目標:撤収

庭にハニワ

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既に番外編じゃあない。24

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「……て、ゆーか。魔王の奥さんは、魔王と一緒に行動してたのか?」

真言の素朴な疑問に、美神が答える。

「ああいった場には、配偶者か婚約者を同伴するのが普通なのよ」
「似合いの二人だしね。正直な話、魔王の隣に立つには、あの姫じゃあ役不足だよ。いろんな意味でね」

戦神はそう言って、茶を一口。
戦神──戦の神、と聞いて持つイメージとは違い、理知的で優雅だ。
……そりゃそーか。
戦いってモノには、技量は勿論、戦術だって必要だし。
脳筋なだけじゃ、やっていけない。
ましてや神、なんだからそりゃ……ねぇ。



異世界の茶や菓子を、なんだか嬉しそうに堪能している神々に、真言が質問した。

「その、脳内お花畑な姫が一目惚れしたってコトは、魔王は相当良い男? で、そんな魔王と並んで見劣りしないって奥さんは、相当美人ってコトか……。なんか、な~……誰かを思い出す……」

真言は、かなり微妙な顔になっていた。

「あら? 魔王は満月色の髪と瞳に、透けるような白い肌の美丈夫よ。その奥方は、夜色の髪と瞳に、真珠のような肌の、月光のような美女ね。……第三王女も悪くは無いんでしょうけど、ねぇ。比較対象が悪すぎるわよ。魔人族って、魔力の保有量が桁外れな人間種って事になってるけど、種として違うモノだもの。大量の魔力のせい? おかげ? で、長命なのよね。千年くらいは軽く生きるし。……このあたりの事は、お勉強したんじゃないかしら?」
「あ~、この国の認識じゃ、魔人族って長生きで、男女共に美人が多い。……って、ものすごい表面的なコトしか言ってなかったな。あと、嫁に欲しいとかナンとか」

この世界の常識的なコトは、一切触れない方向での座学って、ぶっちゃけ無意味。
魔術師の話も分かりにくいモノばかりで。
わざとなんじゃね? と思ってたさ。

真言の暴露に、戦神は。

「……嫁って……。まぁ、姿形は似てるから、そう思うのも仕方ないのかもしれないけど」

なんか呆れていた。
そして、続けて言うには。

「君は、猿やゴリラ、チンパンジーなんかの類人猿と恋に落ちて、結婚とか出来るかい?」
「は?」

急に異種婚について問われた真言は、ちょっと面食らいながらも正直に、思ったまんまを答えた。

「無理。そーゆー趣味のヤツらも居るってコトは、まぁ知ってるけど、俺はムリ。おサルはおサル同士で、仲良く繁栄してりゃいい」
「……うん」

戦神は、何度か頷くと、ラスト一個のミスターなドーナツを持っていった。
美神が絶望しきった顔で、空になった皿を見つめている……。
そんな表情も、美しいですケドね?
そんなにか?
そんなに気に入ったのか、異世界日本のスイーツが。
真言は生温かい目で見守っていた。



「魔人族は、人間種を自分達と同じモノとは認識していない。種として違うモノだからね。見下すとか、そんな感情もない。万が一、魔人族と人間種が結婚しても子供なんか出来ないし。人間種は50年……長くて80年くらいの寿命だしね。根本的に、合わないよ。今までにも魔人族に恋い焦がれた結果、戦争になった事は多々あったよ。まぁ、人間種が一方的に熱を上げて、魔人族にあしらわれるって感じがほとんどだけどね」

戦神は、そんな話をしながら最後のドーナツを美味しく頂いた。
美神は、何かを求めるような目を真言に向けている。

……全力スルーの方向で。

真言は、美神と目が合わないように微妙に視線を反らしながら、戦神に言った。

「魔人族と人間種って、根本的に種として違う生き物ってコトか。そりゃ結婚したって子供なんか出来ないわな。……なんかこー、生物学的に小難しい話になりそうだから軽く流すけど。帝国のおバカ姫がやらかして、よろしいならば戦争だ、ってなったのは分かったけど。多分その理由になった暗殺仕掛けられた魔王の奥さんって……」
「無事だよ。っていうか、暗殺しに来た刺客を返り討ちにして傀儡の術で言いなりにした後、雇い主の企み──第三王女の戯言──を、自国に戻って雇い主とその関係者が居る公共の場で全部暴露するように仕向けたの、奥方だからね」
「……わぁお」

なかなかいい性格してらっさる奥方のよーで。
あ、だから喜劇なのか。
薄っぺらい妄想を、現実にしようと空回りする様を笑って見てる……と、いうコトか。
その脳内お花畑姫が年齢幾つか知らんけど、長命種から見たら、赤ん坊が夜泣きしてる、くらいのモンなんだろーな。
……早い段階で、帝国側がゴメンナサイってやりゃ良かったんだろーけど。
アレか? 大国としてのプライドかナンかか?
姫が恥をかかされたって?
……やらかしたの姫じゃん。
これだから、王族って……。
なんでもれなく残念なのが混じってんだろーな。

真言は微妙な顔のまんまだ。

そして、美神の目線は空になった皿に注がれたまま。
執着がハンパない。

戦神は、そんな2人を笑って見ていた。









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