目標:撤収

庭にハニワ

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・・・にしか見えない。

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俺に横っ面張られたガキは、茫然として。
自分の身に何が起きたのか、今イチ理解出来なかったよーだったが。
ジーさんとおっさんが、血相変えてガキの元へと走り寄り。

「坊っちゃんっ! 大丈夫ですか!」

と、大騒ぎし始めたところで。

「なっ……ボクに、何をした!」

キャンキャン吠え始めた。

何って、横っ面張ったんだよ。
それも往復で。
お前、両手で両方の頬っぺた押さえてるじゃないか。
……マジでバカなのか?

とりあえず、ジーさんとおっさんよ。

「……何ですか?」

ジーさんは、俺を睨み付けながら、忌々しそーに言った。
おっさんは、無言でガキを背後に庇っている。
……自分の仕事は理解してるのか。
でもさ?

「まだ戦いは終わってないんだよな」

お前ら、邪魔だ。
ジーさんとおっさんには、引っ込んでてもらおう。

ジーさんら2人を結界に閉じ込めて、訓練場の隅っこの方に転移させた。
ジーさんが、これ以上、坊っちゃんをいたぶるような真似は許さない、とかナンとか叫んでるが、知らん。
あのガキ、まだゴメンナサイしてないしな。

見物人どもは、ジーさんらがガキの様子を見られるよーに、スペースを開けている。
面白そーに、結界をつっついてるヤツもいる。
まあ、好きにしろ。



さて。
改めてガキと向き合う。
か、ガキは既に逃げ腰だ。
威勢の良いコトさんざん吠えてたクセにな。

今更逃がさねーよ?

とりあえず、捕獲(物理)した上で場の中央に引きずり出した。

ガキは涙目だ。
が、まだまだ元気なよーだ。

「お……お前。ボクが誰だか……」
「知らねーな」

知るワケないだろ?
ってか、知る必要あんの?

俺は、ガキの胸ぐら掴んで持ち上げた。
……軽かった。
左手一本で、軽々と持ち上がった。
薄っぺらいのは、中身だけじゃなかったのな。

ガキは怯えたよーな震え声で。

「ボ……ボクの父が、誰だか……」
「関係ねーな」
「ぐ……ぅ……」

更に吊り上げた。
隅の方からジーさんが、坊っちゃんっ!とか叫んでる。
……遮音結界にしときゃ良かったか?

「ぐ……う、ぅ……」

ガキは力無く俺の手を引っ掻いてる。

「ごめんなさいって言えば、離してやらんコトもない」
「……っ……」

なかなか粘るな。
心身共に薄っぺらいクセに。

「坊っちゃんっ!」

ジーさんは、俺の結界を内側からナンとかしようとしている。
が。
……俺の結界は、そんな簡単にどーにかなるよーな、ヤワなモンじゃねーんだよ。
でも、ナンとかしようとしてんのは、ジーさんだけだな。
おっさんはナニしてんだ?
見ると、おっさんは地面に座り込んで、何かぶつぶつ言ってた。
なんかショックな事でもあったのか?
まあ、どーでもいいけどな。



「……っ……」
「コウ」

何すかミヤさん?

「そろそろ離してやらないと、その子供、逝っちゃうんじゃないかな?」

あ。

「あと、しゃべれるような状態じゃ、無いよね?」

手を離すと、ガキはべしゃっと地べたに落ちて。
咳き込みながら、ボロボロ涙を流して。

「……ん、な……ぃ。ごべんだ……ざいぃ……」

涙と鼻水で、ぐちゃぐちゃになりながら。
ガキは、ただひたすらに、ごべんだざいと繰り返す。
本人ごめんなさいって言ってるつもりなんだろーな……。
も、ぐっちゃぐちゃだ。

そして、見物人どもは、この状況に地味に引いてた。

え?
何か引くよーなコト、あったっけ?

俺が??? で頭をいっぱいにしてたら。

「……君ね」

ミヤさんが呆れていた。
何で?

「正直なところ、弱いモノイジメにしか見えなかったよ……。特に後半」

えー。
大したコトしてないのに。
2発ほど平手打ちくれた後、胸ぐら掴んで持ち上げてただけじゃないですか。
……ちょっと首締まってみたいだけど、それだけだぞ?
あの程度で泣き言言ってるよーじゃ、この先生きていけないんじゃね?

「誰もカレもがみんな、君のところみたいに人生ハードモードで生きてるワケじゃないんだよ。甘やかされたお坊ちゃんに、耐えられるワケないだろ?」

ねぇ? と、ミヤさんは隣りに立ってた銀竜に視線を向けた。
銀竜は、薄く笑ってた。
……俺はともかく、デッド オア アライブな幼少期を過ごしてきた銀竜に、同意を求めるのはどーなんだろーな……。
むしろ俺寄りの考え方だと思う。



ごべんだざいごべんだざい、と壊れた古い蓄音機みたいに同じ事を繰り返すガキ。
ジーさんらに掛けた結界を解除すると。

「坊っちゃんっ!」

ジーさんは、猫まっしぐらにガキの元へと走って行った。
おっさんは、いまだその場に座り込んだまま、ぶつぶつと……。
なんか妙な状態になってるので、放置決定。

ジーさんは、ガクブルってるガキを宥めすかしながら、おっさん放置でさりげなくここから逃げよーとしやがった。
ので、物理的に取っ捕まえて。

今度は質問タイムだ。
さぁ、キリキリ吐いてもらうぞ。










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