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ホントふざけんな?

転けた。

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なんつーか。

いいかげん、この茶番劇に付き合ってるの、馬鹿馬鹿しくなってきた。

王族の──王と王妃、王太子とその婚約者──方々が、こっそり入場してきて、この茶番劇を厳しい目でご覧になってらっしゃるし。

……わざわざ魔術師に、隠行の術掛けさせて、気配消しての入場だ。

ボンクラ王子のやらかしを、最後まで見守る方向らしい。

さすが王族。
腹黒……っつーか、陰険。




煽り立てた私の言葉に、ボンクラ王子は逆上して大声で叫ぶ。

「貴様っ! この愛らしいエミーリアを、何だと思ってる!」

あ?

「血の繋がりの無い、ハタ迷惑なだけの義妹ですか? 端的に言って、金食い虫ですね」

きっぱり。

まさかそこまではっきりきっぱり言われるとは、カケラも思ってなかったのか。
バカ従兄弟は、目を見開いて。

「フェリ……」

そこで絶句するんじゃないよ。

脳ミソ筋肉が、ぽかん、と口を開けっぱなしにして、ボンクラ王子の顔が真っ赤になった。
そして義妹が。

「ひどい! ひどいわ! ……殿下ぁ~」

大げさに嘆き、ここぞとばかりにボンクラ王子にしなだれかかる義妹。
思いっ切りウソ泣き。
私の後ろにいるケーリッシュ嬢が、『泣いてませんわ、あの子……』とか言っちゃうくらいバレバレなもよう。

だが、ボンクラ王子はお怒りらしい。

「このっ! どこまでも……!」
「貴様! そこに直れ!」
「……もうキミは、死んじゃってもいいと思うよ?」

ボンクラ王子逆上。
ついでに脳筋騎士団長子息とバカ従兄弟が、剣を抜いて私に襲いかかってきた。

お前ら、その剣、どっから出した?

って、それより……っ!

「ぐおっ!」
「いっ!」

え。

脳筋とバカ従兄弟、二人揃ってすっ転んだ。



……ケーリッシュ嬢?

あの二人の足元を凍らせて、滑って転ばせたのは、貴女ですよね?

私の後ろにいたケーリッシュ嬢。
いつの間にやら私の隣りに並び、魔法発動してらした。

「わたくし、これでも公爵家の者でしてよ? この程度の事が出来なくて、どうしますの?」

うふふ……と鮮やかに微笑んで見せるケーリッシュ嬢。
周囲のギャラリーから、ため息が……。

……アナタ方、見物気分も甚だしいね。



ものすごい勢いで転けた二人。
バカ従兄弟は、顔面から行った事により、あっさりと戦意喪失。
手にしていた剣は、転んだ拍子に手放してどこぞに行った。

が。
脳筋騎士団長子息は、怒髪天をついたらしく。

「こ……のっ! 女が!」

バカ従兄弟と同様に、転んだはずみで剣を手放したからか。
女相手とバカにしてるのか。
素手のままで私に……と、いうより隣りに立つケーリッシュ嬢に手を伸ばしてきた。








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