留学してたら、愚昧がやらかした件。

はじまり。

弟ユナンから手紙が来た。
大至急の真っ赤な速達で。
正直珍しいな、と思った。
コイツ、筆マメなヤツじゃない。
手紙を寄越すのは、母くらいのモンだった。
父？　母に便乗して一言書き添えるカンジで終わりさ。
そんなモンだと思ってた。
速達なんか来るわけない、と。

で、弟ユナンからの手紙の中身なんだが……。
ーーー兄上、お願いです……。
時候の挨拶も何もかも取っ払って、いきなりそんな文言から始まった弟ユナンからの手紙によると、俺が暫く国を開けてた間、ウチの妹セルマがロクでもないコトをやらかした、と。
しかも、それが被害拡大中とか。
ーーーもう、僕達では姉上セルマを止める事が出来ません。
ストッパーがが解除されたままでやりたい放題です。
このままでは、国を巻き込んで大変な事になってしまうかもしれないです……。
兄上、どうか帰って来て下さい。
そしてあの不愉快な集団を止めて下さい。
お願いします、兄上ストッパー。

をい。
兄貴捕まえてストッパー扱いするな。
めんどくさいな。
が、迷惑被ってるのがウチの家人だけじゃない、とな。
オカシくなった連中の中には、王族だけじゃなく教会関係者も居るとか。
…まあ、俺も脳内花畑な令嬢に追いかけられて、物理的に迷惑＆身の危険を感じて来たところだし。
学ぶべきところは全て学んだ。
この辺りで留学切り上げて、帰国するとしようか。

あ、申し遅れました。
俺、カイナン・リンガードはサルディア国リンガード公爵家の長子。
いわゆる公爵家の跡取り息子ってヤツだ。