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……で? っていう。

平泳ぎかクロールか……。

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お貴族サマの冗談にはついていけない……。



私が本気でビビる様を見て、ケーリッシュ嬢は。
冗談ですわ、と晴れやかに笑った。

ホッとした。
本当に、ホッとした。

いや、だって何処からか殺気にも似た強い視線が飛んで来てたからね。

アレですか。
身内義妹がやらかした侯爵令嬢──我ながら令嬢とか、ウソくさい──ごときが、王の覚えめでたい公爵家のご令嬢と親しくお話しようとか、ナニ様だ? とか誰かに思われたって事?

私に言いたい事があるなら、面と向かって言え。
真っ当な意見なら真摯に受け止める。
単なるやっかみからの悪意ならば、礼儀として3倍返しにする。

……物理が入る可能性あり。

泣かすぞ、コラ。



なんて事考えて、なんかげんなりした私。
お貴族サマ特有の、粘着性の高い悪意にはうんざりだ。

ケーリッシュ嬢は。

アレは王妃様のお気に入りで美味しい、コレは王女様のオススメで美味しい、お茶のお代わりはいかが? あちらの方には王家秘蔵の薔薇園があって……。
etc. etc. … …。

もてなされている私。

何故ナニゆえ貴女ケーリッシュ嬢が私をもてなそうとしてらっしゃいますか?
そして、だてに第2王子の婚約者だった訳じゃないな。
王城の中庭だってのに、まあ詳しいこと。

そして、全開の笑顔。

冗談って言ってたけど、実は冗談じゃないとか言わないよね?

何なの、本当に。




私の目が死んでいる事に、ようやく気付いたらしいケーリッシュ嬢は。
不意に姿勢を正して。
真剣な顔で、「実は……」と言いだした。

うわ、ヤな予感。

と、同時にさっきの殺気飛ばしてきたのと同じヤツだろうな、そいつが威圧飛ばしてきた。

何だよ。
目的が分からん。

アレか?
ケーリッシュ嬢にもてなされたかったとか?

……くだらん。

くだらん理由なので、とりあえず威圧し返した。
礼儀として3倍返しで。

庭園の奥の方から、めっちゃ慌ててる気配。

ふと見れば、ケーリッシュ嬢の目が泳いでいる。

美女の目が泳ぐ様って、珍しい、のか?
見たことないとは言わないが。
冒険者ギルドの美人受付嬢とか、ギルド長のやらかしっぷりに良く目が泳いでたし。
そして、やらかしたギルド長が副ギルド長に説教(物理)を食らうまで泳ぎっぱなしだった。
ハタから見てる分には、面白い光景だが。

自分がその光景に参加するのって、微妙だ。







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