298 / 374
既に番外編じゃあない。6
しおりを挟む
一夜明けて。
被召喚者達は、全員食堂での朝食を済ませると。
昨日とは違う、だが同じくらいの広さの部屋へと連れて行かれた。
白ヒゲにずるずるローブのじーさんが、同じようなローブ姿の10人程の男女を指揮して何やらやっている。
被召喚者達は、ローブの男女の言うがままに、1列に並ばされて。
白ヒゲじーさんが、説明を始める。
「えー……今ワシが持っているこの石は……」
長くなるので、そこそこ省略すると。
手のひらに乗るサイズの白っぽい石は、1人1個の使い捨てになる、判明石、と言うアイテムだそうだ。
この石を手に、自分の職能は──と問いかけると、石が割れて中から職能が刻み込まれたプレートが現れる……とかナンとか。
プレートのサイズはドッグタグ程度。
職能には、成長するモノと既に確定してるモノとあるそうだ。
また、何らかの理由で増減もあるとか。
ちなみに、人の手による加工は不可能、だそうだ。
「何その謎道具」
和樹がぽつり、と言うと、真言もまた。
「何で昨日のウチにやらなかったんだよ、その職能判定」
軽く疑問を口にすると。
近くに居た生徒の1人が、振り返って真言の疑問に答えた。
「何でも、予定以上の召喚者が現れてしまったから、あの判明石の在庫が足りなくなったそうだよ」
「「委員長」」
真言と和樹が、声を揃えて言った。
おっさんが、前方ではしゃいでいる三十路五十路のおっさんコンビをシラケた目で見ながら、委員長と呼ばれた少年に聞いた。
「お前さん、そんな情報、どこで仕入れた?」
委員長は、はしゃぐ大人どもと違い落ち着いた、冷静なおっさんの様子に、ふ、と笑った。
どうやらマトモな大人の存在に、安心したらしい。
「改めまして。僕はクラス委員をやらせてもらってる、小林尚人と言います。えと、あなたは──」
「おぅ、しがないトラック運ちゃんの、佐伯冬至ってモンだ。おいちゃんでもおっさんでも、おっちゃんでも好きに呼んでくれや」
おっさんは、気さくだった。
委員長は、ちょっと考えて。
「……では、冬至さん」
おっさんは、急に下の名前で呼ばれてびつくりした。
「そうきたか」
「なぁ、委員長。何で名前呼び?」
和樹が、素直に疑問を委員長にぶつけた。
その隣りで、真言も頷いている。
委員長は、呆れた顔を隠さずに、前方のはしゃぐおっさんコンビといまだにぐずぐずしてる、大人なはずの成人女子2人を見てから言った。
「あんな連中と、この人を同列にはとても出来ないな、と」
なるほど納得。
あー……と、盛んに頷いた、真言と和樹だった。
「……まぁ、好きに呼べって言ったのはおれだからな。別にいいか。……で、だ。委員長サンは、何で判明石とやらの情報持ってたんだ?」
おっさんは、話を戻した。
すると、委員長は。
少しイヤそうな顔をして、言った。
「……部屋付きだから、と言いはるメイドから聞き出しました。勇者様のお役に立つんですぅ、とかナンとか言いながらすり寄ってきたから、ソイツが現状知ってるだけの情報を、聞き出せるだけ聞き出しました。その後で、『僕らの役に立ちたいのなら、そのくらいはしてもらわないと……』そう言って、スパイの真似事を命じてから部屋から放り出しました」
「わー、なんか真言がやりそうなコトを……」
「やってねぇよ。俺んトコのメイドは、ただの色ボケだったし。そーゆー方向で役に立つとは、とても思えなかったしな」
……ってコトは、使えそうなメイドだったら、スパイに仕立て上げたりしたのか……。
おっさんは、ちょっと真言を見る目を改めた。
などとやっているうちに、前方では。
職能とやらが判明した者が出始めたようだ。
勇んで最初に判明石を手にした、厨二満載な担任教師は。
「……拳闘師の卵って、ナンだよ……」
当人的に、とっても不満な結果だったようだ。
その後も、槍術師の卵だの剣術師の卵だの、魔術師の卵だの治癒師の卵だの……。
「卵って付いてるってコトは、未熟者! 修行しろや! ってコトなんだろうけど」
勇者召喚しといて、勇者! ってのが出て来ないとか笑える。
