目標:撤収

庭にハニワ

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既に番外編じゃあない。30

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金成潤子。
操影師のヒナ(生まれたて)。
自分の影を操る。
影を伸ばして、絡みつかせたり締めあげたりする。

百瀬珠美。
投術師のヒナ(生まれたて)。
石ころだろうが手裏剣、投げナイフだろうが、確実に狙った対象に命中させる。

2人共に、クラスでは大人しい、物静かな文系女子という認識であった。
……まさか王子達に夜這いをかけようとするとは、誰1人思いもよらず。
大人しく見える子が、その精神まで大人しいとは限らない……という証明になってしまった。

「清水は、まぁ……なんか納得、とゆーか」
「姫サマにまとわりついてたモンな~」

清水は、厨二っぷりを発揮して、勇者たるもの姫と結ばれる未来を……なんて。
夢見ちゃったんだろうな~。
部屋付きメイドを好きにしてるクセにな。



今回の標的となった王族達は、魔術師長が即行王城に連れ戻した。
王女がなんかゴチャゴチャ言ってたらしいが、問答無用で、な。
自分付きだった護衛騎士(思いの外肉食系女子)が、どうなるのか気になって仕方ないんだろーけど。

王子達は、狙ったエモノ(副担任とバスガイド)に、しっかりアピールして帰った。
王女も、勇者のヒナ4人との仲を深めたようだから、目的自体は達していたようだし。
王女としては、明確に勇者の職能を持つ4人の内、誰か1人でもキープ出来れば良いんだろう。
……そこに勇者オブ勇者のおっさんが入っていないのは、やはり年齢的な釣り合いを考慮した、というコトだろーか。
召喚した勇者全員に仕掛けたハニートラップを、華麗にスルーされたから、脈無し、と早々に切り捨てただけかもしれない。
まぁとにかく。
予想外なコトは、いつどんな形で起きるか分からないから予想外って言うんだぞー。



魔術師長は、王族を王城に送ってとんぼ返りでまた夜営地に戻ってきた。
忙しいな。
勇者関連以外の仕事はどうしてるのか……。
冬至が心配して「老人は労れよ……」と言ってんのに対し、尚人が「まあまあ」と宥めている。

とにかく。
やらかした4人の事情聴取……は、ともかくとして。
他の勇者の訓練はやっとかないと、ここまで何しに来たのか分からん……ってコトで。
やらかし4人衆は、団長と魔術師長と、一つの馬車に閉じ込もってOHANASHI しながらの移動となった。
他の勇者達と騎士団は、予定通りの行程で『嘆きの森』へGo !だ。

「……王城出て一泊目でやらかすとか、ナニ考えてんだろーな。まぁどーでもいいけど」

真言は、一連の出来事をざっくりと切り捨てた。



地味に疲労の溜まる馬車での移動。
休憩の度に、するっと姿を消しちゃあ何らかの獲物──狩った動物だったり、食用の木の実や野草、ハーブなんかも採取してくる真言。
そんな真言に、尚人は半分呆れ、半分感心していた。
採取してきた物を手に。

「よー、賢者殿。これ食える?」

と、聞いてくるのは、賢者の職能アップに協力してくれてるつもりなのか……?

「実際のところ、ソレが食用かどーか、分かってて採取してきてるんじゃないのかな?」

尚人が半笑いで、真言が今採取してきたハーブ類を鑑定しているその脇で。
和樹が。

「味噌……味噌味噌味噌……ついでに醤油……」

と、日本人的にたまらない調味料を、錬金術で作っている。
自分達だけが使う分には、さほどの量はいらないが。
うっかり醤油の味を覚えてしまった騎士達は。

「……なんか、こっちをものすごい目で見てるんだけど……」

和樹が微妙に怯えている。
しょうがないよね、今んトコ唯一の醤油生産者だもの。
作ったそばからこっちに寄越せ、とギラついた目で見られてるんだし。

「調味料関係握った和樹は強いな。誰もナンかしようとは思わないだろ。あと、確実に獲物を狩ってくる真言にも」
「む~……。あたし達も狩りの……。実際に狩ってくるのはムリでも、ナニか手伝った方がいいかな?」
「……木の実の採取とかなら……?」

冬至に千里、春香の3人は、狩りに同行すべきか考えだした。
……いまだにゲーム感覚が抜けていないようだ。

他の勇者達はナニをしてるか?
休憩なんだから、思いっ切り休んでるよ。
遠足気分は、だいぶ抜けてきたようだけどね。




 




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