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第1章 重力波
コプリスタル
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「こんな物もあるんだよ。」
と言っておじさんがかたわらの小物入れから取り出したのは小さな土のブロックで、中にはさっきの結晶の小型版がたくさん付いている。結晶が土の中で成長したということだ。しかも浅い所で。
「この結晶をコプリスタルと呼ぶことにしたよ。この星系の発見者の名前をもらって名付けたんだ。ライブラリーにも登録した。」
私が来た時には、この星系には小規模の星系ライブラリーしかなく、この惑星にはまだ惑星ライブラリーもなかった。それで乗ってきた宇宙船で惑星ライブラリーを設置して、この結晶についても登録した。星系外から恒星と惑星だけ見て充分な調査もせず登録するヤツは多い。名を残すという行為だ。長命族が現れてやっと消えていきつつある行為だが、有史以来長いこと残っていた習慣だ。
「心を開いてじっと見つめてごらん。」
とも言われた。心を開くってどうするんだ?とは思いながらも、じっと見つめた。さっきと同じで、意識が引っ張られる感じがする。私の顔に期待通りの反応を読み取ったのか、
「うん、よし。」
と言っておじさんは私の手からそのブロックを奪った。
「これらはね、この辺りで掘り出した物なんだ。
それでこの惑星を買い取ろうと思う。」
領有権を主張するということだ。この惑星や星系に生物が住んでいるだろうし、そう簡単ではないだろうと想像した。
お前には共同経営者になってもらおうと思って来てもらったんだ。豊かで変化に富んでいるし、静かに暮らすには最適だと思うんだ。まあ、眠って過ごすということだ。姉さんにもそう伝えたい。
私はびっくりした。そんな話は聞いていない。
それが顔に表れたのか、おじさんは
「あれ、姉さんに言わなかったかなあ。」
おかしいなあ、とか言いながらおじさんは頭をかき、ソファーを座り直し、次のような長い話をした。あんまり長かったので、途中でミーナが帰って来た。
おじさんは行方不明になっていたこの500年の間、星域のあちこちを回って神隠しの伝承を探し回っていたらしい。特に、そんな必要もないのに古いライブラリーを中心に。
「この、科学技術が進歩した時代でも神隠しはあるんだ。」
と、おじさんは強調した。
しかも科学技術が進歩したからこそ、それが思い違いや迷信なんかではなく、確かな事実だということができる。ライブラリーの自動記録された映像の中にも、ヒトや動物、植物がフッと消えてしまう様子が記録されているし、複数の記録装置が同じ現象を記録していることもある。記録装置に不具合はないか、故障していないか慎重に調査されたこともある。その記録も残っている。それなのに原因不明という言葉で人々の記憶から忘れ去られてしまっている。
神隠しについて調べている内に私はある思いつきから重力波と関係があるのではと思うようになったんだとおじさんは言った。重力波についてはライブラリーにも記録があった。その記録を調べると、宇宙では複数の中性子星の合体が同時に起こることがあり、複数の重力波が1箇所に集まって来ることがある。干渉が起こるんだな。その時にそこで神隠しが起こっているようなのだ。
で他にも収束点はないかと、計算してみると、この惑星が見つかったんだ。ライブラリーには神隠しの記録はない。星域ライブラリーに問い合わせると星系ライブラリーも貧弱で、惑星ライブラリーは稼働していないようだった。神隠しの記録がないことも無理はなかった。
でこの惑星を訪れることにした。来てみると、2つ奇妙なことに気付いた。
この惑星には動物がいないんだ。恒星からの熱と光を受けて栄養を自分で生成する植物はいるのに、それを吸収して自身の活動のエネルギーにする動物がいないんだ。微生物サイズの動物さえいない。古い文明の痕跡はあるのにね。
動物の痕跡はないかと、地質を調べるとおよそ240万年前に突然消滅したみたいなんだ。
240万年前というと、我々長命族が生まれる少し前で、「宇宙の調和を乱す者事件」があった頃だ。
私はおじさんに
「動物の消滅の年は詳しく分からなかったのですか?」
と尋ねた。おじさんは私の質問の意を悟って
「例の事件とは関係ないらしい。
当時まだライブラリーは構築されていなかったが、この惑星にも文明があったらしく、遺跡も残っていた。記録もいくつかは見つけたが、それらしいことはわからなかった。彼らは自分たちのことをクレールと名乗っていたらしいが。」
おじさんはKAMIKAKUSIということで、この現象と調査記録をライブラリーに登録していた。
2つ目の奇妙な点というのは、このコプリスタルだ。コプリスタルには面白い性質があるので、ちょっと調べてみたんだ。初めは成分とかが特殊なのかと材質を調べてみたが、特に変わったところはなかった。この惑星にも豊富にある鉄やシリコン等の物質でできていた。その後、この結晶の形が原因であることがわかったんだ。
「実はこんな物もあるんだ。」
まただ、おじさんは大事なことを小出しにする悪い癖が昔からあった。まあいい。初めてのミーナはおじさんに話を進めるように神妙にうんうんと頷きながら聞いていた。
と、居ずまいを直したおじさんが手にしていた物は初めの結晶と似た物だった。だが黄色くない。
「それはただのガラスだ。」
コプリスタルをガラスで似せて作ると同じことが起こった。
「見ててごらん。やってみせよう。」
と言っておじさんはかたわらから何か輝くような、なめらかそうな布を取り出して人差し指に巻きつけて、今取り出したガラスの棒をじっと見詰めながら、拭くような仕草をした。そうすると、ガラスが輝き出した。表面だけではなく、ガラスの中からも光っているように見えた。そして、おじさんの姿が、何かに吸い込まれるようにあっという間に音もせず消えた。
ミーナも私もとてもびっくりしたが、すぐに隣の部屋から声がしておじさんが現れた。
「手品ではないよ。転移なんだ。」
「やってみたまえ。大丈夫だよ。」
ガラス棒を見詰めながら行きたい場所を想像しながら、この布で軽くこするんだ。そうすると一瞬で転移する。
ミーナも私も代わる代わる実験した。ミーナは自宅の自分の部屋に転移して、お気に入りのぬいぐるみを抱いて帰ってきた。
長々と続いたおじさんの話と実験の後で遅い夕食を採り、ミーナも私も自室に戻った。おじさんはソファーに腰掛けたままガラス棒をながめていた。
しばらくしてミーナの部屋に行くとミーナがシャワーから出てきた。ミーナの部屋はおじさんの部屋と同じで望めば何でも出るのに、飾り気も何もない殺風景な部屋だった。きれいな白いシーツを敷いたダブルの大きなベッドと、4人ぐらいが座れそうな大きなソファーがあるだけだった。私はソファーに腰掛けた。
ミーナは薄い半分透き通るようなローブをまとっていて、ローブを通して体全体から湯気が上がっている。私はミーナを招いて
「脱いで」
と言った。DNAがそう言えと告げている。ミーナはローブを脱いでソファーにかけ、私の方を向いた。
ミーナの全身がはっきり見えている。私はミーナの美しい胸から目が離せなかった。私のDNAが、それを命じている。逃れようがない。私が乳房をじっと見詰めていることをミーナも気付いていた。
「触ってもいい?」
「ただの肉の塊よ」
私は片手を伸ばし、ミーナの乳房に触れ、手のひら全体で包むようにした。温かい。シャワーからあがったばかりで、少ししっとりしていた。
ミーナも手を伸ばして私の胸を握った。
「ただの肉の塊だよ。」
「いいの。」
と言っておじさんがかたわらの小物入れから取り出したのは小さな土のブロックで、中にはさっきの結晶の小型版がたくさん付いている。結晶が土の中で成長したということだ。しかも浅い所で。
「この結晶をコプリスタルと呼ぶことにしたよ。この星系の発見者の名前をもらって名付けたんだ。ライブラリーにも登録した。」
私が来た時には、この星系には小規模の星系ライブラリーしかなく、この惑星にはまだ惑星ライブラリーもなかった。それで乗ってきた宇宙船で惑星ライブラリーを設置して、この結晶についても登録した。星系外から恒星と惑星だけ見て充分な調査もせず登録するヤツは多い。名を残すという行為だ。長命族が現れてやっと消えていきつつある行為だが、有史以来長いこと残っていた習慣だ。
「心を開いてじっと見つめてごらん。」
とも言われた。心を開くってどうするんだ?とは思いながらも、じっと見つめた。さっきと同じで、意識が引っ張られる感じがする。私の顔に期待通りの反応を読み取ったのか、
「うん、よし。」
と言っておじさんは私の手からそのブロックを奪った。
「これらはね、この辺りで掘り出した物なんだ。
それでこの惑星を買い取ろうと思う。」
領有権を主張するということだ。この惑星や星系に生物が住んでいるだろうし、そう簡単ではないだろうと想像した。
お前には共同経営者になってもらおうと思って来てもらったんだ。豊かで変化に富んでいるし、静かに暮らすには最適だと思うんだ。まあ、眠って過ごすということだ。姉さんにもそう伝えたい。
私はびっくりした。そんな話は聞いていない。
それが顔に表れたのか、おじさんは
「あれ、姉さんに言わなかったかなあ。」
おかしいなあ、とか言いながらおじさんは頭をかき、ソファーを座り直し、次のような長い話をした。あんまり長かったので、途中でミーナが帰って来た。
おじさんは行方不明になっていたこの500年の間、星域のあちこちを回って神隠しの伝承を探し回っていたらしい。特に、そんな必要もないのに古いライブラリーを中心に。
「この、科学技術が進歩した時代でも神隠しはあるんだ。」
と、おじさんは強調した。
しかも科学技術が進歩したからこそ、それが思い違いや迷信なんかではなく、確かな事実だということができる。ライブラリーの自動記録された映像の中にも、ヒトや動物、植物がフッと消えてしまう様子が記録されているし、複数の記録装置が同じ現象を記録していることもある。記録装置に不具合はないか、故障していないか慎重に調査されたこともある。その記録も残っている。それなのに原因不明という言葉で人々の記憶から忘れ去られてしまっている。