真言は、半笑いで既に判明させてる連中を眺めている。
とりあえず、あまり性格はよろしくない、と思われる。
真言達の番がやってきた。
おっさんは。
「んじゃ、ちょいと行ってくる」
「その次は、僕ですかね」
委員長と連れ立って、場を取り仕切る白ヒゲじーさんの元へと行った。
他の、判明した者達が一喜一憂してる中。
ローブ集団がざわめいた。
そして、おっさんがなんとなくゲンナリした顔で戻ってきて。
「勇者オブ勇者ってナンだよ……ふざけてんのか?」
「僕なんか、賢者のヒナですよ」
真言と和樹は、顔を見合せて。
「問答無用で、おっさんが勇者ってコトなんじゃね? んで、委員長のヒナってのは、卵より早くその職能になるってコトじゃねーの?」
真言がそう言うと、2人はなんかモヤモヤしたモノを感じつつも、一応納得? したようだ。
とりあえず、厨二な担任からおっさんに向けられる、トゲだらけの視線が……。
「……ラスト、オレらかな」
和樹は、真言と共にローブ集団の元へと向かった。
被召喚者達は、全員食堂での朝食を済ませると。
昨日とは違う、だが同じくらいの広さの部屋へと連れて行かれた。
白ヒゲにずるずるローブのじーさんが、同じようなローブ姿の10人程の男女を指揮して何やらやっている。
被召喚者達は、ローブの男女の言うがままに、1列に並ばされて。
白ヒゲじーさんが、説明を始める。
「えー……今ワシが持っているこの石は……」
長くなるので、そこそこ省略すると。
手のひらに乗るサイズの白っぽい石は、1人1個の使い捨てになる、判明石、と言うアイテムだそうだ。
この石を手に、自分の職能は──と問いかけると、石が割れて中から職能が刻み込まれたプレートが現れる……とかナンとか。
プレートのサイズはドッグタグ程度。
職能には、成長するモノと既に確定してるモノとあるそうだ。
また、何らかの理由で増減もあるとか。
ちなみに、人の手による加工は不可能、だそうだ。
「何その謎道具」
和樹がぽつり、と言うと、真言もまた。
「何で昨日のウチにやらなかったんだよ、その職能判定」
軽く疑問を口にすると。
近くに居た生徒の1人が、振り返って真言の疑問に答えた。
「何でも、予定以上の召喚者が現れてしまったから、あの判明石の在庫が足りなくなったそうだよ」
「「委員長」」
真言と和樹が、声を揃えて言った。
おっさんが、前方ではしゃいでいる三十路五十路のおっさんコンビをシラケた目で見ながら、委員長と呼ばれた少年に聞いた。
「お前さん、そんな情報、どこで仕入れた?」
委員長は、はしゃぐ大人どもと違い落ち着いた、冷静なおっさんの様子に、ふ、と笑った。
どうやらマトモな大人の存在に、安心したらしい。
「改めまして。僕はクラス委員をやらせてもらってる、小林尚人と言います。えと、あなたは──」
「おぅ、しがないトラック運ちゃんの、佐伯冬至ってモンだ。おいちゃんでもおっさんでも、おっちゃんでも好きに呼んでくれや」
おっさんは、気さくだった。
委員長は、ちょっと考えて。
「……では、冬至さん」
おっさんは、急に下の名前で呼ばれてびつくりした。
「そうきたか」
「なぁ、委員長。何で名前呼び?」
和樹が、素直に疑問を委員長にぶつけた。
その隣りで、真言も頷いている。
委員長は、呆れた顔を隠さずに、前方のはしゃぐおっさんコンビといまだにぐずぐずしてる、大人なはずの成人女子2人を見てから言った。
「あんな連中と、この人を同列にはとても出来ないな、と」
なるほど納得。
あー……と、盛んに頷いた、真言と和樹だった。
「……まぁ、好きに呼べって言ったのはおれだからな。別にいいか。……で、だ。委員長サンは、何で判明石とやらの情報持ってたんだ?」
おっさんは、話を戻した。
すると、委員長は。
少しイヤそうな顔をして、言った。
「……部屋付きだから、と言いはるメイドから聞き出しました。勇者様のお役に立つんですぅ、とかナンとか言いながらすり寄ってきたから、ソイツが現状知ってるだけの情報を、聞き出せるだけ聞き出しました。その後で、『僕らの役に立ちたいのなら、そのくらいはしてもらわないと……』そう言って、スパイの真似事を命じてから部屋から放り出しました」
