き国王は、ただ一人の貴重なツッコミ担当。  この度初めて人間の器を得たマイリに振り回され、対価と称して時折首筋をガジガジされつつも、ウルは栄枯盛衰悲喜こもごも入り乱れる国々の狭間で祖国を守っていく。 ※『新しい国王と王妃のままごとのようでいて時々血腥い新婚生活』より改題  断片漫画↓ https://www.alphapolis.co.jp/manga/894098289/376569275

男達は二人きりのホールで惨めに身悶える

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...