少女が過去を取り戻すまで

tiroro

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序章

08:お母さんとお買い物

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 冬休みに入った。

 冬は寒い。
 けど、ここは雪がほとんど降らない場所だから、雪が積もったりもしない。

「おばあちゃんのところは雪がいっぱい積もるのにね」

「今年も雪下ろしが大変だって言ってたわ」

 おばあちゃんから送られてきた柿をもしゃもしゃ食べてる。
 お菓子みたいに甘くておいしい。

「宿題はちゃんとやってる?」

「日記と工作以外は全部終わってるよ」

「そういうところはあんた、お母さんに似てないねー」

 お母さんはぎりぎりまでため込む人だったらしい。
 先に終わらせて、あとは楽したいじゃんね。

「今日はどうしようかな」

「一緒に買い物に行く?」

「そうだね。やることないしね」

 小学生になってから冬休みは暇だ。
 幼稚園のころは小岩井達と冬でも虫取りに行ってたっけ。
 カマキリに手をかじられたの今でもトラウマだわ。

「玲美の新しい服を買おう。
 幼稚園のころの服じゃ、そろそろサイズも合わなくなってくるからね」

「適当なのでいいよ」

「お父さんみたいなこと言わないの。
 玲美にはアイドルを目指してもらうつもりなんだから」

 よくわからんことを言ってる。
 アイドルなんて、なれるわけないでしょ。

 とりあえず、買い物に付き合うからお菓子買ってください。


*****


 スーパーに着いて、そのまま2階に上がる。

 そして、婦人服売り場で足を止めるお母さん。
 なんだかんだ言って、自分も服を買いたかったらしい。

 マネキンの足元の宝石みたいなのがきれいだったので見ていたら、店員のお姉さんがなぜか袋に入れてくれた。
 あと、飴ももらった。ラッキー。

「またなんかもらったの?」

「お姉さんがくれた。ちゃんとお礼言ったよ」

「来るたびに毎回何かもらってるね」

 夏に来たときは貝殻をもらった。
 それは、わたしの勉強机に飾ってある。


「これ、お母さんに似合う?」

「下の色が濃いから、上はもっと薄い感じの方がいいんじゃない?」

 そう言ってクリーム色の服と合わせたら、やっぱりお母さんによく似合っていた。
 お母さんも満足そう。

「玲美……あんた、服飾目指しなさい」

 アイドルの次はよくわからんのきた。

「じゃあ、お母さんはこれを買うとして、次はあなたね」

「パーカーでいいよ」

「あんたパーカー好きね。
 もっとヒラヒラした可愛いのとかいらないの?」

「そんなのわたしに似合うと思う?」

「似合うような子になりなさい」

 無茶を言う。


*****


 2階での買い物が終わって、次は1階の食品売り場。

 みかんが売ってるのが気になる。

「みかんほしいの?」

「うん」

「玲美はみかん好きね。お母さんに似たんだね」

 これで、オコタに入りながらみかんが食べれるね。

 今日は何がいい?ってお母さんが言うからハンバーグと言ったらお母さんは豆腐も買っていた。
 豆腐入れるとおいしいらしい。
 豆腐も好きだから嬉しい。


 試食コーナーでウインナーをもらった。
 おいしかったけど、ウインナーはまた今度だって。残念。

 そうだ、お菓子をおねだりするの忘れてた。

「お母さん、お菓子持ってきていい?」

「いいよ。100円までね」

 100円かー。
 何にしようかな。チョコもいいけど、この練って作るやつも面白そう。

 どれにするか迷っていると、おない年くらいの男の子がキ〇コの山を選んでいるのが見えた。
 この子はキノコ派か……わたしは断然タケノコ派だな。
 キノコより大きい気がするし、実物もわたしはタケノコの方が好きだ。
 100円超えてるから買わんけど。

 よし、わたしはこれにしよう。
 練って食べるやつ。

 今日はこれをいっぱい練ろう。
 そして、お父さんに食わそう。

 お母さんのところに戻って、買い物かごに練るやつを入れた。


*****


 家に帰ってお片付け。

 お母さんのおすすめの服を買ってもらったからタンスにしまう。
 今度学校に行くとき着てみよう。

 次は、さっそく買ってきたお菓子をひたすら練る。
 練れば練るほど色が変わる。

 あのおばあさんがひっひっひと笑う風景が目に浮かぶ。
 さすがにあんな笑い方はしないけど、なんか楽しいねこれ。

 それをこうやってつけて……普通においしい。
 お母さんにもあげてこよう。

 お父さんにもあげようと思ったけど、わたしとお母さんで普通に食べてしまった。
 お父さんの分は今度にしよう。


 お母さんが作った豆腐ハンバーグはおいしかった。
 普通のハンバーグより好きかもしれない。


 今日の日記は、お菓子を練ったことを書いた。
 絵日記なので、わたしに魔女っぽい帽子を付けて練っているところを描いた。

 冬休みはまだまだ残ってるので、毎日日記に書くことを探さなきゃ。
 さて、明日は何をしようかな。
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