目標:撤収

庭にハニワ

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既に番外編じゃあない。23

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真言が第二騎士団団長を、ちょっと撫でて(真言的にはそんな認識)聞き出したのは。
王国上層部による“人間って、しょーもねーな……”と言いたくなるような、下らなくもあさましい企み。
この世界に来る直前に、神々からリークされた事を、本当にやらかそーとしてる。

魔国と帝国のいさかいに、横からチョッカイ出して、何らかの利益を……出来れば領地とか取れないかな~……いや、取れんだろ、多分。
などと甘っチョロい事を、本気で目論んでいる、らしい。

頭に虫でもわいてるんだろーか。

ぶっちゃけた話、魔国と帝国のいさかいに、王国は一切関わっていない。
それを横からしゃしゃり出て、ナニをホザくつもりなのか。



「……元はと言えば、帝国の姫の1人が魔王に一目惚れなんかしちゃったのが始まりだったのよねぇ」

美神が、どこか遠くを見ながら言った。

深夜。
真言の部屋。
懲りずに仕掛けてくる盗聴盗撮用魔道具を、いつものようにエンドレスなケチャで煙に巻いて……。
……むしろ、毎日エンドレスなケチャを期待してんじゃね? って数が仕掛けられている。
暗部……暇なのか。

美神のどこか呆れたような声が続く。
話の内容はともかく、いつまでも聞いていたいような心地良い声だ。
そんな美声で語られたのは、帝国にとっては悲劇。
魔国にとっては、はた迷惑なだけの喜劇。
どこの世界にも、お花畑思考の女は居るんだなぁって実感させられた。

「……いや、もう真剣に。我々の中に、愛の神なんていたか? と探してしまうくらいの妄言を吐きまくっていてね、その姫は。……確か、第三王女だったかな」

戦神の、魅惑のバリトンボイスが響く。
ため息混じりで、妙に色気が……。
だが。
この場には、惑わされるようなモノは居ないので、ムダなだけの色気である。



「まぁ、よーするに、だ」

元の世界から持ち込んだ、異次元倉庫からお茶セットと茶菓子を出して。
夜中だってのに、むっしむっしと食べながら、真言は神々の話をざっくりとまとめた。

「大国同士の超会議で、主要国の王だの皇太子だのが帝国に集まった。王族の方々をもてなしに出てきた帝国の王族のうち、第三王女が魔王に一目惚れして、自分を正妃に、なんぞとホザき出した。魔王は愛妻家で、夫婦中は良好。魔族とは寿命の違う人間種のワガママ娘なんかいらないぞ、とオブラートにくるんだ上で、それでもはっきりきっぱりざっくり断った。姫は諦めなかった。事もあろうに魔王の妃を暗殺しようとした。失敗したけど。……バカなんだな、その姫」

「オブラートって、ナニかしら?」
「他の兄弟姉妹はマトモなんだけどね……」
「いや、だからオブラートって……」
「美神美神、ささいなコトだからスルーして、戦神の話を……」
「ええ~、気になるわ」
「しなくていいから」
「…………」

真言は、妙にオブラートに執着する美神に茶菓子を勧めた。
まんまと異世界の菓子に意識を持ってかれた美神をそのままに、真言と戦神は話を続ける。
うまうま、と菓子を食べる美神は、なんかかわいい。

「……まぁ、彼女はそのままで良いだろう。その姫だがね」

戦神は、ちょっと眩暈を覚えながらも話を続ける。

「“ワタクシは、あの方の妃になるべくこの世に生まれたのよ”とか真面目に言ってたからね。“神もそう望まれているわ”とか言い出したから、即行で伝令神を送り出したよ」

……神々を、私利私欲に利用するな……ってか?

真言は、生温かい目でこの場に在る二柱の神々を眺めた。

ひとしきり菓子を食べて、満足したらしい美神が言った。
……茶のカップ片手に。
もう片方の手には、いまだに菓子を持って。
ちなみにミスターなドーナツである。

「私達の中には居もしない、愛の神がどーの……って言い出した時は、驚いたわ」
「勝手に神を作らないでほしいね、まったく……」

あ、この世界、愛の神とか女神とか居ないんだ。

真言は、戦神に新しく入れた茶を渡しながら思った。







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