「わー、なんか真言がやりそうなコトを……」
「やってねぇよ。俺んトコのメイドは、ただの色ボケだったし。そーゆー方向で役に立つとは、とても思えなかったしな」
……ってコトは、使えそうなメイドだったら、スパイに仕立て上げたりしたのか……。
おっさんは、ちょっと真言を見る目を改めた。
などとやっているうちに、前方では。
職能とやらが判明した者が出始めたようだ。
勇んで最初に判明石を手にした、厨二満載な担任教師は。
「……拳闘師の卵って、ナンだよ……」
当人的に、とっても不満な結果だったようだ。
その後も、槍術師の卵だの剣術師の卵だの、魔術師の卵だの治癒師の卵だの……。
「卵って付いてるってコトは、未熟者! 修行しろや! ってコトなんだろうけど」
勇者召喚しといて、勇者! ってのが出て来ないとか笑える。
真言は、半笑いで既に判明させてる連中を眺めている。
とりあえず、あまり性格はよろしくない、と思われる。
真言達の番がやってきた。
おっさんは。
「んじゃ、ちょいと行ってくる」
「その次は、僕ですかね」
委員長と連れ立って、場を取り仕切る白ヒゲじーさんの元へと行った。
他の、判明した者達が一喜一憂してる中。
ローブ集団がざわめいた。
そして、おっさんがなんとなくゲンナリした顔で戻ってきて。
「勇者オブ勇者ってナンだよ……ふざけてんのか?」
「僕なんか、賢者のヒナですよ」
真言と和樹は、顔を見合せて。
「問答無用で、おっさんが勇者ってコトなんじゃね? んで、委員長のヒナってのは、卵より早くその職能になるってコトじゃねーの?」
真言がそう言うと、2人はなんかモヤモヤしたモノを感じつつも、一応納得? したようだ。
とりあえず、厨二な担任からおっさんに向けられる、トゲだらけの視線が……。
「……ラスト、オレらかな」
和樹は、真言と共にローブ集団の元へと向かった。
10
お気に入りに追加
575
あなたにおすすめの小説
【短編集】ゴム服に魅せられラバーフェチになったというの?
ジャン・幸田
大衆娯楽
ゴムで出来た衣服などに関係した人間たちの短編集。ラバーフェチなどの作品集です。フェチな作品ですので18禁とさせていただきます。
【ラバーファーマは幼馴染】 工員の「僕」は毎日仕事の行き帰りに田畑が広がるところを自転車を使っていた。ある日の事、雨が降るなかを農作業する人が異様な姿をしていた。
その人の形をしたなにかは、いわゆるゴム服を着ていた。なんでラバーフェティシズムな奴が、しかも女らしかった。「僕」がそいつと接触したことで・・・トンデモないことが始まった!彼女によって僕はゴムの世界へと引き込まれてしまうのか? それにしてもなんでそんな恰好をしているんだ?
(なろうさんとカクヨムさんなど他のサイトでも掲載しています場合があります。単独の短編としてアップされています)
お幸せに、婚約者様。私も私で、幸せになりますので。
ごろごろみかん。
恋愛
仕事と私、どっちが大切なの?
……なんて、本気で思う日が来るとは思わなかった。
彼は、王族に仕える近衛騎士だ。そして、婚約者の私より護衛対象である王女を優先する。彼は、「王女殿下とは何も無い」と言うけれど、彼女の方はそうでもないみたいですよ?
婚約を解消しろ、と王女殿下にあまりに迫られるので──全て、手放すことにしました。
お幸せに、婚約者様。
私も私で、幸せになりますので。
【第1部完結】Solomon of worth~人生2周目、清く正しくギルド職員やってます!
シノン
ファンタジー
そこそこブラック企業で、毎日仕事、仕事、仕事、寝る前にちょこっとだけゲーム! まあ大人になるってこういうことだよねと日々を生きていた俺。
ある日の休日出勤で階段から転げ落ちてきたベビーカーの赤ん坊を助けたら、死んだ。
気がつくと機械的な神様に出会い、俺がやってたゲームの世界に転生することになったんだけど……。
願ったギフトがこの世界では危険すぎるなんて、聞いてないよ!!
