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既に番外編じゃあない。22
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閣下──真言に憤っているとばかり思っていた団長の様子が変だ。
どちらかといえば、真言に、ではなく真言に暴言を吐く騎士達にお怒りのようだ。
「団長? ……彼の諸行にお怒りだったのでは?」
副団長が、そっと団長に問いかけると、団長は妙にキラめいた瞳で。
「素晴らしい! 実に素晴らしい!! あの技量、あの戦闘力……! 貴様ら、散々に打ちすえながらも、対象に傷一つ負わせる事無く目的を果たす事が出来るか? ……オレには無理だ。あそこまでやったら、殺してしまう……。だが。あの方は!」
「…………」
ナニかに陶酔してる瞳。
神の啓示でも受けたような……。
副団長は、音も無く引いた。
どうやら、団長は違う世界への扉を開いてしまったようだ。
しかも、すでにどっぷりと、頭のてっぺんまで浸かっているらしい。
そして。
そんなヤカラはどうやらすでに一定数居るようで。
うっかりすると、一大派閥になりそうな勢いである。
……ナニやってんの、真言? ……いや、閣下?
まぁ、実際にやらかしてるのは主に、真言や和樹、あと冬至と尚人……女子では春香と千里。
この6人に、妙なチョッカイをかけてきた連中である。
ソイツらを、真言が撃退……っつか、対処っつか……した後、皆もれなく新たな世界へと旅立ち、そして帰って来ないだけの話、である。
……暗部にも一部信奉者が居るのは、真言の部屋を監視盗聴していたヤカラが、夜毎エンドレスで流されている“ケチャ”を聴かされ続けた結果、何故か法悦の彼方へと逝ってしまったが故、である。
どうやら、未知の音色と言語、独特なリズムにトランス状態に入り込み。
至高の経験をさせて頂いている……この経験を与えて下さる閣下は、素晴らしい存在だ……などと真言を崇め奉る方向に逝っちゃったらしい。
……脳内麻薬出まくったせい、だろうか。
怖いね。
さて。
そんなカンジで閣下=真言に翻弄され始めた王国だったが。
真言に不満を持つ者は、王国上層部は勿論、勇者達の中にも居た。
職能に、明確に勇者と入ってないにもかかわらず、かなり、結構重要なポイントを押さえてるっポい真言に、勇者の卵達は。
主役は自分達のハズなのに……と、鬱陶しい視線を向けて。
厨二教師清水もまた、自分よりも目立ちまくり、注目されまくりな真言の存在が面白くない。
が。
双方ともに実際に何らかの行動に出る事も無く。
陰鬱とした雰囲気を醸し出している。
他の勇者達の、どこか他人事な態度も問題だろうが、この状況をまとめ上げる気は、真言には無い。
勇者オブ勇者の冬至と賢者の雛の尚人が何かと気を揉んでいるが……。
どっちみち、まだまだ実戦に出るには拙い勇者達だ。
もう暫くは、訓練や座学中心になるだろう。
だというのに。
勇者達の教育を任されている魔術師長と第二騎士団団長が、このような状態……っていうのは、どーしたモンだろーか……。
いつの間にやら、夕食後に真言の部屋に6人で集まって、色々諸々話すのが定番になっていた。
真言は、ここで団長から聞き出した情報を小出しにしていく。
5人が各自部屋に戻った後、やって来る戦神と美神の話とすり合わせて、勇者達に知らせても問題無いだろうと判断されたモノのみを。
そして、たまにやって来る主神を、戦神と美神と共に適当に転がして、仮眠を取ると次の日……というローテーション。
その際に、主神に問いかけるのは、ただひとつ。
「……なぁ、俺、いつまでこの茶番に付き合えばいい?」
どちらかといえば、真言に、ではなく真言に暴言を吐く騎士達にお怒りのようだ。
「団長? ……彼の諸行にお怒りだったのでは?」
副団長が、そっと団長に問いかけると、団長は妙にキラめいた瞳で。
「素晴らしい! 実に素晴らしい!! あの技量、あの戦闘力……! 貴様ら、散々に打ちすえながらも、対象に傷一つ負わせる事無く目的を果たす事が出来るか? ……オレには無理だ。あそこまでやったら、殺してしまう……。だが。あの方は!」
「…………」
ナニかに陶酔してる瞳。
神の啓示でも受けたような……。
副団長は、音も無く引いた。
どうやら、団長は違う世界への扉を開いてしまったようだ。
しかも、すでにどっぷりと、頭のてっぺんまで浸かっているらしい。
そして。
そんなヤカラはどうやらすでに一定数居るようで。
うっかりすると、一大派閥になりそうな勢いである。
……ナニやってんの、真言? ……いや、閣下?
まぁ、実際にやらかしてるのは主に、真言や和樹、あと冬至と尚人……女子では春香と千里。
この6人に、妙なチョッカイをかけてきた連中である。
ソイツらを、真言が撃退……っつか、対処っつか……した後、皆もれなく新たな世界へと旅立ち、そして帰って来ないだけの話、である。
……暗部にも一部信奉者が居るのは、真言の部屋を監視盗聴していたヤカラが、夜毎エンドレスで流されている“ケチャ”を聴かされ続けた結果、何故か法悦の彼方へと逝ってしまったが故、である。
どうやら、未知の音色と言語、独特なリズムにトランス状態に入り込み。
至高の経験をさせて頂いている……この経験を与えて下さる閣下は、素晴らしい存在だ……などと真言を崇め奉る方向に逝っちゃったらしい。
……脳内麻薬出まくったせい、だろうか。
怖いね。
さて。
そんなカンジで閣下=真言に翻弄され始めた王国だったが。
真言に不満を持つ者は、王国上層部は勿論、勇者達の中にも居た。
職能に、明確に勇者と入ってないにもかかわらず、かなり、結構重要なポイントを押さえてるっポい真言に、勇者の卵達は。
主役は自分達のハズなのに……と、鬱陶しい視線を向けて。
厨二教師清水もまた、自分よりも目立ちまくり、注目されまくりな真言の存在が面白くない。
が。
双方ともに実際に何らかの行動に出る事も無く。
陰鬱とした雰囲気を醸し出している。
他の勇者達の、どこか他人事な態度も問題だろうが、この状況をまとめ上げる気は、真言には無い。
勇者オブ勇者の冬至と賢者の雛の尚人が何かと気を揉んでいるが……。
どっちみち、まだまだ実戦に出るには拙い勇者達だ。
もう暫くは、訓練や座学中心になるだろう。
だというのに。
勇者達の教育を任されている魔術師長と第二騎士団団長が、このような状態……っていうのは、どーしたモンだろーか……。
いつの間にやら、夕食後に真言の部屋に6人で集まって、色々諸々話すのが定番になっていた。
真言は、ここで団長から聞き出した情報を小出しにしていく。
5人が各自部屋に戻った後、やって来る戦神と美神の話とすり合わせて、勇者達に知らせても問題無いだろうと判断されたモノのみを。
そして、たまにやって来る主神を、戦神と美神と共に適当に転がして、仮眠を取ると次の日……というローテーション。
その際に、主神に問いかけるのは、ただひとつ。
「……なぁ、俺、いつまでこの茶番に付き合えばいい?」
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