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既に番外編じゃあない。56
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ちょっと虚ろな目で和樹達を迎えた真言だったが。
全員を部屋に招き入れた後、約束は守るぜ、とばかりにガリガリと硬いコンビニアイスを、ごっそりとテーブルの上に出してみせた。
その山を見て、目を輝かせた和樹。
「お、期間限定梨味♪」
何の疑問もためらいもなく手を伸ばして梨味のアイスバーを手に取り、いそいそとパッケージを剥いてかじりつく和樹。
冬至達は、いろんな疑問が頭の中をぐるぐると渦巻いている……。
が。
「……基本のソーダにコーラ。限定の梨に、杏仁豆腐味……? うん、まぁ……細かいコトはいいか……」
ナニかを諦めた冬至が、敢えての杏仁豆腐味に手を出した。
「やっぱり、基本はソーダじゃないかな?」
「いや、コーラだろ?」
尚人と悟も、2・3度頭を振ってナニかを吹っ切り、好みの味のアイスバーを手に取る。
「……ん~……やっぱり梨……」
「……うん。梨よね」
千里と春香もまた、久しぶりの氷菓を嬉しそうに手に取り。
全員が一心にガリガリし始めた。
リスか。
各自が。
「……うま」
「あ~、久しぶり」
「うん、こんな味だった……」
そんなコトを呟きながら完食した。
さて、次は……? とテーブルの上に目をやると。
「……あれ? さっきのアイスの小山は?」
和樹が食べ終えたアイスの棒を、ガジガジとかじりながら真言に聞いた。
「ん~……あのまま放置してたら確実に溶けるから、一旦仕舞った。もっと食いたい人──」
真言がそう言いかけたら、全員が無言で手を挙げた。
「……あー、んじゃついでに」
真言が次々と氷菓を取り出した。
さっきのガリガリと硬いアイスバーに、2コ1でパッケージされてるチューっとやるタイプの……。
「あ、パ○コ」
「ホワイトサワーにチョコ、レモンにブドウに桃……」
「ねぇ春ちゃん、シェアしよ♪」
「そうね♪」
「……なんて言やいいのか……」
「……とりあえず、おれ、チョコがいい」
各々好みの味を取って、いそいそとパッケージを剥く。
「ゴミはこっちな~」
コンビニレジ袋をテーブルの脇に置いた真言は、嬉しそうに氷菓を食べる和樹達を見ながら言った。
「ちょっと真面目な話したいんだけど、食いながらがいいか? それとも……」
「後、後、後」
和樹が畳み掛ける。
久しぶりの元の世界の味を堪能させろ、というコトらしい。
見渡せば、じっくりと味わっていたり、涙目で物思いに浸りながら……または、きゃっきゃと楽しげに話しながら、各自自由に堪能している。
あ、こりゃしばらくはダメだわ。
真言はため息を一つ。
茶の用意をしつつ。
「食うなとは言わねーから、腹壊さない程度にしとけよ?」
そう言って、自分も九州地方の有名アイスをバーにした氷菓をかじり始めた……。
しばらくして。
一人につき3種類以上は食べたんじゃないかな?
氷菓の残骸(パッケージと棒)を、一纏めにコンビニレジ袋に片付けて。
真言が何処ぞに仕舞った後──異次元倉庫に放り込んだだけ、である──冷えた身体を温める為の、熱い茶が全員に配られた。
至れり尽くせり?
お母さんの気づかい?
