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既に番外編じゃあない。53
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「なんというか、のぅ。話がずいぶんコロコロと二転三転しておるが、なぁ」
ずーん、と落ち込む冬至達三人と対照的に、まったりと茶を飲む真言と和樹。
婆さまが、そんな五人を眺めながら何度目かの茶のお代わりを所望した。
真言は、すっ……と差し出されたカップに茶を注ぐ。
なんだろう……この2人の、妙にスムーズな息の合ったカンジ……。
「ふむ……まぁ、この坊に問われた魔人種の気質じゃがな。確かに気性の荒い、好戦的な者が多いのは確かじゃの。ただ、今代の魔王がきっちりと管理しておるでの。魔王の意向を無視するような愚か者はおらぬ。そんな事をしようものなら、魔王妃が動くでな。……正直なところ、あの魔王妃をおとなしくさせておる、というだけで、魔王は魔人達から一心に尊敬と感謝の念を送られておるよ」
……っつーコトは……。
魔人の中で、一番ヤバいのは、魔王じゃあなくて……その嫁、つまり魔王妃、と……。
「……帝国……っつか、バカ姫、詰んだな」
「あー……一番ヤバいヤツに、手ぇ出しちゃったか~……」
真言と和樹は、乾いた笑いを洩らしている。
二人揃って、合掌~……とかやってる。
フザけるだけの余裕があるようだ。
そして、冬至達三人の苦悩と葛藤は、とりあえず横に置いとくつもりらしい。
婆さまと、真言と和樹の三人で、話は進んでいく。
「一方的に魔人種を敵視して、攻め込もうとする国もまた、過去に幾つもあったがの。理由が……お粗末過ぎて、魔王もイチイチ付き合いきれん、と国ごと引きこもった時代もあったよ」
「……鎖国って……」
「江戸時代かよ……」
真言達の半笑いはまだ続く。
「今回の、帝国の皇女のような者は、今までにも山のように湧いて出たのぅ。魔人種を一目見て、勝手に魅了されて勝手に盛り上がって、周囲の意見を無視して勝手に行動を起こして……。これが一市民であれば、大したことにはならぬが……。一国の姫、だの王子だの……王族としての血の濃さ故かの。ちょっと冷静になれ、と言いたくなるような愚か者は、いつの時代にも一定の割合で湧くからのぅ」
「「あー……」」
真言と和樹は納得していた。
「脳ミソ煮えたぎってんじゃね? ってヤツか」
「一般的には、脳内お花畑って言うぞ」
「……その花は、もれなくボケの花って言うんじゃね?」
「……そーかも。……ボケの花って、どんなんだっけ?」
「さあ?」
婆さまと、真言と和樹は首を傾げてボケの花を想像してみた。
この世界にボケの花があるかどーかは知らないが、似たモノはあるかもしれない。
……………。
分からなかった。
「花の色すら分からんな……」
「オレ、草に咲くのか木に咲くのかも分かんね」
「……ボケ、という植物は……知らんの」
「……ボケは、バラ科の低木ですよ。イチョウなんかと同じ、落葉樹ですね。トゲなんかもあります。花は五弁の花びらの……赤系統、たまに白、ですかね」
尚人が口をはさんだ。
どーやら、突っ込まずにはいられなくなったらしい。
「おー、さんきゅ、委員長」
「すげーな、委員長。ウィ○かグー○ルみてーだ」
「……人の事を、どこぞの検索エンジンと一緒にしないで下さい……」
尚人はため息をついて、茶を飲んだ。
すっかり冷めたそれは、一気飲みするにはちょうど良かった。
「……その、うぃ○やらナニやらは分からんが、お主が物知りという事は分かったぞい」
さすがは賢者じゃの、と婆さまは尚人に笑いかけた。
書庫の管理者なんかやってる故か、知力のある者には好意的になるらしい。
……尚人は、書庫の管理者の婆さまからの親愛を得た。
知力が……特に変化しなかった。
「さて、お主らがここに来た理由は、魔人種についてではなくて、この国の王家の醜聞について……じゃったはずじゃの」
婆さまは、いまだにふさぎこむ冬至と悟に視線を向けて、言った。
「概ね、そこの過去見の坊の見たまんまじゃの」
