目標:撤収

庭にハニワ

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証言。

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1。

──玄関ホールから上手いこと逃げ出した人イヌ達──

おれ達は、ご主人様の番犬として造られた。
ご主人様の気分次第で、お遊びの相手もするけど、基本的には番犬だ。
と、言っても、ご主人様は館の外に出ることはない。
おれ達も、館の中をぐるぐる歩きまわるだけ、なんだけどな。

そんなおれ達だけど、本来の、番犬としての役目を果たす時が来たんだ。

堂々と正面玄関から乗り込んで来たのは3人の──人族2人と、見馴れた虎人。
おれ達だけじゃなく、ご主人様の実験の失敗作とかヒトガタ達とか沢山居たからさ。
すぐに捕まえて、ご主人様の前に引き出せるだろうと思ってたんだけど……。

現実って、こんなに恐ろしいモノだったんだな……。

2人の人族──見たこともないほどの男前と、赤い子供はあり得ないほど強かった。
虎人が何もしない……出来ないのも納得だった。

ヒトガタだろうが失敗作だろうが、おれ達人イヌだろうが、一切合切お構い無し。
吹き飛ばす。
押し潰す。
切り刻む……。
なんとか隙を作ろうと、おれ達が愛想振り撒こうが、表情一つ変えずにばっさりと……。

あまりにも無慈悲。
虎人が見かねて、死にたくなけりゃ、隠れてろ! って言ってくれなければ、おれ達は。
愚鈍にも、ただあの人族達の前に立って、切り刻まれていたと思う。

ご主人様は、かわいいは正義、とか。
かわいいモノが嫌いなヤツはいない、とか言ってるけど。
なんだろう……人によるのかな?

まあ、とにかく。
あの人族達、すっごい容赦無かった。
正直、怖かった。

おれ達、虎人の言うとおりに逃げ隠れして良かったよ。
本当に……。



2。

──地下室の人ネコ達──

ぼく達は、ご主人さまのオモチャ。
いくらでも、替えのきく、オモチャ。

ご主人さまは、いつもぼく達を、かわいいかわいいって言うけど。
ご主人さまが見てるのは、目の前にいるぼく達じゃない。
誰か、違う人だ。

ねぇ、ご主人さま?
マコトって、誰?



ある日。
ご主人さまはすっごく機嫌が良かった。
長いこと、もう長いこと会えずにいた、待ち人がやって来たんだって。
さっそく虎の人をおつかいに出したようだけど、虎の人は何度も失敗してた。
その度に、お土産持ってきてた。
──おかあさんって、なんだろう。
ぼく達は知らないけど、よっぽど大事なんだろうね。
虎の人、おかあさんには何もするな、指一本触れるなって何度も言ってた。
そう言って、半分真っ黒くこげた人族の人とか、人魚の髪の毛とか……。
あと、いつから自由気ままにしてたのかわからない、人ウサギのおねーさんも連れてきてた。
ご主人さまは。

「すごい! コドクの末期だ」

って、大よろこびしてたけど。
……コドクって、なんだろう?



そして今。
目の前で、ご主人さまは椅子に座ったまま、身動き出来なくなっている。

いつものように、この地下室で色々いじって楽しそうに遊んでいたご主人さまだけど。
上の階で、ナニか騒ぎが起きて。
始めのうちは、特に気にしてなかったみたいだけど。
その騒ぎが何度もくり返されて、ちょっとおかしいって思ったのかな?
ぼく達に、上の様子を見てこいって。
行ったよ。
命令だからね。
そしたら、上と、上の上にいるはずの人イヌの人達が、かくれんぼしていて。
聞いてみると、人族2人と虎の人が攻めてきたって怯えていた。
その辺うろうろしてた、ご主人さまの失敗作達も、生活するために造ったヒトガタ達も。
みんな、みーんな、動かなくなっちゃったって。
暴れてるのは人族の2人で。
虎の人は、人イヌの人達に、死にたくなけりゃ、逃げろ! って言ってくれて。
だから、ここに隠れてるんだって。

ご主人さまに報告したら。

「うわ~、自分から来てくれたんだね~。やっぱり、ボク達は……」

って、すごくゴキゲンだった。
ゴキゲンだったんだけど……。



ご主人さまは、椅子の上で何かぶつぶつと言っている。
そんなご主人さまに向かって、人族の──赤い人が手を伸ばして、ナニか、した。
やった。
仕掛けた。
ピカピカ光る輪っかが、いくつもご主人さまのまわりをぐるっと取り囲んで。
見たことのない記号が、その輪っかにのっかるように並んだ。
黄色く光っていた輪っかと記号が、白く光り出して──。

ご主人さまの中に、入っていったんだ。








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