……まぁ、お母さんであれば、アイス好きなだけ食うがいい、とか言わないだろうが。
そのあたりは、ちょっと脇の方に置いといて。
「じゃ、そろそろいーか?」
真言が、真剣な顔で切り出した。
なんとなく、姿勢を正す和樹達。
手に湯気の立つカップを持ったままだったのは、ご愛嬌。
……アイス食い過ぎだ。
「マジメな話さ……元の世界に、帰りたいか?」
「! ……っ」
目を見はり、息を飲む一同。
「……真言よ」
和樹が問いかけた。
「今、この場でオレらだけに聞いたのは、何でだ?」
全員を部屋に招き入れた後、約束は守るぜ、とばかりにガリガリと硬いコンビニアイスを、ごっそりとテーブルの上に出してみせた。
その山を見て、目を輝かせた和樹。
「お、期間限定梨味♪」
何の疑問もためらいもなく手を伸ばして梨味のアイスバーを手に取り、いそいそとパッケージを剥いてかじりつく和樹。
冬至達は、いろんな疑問が頭の中をぐるぐると渦巻いている……。
が。
「……基本のソーダにコーラ。限定の梨に、杏仁豆腐味……? うん、まぁ……細かいコトはいいか……」
ナニかを諦めた冬至が、敢えての杏仁豆腐味に手を出した。
「やっぱり、基本はソーダじゃないかな?」
「いや、コーラだろ?」
尚人と悟も、2・3度頭を振ってナニかを吹っ切り、好みの味のアイスバーを手に取る。
「……ん~……やっぱり梨……」
「……うん。梨よね」
千里と春香もまた、久しぶりの氷菓を嬉しそうに手に取り。
全員が一心にガリガリし始めた。
リスか。
各自が。
「……うま」
「あ~、久しぶり」
「うん、こんな味だった……」
そんなコトを呟きながら完食した。
さて、次は……? とテーブルの上に目をやると。
「……あれ? さっきのアイスの小山は?」
和樹が食べ終えたアイスの棒を、ガジガジとかじりながら真言に聞いた。
「ん~……あのまま放置してたら確実に溶けるから、一旦仕舞った。もっと食いたい人──」
真言がそう言いかけたら、全員が無言で手を挙げた。
「……あー、んじゃついでに」
真言が次々と氷菓を取り出した。
さっきのガリガリと硬いアイスバーに、2コ1でパッケージされてるチューっとやるタイプの……。
「あ、パ○コ」
「ホワイトサワーにチョコ、レモンにブドウに桃……」
「ねぇ春ちゃん、シェアしよ♪」
「そうね♪」
「……なんて言やいいのか……」
「……とりあえず、おれ、チョコがいい」
各々好みの味を取って、いそいそとパッケージを剥く。
「ゴミはこっちな~」
コンビニレジ袋をテーブルの脇に置いた真言は、嬉しそうに氷菓を食べる和樹達を見ながら言った。
「ちょっと真面目な話したいんだけど、食いながらがいいか? それとも……」
「後、後、後」
和樹が畳み掛ける。
久しぶりの元の世界の味を堪能させろ、というコトらしい。
見渡せば、じっくりと味わっていたり、涙目で物思いに浸りながら……または、きゃっきゃと楽しげに話しながら、各自自由に堪能している。
あ、こりゃしばらくはダメだわ。
真言はため息を一つ。
茶の用意をしつつ。
「食うなとは言わねーから、腹壊さない程度にしとけよ?」
そう言って、自分も九州地方の有名アイスをバーにした氷菓をかじり始めた……。
しばらくして。
一人につき3種類以上は食べたんじゃないかな?
氷菓の残骸(パッケージと棒)を、一纏めにコンビニレジ袋に片付けて。
真言が何処ぞに仕舞った後──異次元倉庫に放り込んだだけ、である──冷えた身体を温める為の、熱い茶が全員に配られた。
至れり尽くせり?
お母さんの気づかい?
……まぁ、お母さんであれば、アイス好きなだけ食うがいい、とか言わないだろうが。
そのあたりは、ちょっと脇の方に置いといて。
「じゃ、そろそろいーか?」
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手に湯気の立つカップを持ったままだったのは、ご愛嬌。
……アイス食い過ぎだ。
「マジメな話さ……元の世界に、帰りたいか?」
「! ……っ」
目を見はり、息を飲む一同。
「……真言よ」
和樹が問いかけた。
「今、この場でオレらだけに聞いたのは、何でだ?」
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