……そーか、やっぱりか。
「やっぱ王族って、ロクなモンじゃねーな」
真言は、ナニかを投げ出すように言った。
ずーん、と落ち込む冬至達三人と対照的に、まったりと茶を飲む真言と和樹。
婆さまが、そんな五人を眺めながら何度目かの茶のお代わりを所望した。
真言は、すっ……と差し出されたカップに茶を注ぐ。
なんだろう……この2人の、妙にスムーズな息の合ったカンジ……。
「ふむ……まぁ、この坊に問われた魔人種の気質じゃがな。確かに気性の荒い、好戦的な者が多いのは確かじゃの。ただ、今代の魔王がきっちりと管理しておるでの。魔王の意向を無視するような愚か者はおらぬ。そんな事をしようものなら、魔王妃が動くでな。……正直なところ、あの魔王妃をおとなしくさせておる、というだけで、魔王は魔人達から一心に尊敬と感謝の念を送られておるよ」
……っつーコトは……。
魔人の中で、一番ヤバいのは、魔王じゃあなくて……その嫁、つまり魔王妃、と……。
「……帝国……っつか、バカ姫、詰んだな」
「あー……一番ヤバいヤツに、手ぇ出しちゃったか~……」
真言と和樹は、乾いた笑いを洩らしている。
二人揃って、合掌~……とかやってる。
フザけるだけの余裕があるようだ。
そして、冬至達三人の苦悩と葛藤は、とりあえず横に置いとくつもりらしい。
婆さまと、真言と和樹の三人で、話は進んでいく。
「一方的に魔人種を敵視して、攻め込もうとする国もまた、過去に幾つもあったがの。理由が……お粗末過ぎて、魔王もイチイチ付き合いきれん、と国ごと引きこもった時代もあったよ」
「……鎖国って……」
「江戸時代かよ……」
真言達の半笑いはまだ続く。
「今回の、帝国の皇女のような者は、今までにも山のように湧いて出たのぅ。魔人種を一目見て、勝手に魅了されて勝手に盛り上がって、周囲の意見を無視して勝手に行動を起こして……。これが一市民であれば、大したことにはならぬが……。一国の姫、だの王子だの……王族としての血の濃さ故かの。ちょっと冷静になれ、と言いたくなるような愚か者は、いつの時代にも一定の割合で湧くからのぅ」
「「あー……」」
真言と和樹は納得していた。
「脳ミソ煮えたぎってんじゃね? ってヤツか」
「一般的には、脳内お花畑って言うぞ」
「……その花は、もれなくボケの花って言うんじゃね?」
「……そーかも。……ボケの花って、どんなんだっけ?」
「さあ?」
婆さまと、真言と和樹は首を傾げてボケの花を想像してみた。
この世界にボケの花があるかどーかは知らないが、似たモノはあるかもしれない。
……………。
分からなかった。
「花の色すら分からんな……」
「オレ、草に咲くのか木に咲くのかも分かんね」
「……ボケ、という植物は……知らんの」
「……ボケは、バラ科の低木ですよ。イチョウなんかと同じ、落葉樹ですね。トゲなんかもあります。花は五弁の花びらの……赤系統、たまに白、ですかね」
尚人が口をはさんだ。
どーやら、突っ込まずにはいられなくなったらしい。
「おー、さんきゅ、委員長」
「すげーな、委員長。ウィ○かグー○ルみてーだ」
「……人の事を、どこぞの検索エンジンと一緒にしないで下さい……」
尚人はため息をついて、茶を飲んだ。
すっかり冷めたそれは、一気飲みするにはちょうど良かった。
「……その、うぃ○やらナニやらは分からんが、お主が物知りという事は分かったぞい」
さすがは賢者じゃの、と婆さまは尚人に笑いかけた。
書庫の管理者なんかやってる故か、知力のある者には好意的になるらしい。
……尚人は、書庫の管理者の婆さまからの親愛を得た。
知力が……特に変化しなかった。
「さて、お主らがここに来た理由は、魔人種についてではなくて、この国の王家の醜聞について……じゃったはずじゃの」
婆さまは、いまだにふさぎこむ冬至と悟に視線を向けて、言った。
「概ね、そこの過去見の坊の見たまんまじゃの」
……そーか、やっぱりか。
「やっぱ王族って、ロクなモンじゃねーな」
真言は、ナニかを投げ出すように言った。
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