笑顔でナニ言ってんですか？

vs. 王族あんど……。

素材ががが。

たしか、コーラルは術師だと聞いていた。
術師、つまり魔術師という事だろう。
ならば、魔術師らしくローブにマントに杖、とくるのが定番であろう。

が。

コーラルは、黒い革製のロングコートに真っ白なシャツ、黒革のズボンに黒革のショートブーツときた。
しかも、ちらりと見えたベルトには、短剣と呼ぶには少々長い剣がつけられていた。
杖は、ない。
見た目、魔術師とはとても思えない装備の数々。

そのような姿で、王の御前に立つとはナニゴトか。




そんなコーラルに、ザワつくサルファー王国の貴族ども。
主として『無礼である』というところか。
だが、王国魔術師どもはまた違う意味でザワめいていた。
あと、一部の騎士や極少数の貴族達も。



──あれは、ひょっとしたら黒飛竜の革で作られたモノでは？

──黒飛竜……災害級では？

──それに、簡単にお目にかかれるようなモノじゃ無いはずですが。

──……そう言えば、オンタリオ皇国には数多の迷宮が存外し、内一つには“飛び迷宮”とあだ名がつくほど“飛ぶ”、或いは“跳ぶ”魔物ばかりの迷宮があるとか。

──まさか、そこへ？

──いや、確か養い親も冒険者だと聞き及んでおります。

──では、養い子の装備は養父が用意したモノか。

──シャツも、上位の蜘蛛系魔物の……白金蜘蛛のアラクネ、それも固有名称を持つような特殊個体の糸で織ったモノでしょう。

──そう言えば、蜘蛛もまた、飛びますな。

──飛び、というよりは、翔ぶ、と言ったほうが正しい気がするが。

では、まさか？

コーラルが、自ら用意したモノで？