目標:撤収

庭にハニワ

文字の大きさ
上 下
329 / 374

既に番外編じゃあない。36

しおりを挟む
押し寄せる死霊軍団。
レイス、ゾンビ、グール、スケルトン等々。
確実に、物理攻撃の効かない敵も居る。
レイスとかな。
霊体に物理とか、ムダだろう?



騎士達は、静かに闘志を燃やしている。
予定外の敵だが、自らの務めを果たすだけだ。

勇者達は、浮き足立っている。
ぶっちゃけ、使いモンにならない……。
まぁ、ね。
普通、そーだよね。
勇者達は、清々しいまでに一般人オンリーだ。
……約一名を覗いてな。

何処ぞのアトラクションじゃあるまいし、目の前にゾンビが群れでやって来る……なんて事は、いまだかつて無かった事だ。
そりゃあ、パニック再びだわ。



騎士団が前面に立つ形で、陣形が整えられた。
勇者達を庇う形だ。

死霊軍団との接触は、もうすぐ。



冬至が鈍器扱いしてる剣を手に、最前列──騎士達と魔術騎士が前面に立つ場所へと向かおうとするのを止めて、真言が言った。

「和樹よ。本気で鉄パイプとか作ってやれよ。冬至さん、どーせ撲殺オンリーだろーし」
「どーせって……おい」
「……ゾンビって、基本死んでますよね?」

真言の雑な言い種に、まぁ確かに、と思いながらもツッコまずにはいられない冬至。
あと尚人も。

和樹は、ナニをどんな風にしようかと考えながら、錬金術を発動。
足元の地面から、鉄やらナニやら集めて造り始めた。

顔をひきつらせながら、弓を構えて、凄い遠くでどっか行って! と、死霊軍団がこちらに近づいて来る前に、何とかしようとしている春香。
ホラー系は苦手のようだ。

「ゾンビって……人体構造的に何とか……」

頭の中に人体解剖図を思い浮かべながら、どのあたりを狙うべきか考えている千里。
こちらは、虫じゃないので結構平気なようだ。



物理攻撃一択の騎士達と、魔術も使う魔術騎士が、何とか夜営地前で死霊軍団の進行を食い止めている。
が、多勢に無勢。
勇者達も、守られているだけじゃダメだ、と覚悟を決めた者から戦列に加わり始めた。
対死霊、というコトで、なかなかの地獄絵図が繰り広げられている。

ゾンビ、グールと言えども、ヒトの形に近いモノを相手取って攻撃する事に拒否感を覚える勇者は多い。
彼らの2/3は使いモノにはならないだろう。



「出~来た♪」

緊迫した場面なのに、和樹は軽い調子で鈍器を精製し終えた。

「冬至さん、釘バット! ……金属製だけど」
「ここで敢えての釘バットとか……釘バット?」

真言は半笑いだ。
和樹が造りあげたのは……。

「なぁ……」

釘バット(?)を手渡された冬至は、微妙な顔で手渡されたモノをしみじみと見つめながら、言った。

「これ、どう見ても、釘バットじゃねぇよな?」
「うん……。どう見ても、鬼の金棒ですね」

尚人もまた、半笑いだ。

そーだね。
どこからどー見ても、金棒だね。
黒々として、トゲも鋭いしなんとなく禍々しい、地獄の鬼御用達の金砕棒だ。
少なくとも、おっさんが片手で持って軽々とぶん回していいようなシロモノじゃない。
……実際のところ、冬至は軽くぶん回しているが。
和樹よ……ナニを造った?

え? 冬至さんって、そんな力持ちだった?

驚愕の目で、金棒の使い勝手を確めてる冬至を見る春香と千里。
和樹が種明かしをした。

「あ、その釘バット、細かく釘を造るのが面倒くさくなったから、そんなフォルムになった。で、冬至さんにだけ軽く、比較的壊れにくいって概念を付与しといた。……絶対に、なんてモノはどーすりゃいいのか分からなかったからな。分かる範囲で壊れにくいってしといた。……んじゃ、物理攻撃ガンバってな~♪」

軽~く和樹に送り出された冬至。
なんとなく釈然としないモノを感じながら、金棒を肩に担いで最前列へと向かった。
奇妙な圧力を振り撒きながら……。



「んじゃ、俺もそろそろ行くかな」

真言が冬至の後を追おうとしている。

騎士団が頑張ってはいるが、物理的な攻撃が効く相手は無数。
プラス、物理の効かないヤツもいる。
魔術騎士達は、レイスの対応に追われてゾンビどもの浄化にまでは、手が回らない。
とりあえずは、身動き出来なくするので精一杯だ。

なので。

「和樹。塩作れ。目一杯。出来るだけ」









しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件

フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。 だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!? 体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

転生して捨てられたけど日々是好日だね。【二章・完】

ぼん@ぼおやっじ
ファンタジー
おなじみ異世界に転生した主人公の物語。 転生はデフォです。 でもなぜか神様に見込まれて魔法とか魔力とか失ってしまったリウ君の物語。 リウ君は幼児ですが魔力がないので馬鹿にされます。でも周りの大人たちにもいい人はいて、愛されて成長していきます。 しかしリウ君の暮らす村の近くには『タタリ』という恐ろしいものを封じた祠があたのです。 この話は第一部ということでそこまでは完結しています。 第一部ではリウ君は自力で成長し、戦う力を得ます。 そして… リウ君のかっこいい活躍を見てください。

冤罪で山に追放された令嬢ですが、逞しく生きてます

里見知美
ファンタジー
王太子に呪いをかけたと断罪され、神の山と恐れられるセントポリオンに追放された公爵令嬢エリザベス。その姿は老婆のように皺だらけで、魔女のように醜い顔をしているという。 だが実は、誰にも言えない理由があり…。 ※もともとなろう様でも投稿していた作品ですが、手を加えちょっと長めの話になりました。作者としては抑えた内容になってるつもりですが、流血ありなので、ちょっとエグいかも。恋愛かファンタジーか迷ったんですがひとまず、ファンタジーにしてあります。 全28話で完結。

悪役令嬢の中身はハイスペック男子

黒木メイ
ファンタジー
この小説の主人公ユーリ・シュミーデルは所謂乙女ゲームの『悪役令嬢』……のはずだった。 前世の記憶を持つ主人公。ただし、彼女の前世は乙女ゲームについて全く知識を持たないハイスペ男子だった。 アセクシュアル気味な彼女(彼)は、乙女ゲームの世界観を壊しながら突き進んでいく。 ※執筆活動復活に伴い、予告無しで、修正加筆していきます。ご了承ください。 尚、小説家になろう・カクヨムでも掲載中。

どこかで見たような異世界物語

PIAS
ファンタジー
現代日本で暮らす特に共通点を持たない者達が、突如として異世界「ティルリンティ」へと飛ばされてしまう。 飛ばされた先はダンジョン内と思しき部屋の一室。 互いの思惑も分からぬまま協力体制を取ることになった彼らは、一先ずダンジョンからの脱出を目指す。 これは、右も左も分からない異世界に飛ばされ「異邦人」となってしまった彼らの織り成す物語。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

女神に嫌われた俺に与えられたスキルは《逃げる》だった。

もる
ファンタジー
目覚めるとそこは地球とは違う世界だった。 怒る女神にブサイク認定され地上に落とされる俺はこの先生きのこることができるのか? 初投稿でのんびり書きます。 ※23年6月20日追記 本作品、及び当作者の作品の名称(モンスター及び生き物名、都市名、異世界人名など作者が作った名称)を盗用したり真似たりするのはやめてください。

処理中です...