注意書き
① 戦闘描写などに伴い、暴力表現、流血表現など一部残酷と思われる表現があります。
② この世界では、種族性別問わず婚姻関係を結べます。
(※某ゲームの親密度を上げるとキャラクター同士が結婚出来るよ、同姓とも出来るよ~な感じです)
年齢制限が必要な性描写はありませんが、同性、異性で恋人、夫婦関係の人物が登場します。
そういう関係の登場人物が出ることがありますというだけで、恋愛が主体の話ではないことをご了承ください。
小説家になろう様、カクヨム様に投稿してます。
恋に臆病な僕らのリスタート ~傷心を癒してくれたのはウリ専の男でした~
有村千代
BL
傷心の堅物リーマン×淫らな癒し系ウリ専。淫猥なようであたたかく切ない、救済系じれじれラブ。
<あらすじ>
サラリーマンの及川隆之は、長年付き合っていた彼女に別れを告げられ傷心していた。
その手にあったのは婚約指輪で、投げやりになって川に投げ捨てるも、突如として現れた青年に拾われてしまう。
彼の優しげな言葉に乗せられ、飲みに行った先で身の上話をする隆之。しかしあろうことか眠り込んでしまい、再び意識が戻ったときに見たものは…、
「俺に全部任せてよ、気持ちよくしてあげるから」
なんと、自分の上で淫らに腰を振る青年の姿!? ウリ専・風俗店「Oasis」――ナツ。渡された名刺にはそう書いてあったのだった。
後日、隆之は立て替えてもらった料金を支払おうと店へ出向くことに。
「きっと寂しいんだよね。俺さ――ここにぽっかり穴が開いちゃった人、見過ごせないんだ」
そう口にするナツに身も心もほだされていきながら、次第に彼が抱える孤独に気づきはじめる。
ところが、あくまでも二人は客とボーイという金ありきの関係。一線を超えぬまま、互いに恋愛感情が膨らんでいき…?
【傷心の堅物リーマン×淫らな癒し系ウリ専(社会人/歳の差)】
※『★』マークがついている章は性的な描写が含まれています
※全10話+番外編1話(ほぼ毎日更新)
※イチャラブ多めですが、シリアス寄りの内容です
※作者X(Twitter)【https://twitter.com/tiyo_arimura_】
※マシュマロ【https://bit.ly/3QSv9o7】
※掲載箇所【エブリスタ/アルファポリス/ムーンライトノベルズ/BLove/fujossy/pixiv/pictBLand】
破滅転生〜女神からの加護を受けて異世界に転生する〜
アークマ
ファンタジー
人生が詰んだような生き方をして来た阿村 江はある日金を借りに家に帰ると妹、阿村 加奈の代わりに加奈に恨みがある男に刺され死んでしまう。
次に目が覚めた時、女神と名乗る女性が現れ「あなたを異世界で私のできうる限りの最高の状態で異世界に転生させます」と言われ渋々だが第二の人生を異世界でおくることを決める。新たな世界では前のような人生ではなく最高の人生をおくろうと江は転生した世界で考えていた。
ちっちゃな王妃様に最も愛されている男
くる ひなた
ファンタジー
記念すべき百代目のヴィンセント国王ウルには、ちっちゃくて可愛い妻がいる。
しかし、彼がこの幼馴染の愛娘マイリを娶ったのには、王国の創始に関わるのっぴきならない事情があった。
鬼畜面の守衛も、あらゆる可愛さを魔界に置いてきたような悪魔も、敵対している大司祭さえ、ちっちゃな王妃にかかればみんな「かわゆい!」
器は、元気いっぱいの愛くるしい幼女。
中身は、代々の国王に寄り添ってきた人智を超えた存在。
そのうんと大きな愛情に包まれた若き国王は、ただ一人の貴重なツッコミ担当。
この度初めて人間の器を得たマイリに振り回され、対価と称して時折首筋をガジガジされつつも、ウルは栄枯盛衰悲喜こもごも入り乱れる国々の狭間で祖国を守っていく。
※『新しい国王と王妃のままごとのようでいて時々血腥い新婚生活』より改題
断片漫画↓
https://www.alphapolis.co.jp/manga/894098289/376569275
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる