目標:撤収

庭にハニワ

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既に番外編じゃあない。61

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白い。
何もかもが、白い。
薄ぼんやりとした光の満ちた空間は、上下左右の区別すら困難なほど、白い。
自分は何処に立っているのか、それとも漂っているのか……。
それすら分からない。
足元は、床なのか。
土なのか。
広い場所なのか。
それとも狭いのか。
空気の流れすら無い。
どこかの部屋の中なのか。
自分の他には、誰も居ないのか……?

「……皇帝殿?」

聞き覚えのある声がした。
気付くと、背後に何者かの気配が。
今まで気付かなかったのが不思議なくらい、明確に。

振り向いた帝国皇帝。
そこには、目を丸くして驚いている──。

「……魔王陛下?」

金月色の髪と瞳。
日に当たった事など無いような、透けるように白い肌。
黒衣を纏う、魔人種を統べる王が居た。
見た目は、20代後半の美丈夫だ。
対する皇帝は、50代。
焦げ茶の髪を肩に触れるほどの長さに切り揃え、一つにまとめている。
瞳は新緑の緑。
日に焼けた肌に、みっしりと鍛え上げられた筋肉。
皇帝らしからぬ簡素な服を着た、歴戦の戦士、といった感じの──よーするに、パッと見脳筋くさい、筋肉ダルマなおっさんである。
そーゆー言い方をすると、魔王はムダにイケメンな兄さんってコトになるな。

知った顔を見つけて、ホッとするやらワケが分からずムカつくやら……。



そんな2人を、ちょっと離れた所から面白そーに見ている真言だった。

ここは、真言達異世界からの勇者達(笑)が、元の世界から拉致された時に一時的に神々にピックアップされて連れて来られた謎空間である。
ちなみに。
狼狽えるおっさんと兄さんを生温かく見守っているのは、真言の他に3人──3柱。
美神に戦神、それから魔国と帝国に、王の拉致、というお使いに行かされた伝令神の3柱である。
本来なら居るべきはずの主神は、美神のおネダリに答えるべく、菓子の精霊製作に勤しんでいる。
半笑いの戦神から、主神欠席の理由を聞いて、真言は思った。

食物全般の神とか、作った方が早くね?

……どーでも良いコトなので、華麗にスルーした真言だった。



さて。
白い空間で、おっさんと兄さんが、お互いに自分が理解しているだけの情報を交換──たいした情報は無いようだが──し終えた頃を見計らって、真言は脳天気に声を掛けた。

「情報交換は済んだか? つっても、大したモノは無いだろ?」
「何者!?」
「誰だ!?」
「……おーい、そっちじゃねーぞ……」

どーやら、2人はいまだに周囲の状況を把握出来ずにいるらしい。
思いっ切り、あさっての方に向かって威嚇──威圧やら殺気やら飛ばしている。
うん……方向違うから。

「後ろ向け後ろ。……あーもーメンドくせー、美神か戦神、どっちでもいいからナンとかしてくれ」
「……そこはボクに頼むトコじゃないかな?」
「お前、もう帰ってもいいぞ」
「ぶー」

ヒマなのか。
真言にカラもうとするロリ巨乳こと伝令神を軽くいなしているうちに、戦神がナンとかしたようだ。
王2人の意識が、こちらに向けられた。

どーやら、情報戦、という認識を持ったらしい。
まぁ、一つの戦いではある……か?
そこまで大それたコトじゃないと思うが。



なんだお前ら! と、いきり立つ皇帝を、魔王がなだめる。

「静かに。神々の御前だ。──3柱もいらっしゃる。あと……人間、か? このあたりの人間種では無いようだが」

美麗な兄さんが、眉間にシワを寄せて真言を見つめる。
普通の人間種ならば、赤くなるなり狼狽えるなり、中には意識不明になったりする者も居るのだが。
真言は平然としている。
この時点で、これはおかしな人間だ、と認識した魔王だ。

「神々がいらっしゃるとは、どういう事だ?」

冷静さを装い、ようやく皇帝がこちらを見た。
そこには。
にっこりと微笑みかける美神と、不敵に笑う戦神。
真言に相手にされず、拗ねたフリをする伝令神と。

「どーも。王国に、勇者召喚という名の誘拐及び拉致監禁されている、異世界人の1人です」

不穏極まりない自己紹介を始めた真言だった。









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