神隠しについて調べている内に私はある思いつきから重力波と関係があるのではと思うようになったんだとおじさんは言った。重力波についてはライブラリーにも記録があった。その記録を調べると、宇宙では複数の中性子星の合体が同時に起こることがあり、複数の重力波が1箇所に集まって来ることがある。干渉が起こるんだな。その時にそこで神隠しが起こっているようなのだ。
で他にも収束点はないかと、計算してみると、この惑星が見つかったんだ。ライブラリーには神隠しの記録はない。星域ライブラリーに問い合わせると星系ライブラリーも貧弱で、惑星ライブラリーは稼働していないようだった。神隠しの記録がないことも無理はなかった。
でこの惑星を訪れることにした。来てみると、2つ奇妙なことに気付いた。
この惑星には動物がいないんだ。恒星からの熱と光を受けて栄養を自分で生成する植物はいるのに、それを吸収して自身の活動のエネルギーにする動物がいないんだ。微生物サイズの動物さえいない。古い文明の痕跡はあるのにね。
動物の痕跡はないかと、地質を調べるとおよそ240万年前に突然消滅したみたいなんだ。
240万年前というと、我々長命族が生まれる少し前で、「宇宙の調和を乱す者事件」があった頃だ。
私はおじさんに
「動物の消滅の年は詳しく分からなかったのですか?」
と尋ねた。おじさんは私の質問の意を悟って
「例の事件とは関係ないらしい。
当時まだライブラリーは構築されていなかったが、この惑星にも文明があったらしく、遺跡も残っていた。記録もいくつかは見つけたが、それらしいことはわからなかった。彼らは自分たちのことをクレールと名乗っていたらしいが。」
おじさんはKAMIKAKUSIということで、この現象と調査記録をライブラリーに登録していた。
2つ目の奇妙な点というのは、このコプリスタルだ。コプリスタルには面白い性質があるので、ちょっと調べてみたんだ。初めは成分とかが特殊なのかと材質を調べてみたが、特に変わったところはなかった。この惑星にも豊富にある鉄やシリコン等の物質でできていた。その後、この結晶の形が原因であることがわかったんだ。
「実はこんな物もあるんだ。」
まただ、おじさんは大事なことを小出しにする悪い癖が昔からあった。まあいい。初めてのミーナはおじさんに話を進めるように神妙にうんうんと頷きながら聞いていた。
と、居ずまいを直したおじさんが手にしていた物は初めの結晶と似た物だった。だが黄色くない。
「それはただのガラスだ。」
コプリスタルをガラスで似せて作ると同じことが起こった。
「見ててごらん。やってみせよう。」
と言っておじさんはかたわらから何か輝くような、なめらかそうな布を取り出して人差し指に巻きつけて、今取り出したガラスの棒をじっと見詰めながら、拭くような仕草をした。そうすると、ガラスが輝き出した。表面だけではなく、ガラスの中からも光っているように見えた。そして、おじさんの姿が、何かに吸い込まれるようにあっという間に音もせず消えた。
ミーナも私もとてもびっくりしたが、すぐに隣の部屋から声がしておじさんが現れた。
「手品ではないよ。転移なんだ。」
「やってみたまえ。大丈夫だよ。」
ガラス棒を見詰めながら行きたい場所を想像しながら、この布で軽くこするんだ。そうすると一瞬で転移する。
ミーナも私も代わる代わる実験した。ミーナは自宅の自分の部屋に転移して、お気に入りのぬいぐるみを抱いて帰ってきた。
長々と続いたおじさんの話と実験の後で遅い夕食を採り、ミーナも私も自室に戻った。おじさんはソファーに腰掛けたままガラス棒をながめていた。
しばらくしてミーナの部屋に行くとミーナがシャワーから出てきた。ミーナの部屋はおじさんの部屋と同じで望めば何でも出るのに、飾り気も何もない殺風景な部屋だった。きれいな白いシーツを敷いたダブルの大きなベッドと、4人ぐらいが座れそうな大きなソファーがあるだけだった。私はソファーに腰掛けた。
ミーナは薄い半分透き通るようなローブをまとっていて、ローブを通して体全体から湯気が上がっている。私はミーナを招いて
「脱いで」
と言った。DNAがそう言えと告げている。ミーナはローブを脱いでソファーにかけ、私の方を向いた。
ミーナの全身がはっきり見えている。私はミーナの美しい胸から目が離せなかった。私のDNAが、それを命じている。逃れようがない。私が乳房をじっと見詰めていることをミーナも気付いていた。
「触ってもいい?」
「ただの肉の塊よ」
私は片手を伸ばし、ミーナの乳房に触れ、手のひら全体で包むようにした。温かい。シャワーからあがったばかりで、少ししっとりしていた。
ミーナも手を伸ばして私の胸を握った。
「ただの肉の塊だよ。」
「いいの。」
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