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おぼろ豆腐料理店 11
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月下は床の間のある部屋を顎で示した。
「そんなことより、あの怪我人は大丈夫かね。ずっと眠ったっきりだけど」
小宮は顔をしかめた。
「怪我は大したことないって言ったけど……」
「そういえば、思い出した。俺あの旅人、見たことあるかも知れない」
いつきがボソッとそんなことを言い出した。
「え! どこ、どこで?」
思わず小宮は身を乗り出す。
「去年のお祭りの時だな、確か。うっかりぶつかってしまってな。あの男が持ってた小さな包みを落としてしまってな」
そこでいつきは少し笑った。
「落とした包みから何かが出てきた。なんだと思う? 小さな起き上がりこぼしがたくさんだ!」
祭りのにぎやかな光景を、小宮は思い浮べた。屋台には色とりどりの扇子やかんざし、風車などが並んでいる。
その石畳に、親指ほどの起き上がりこぼしが無数にぴょこぴょこと揺れ、いつもより少し上等な着物を着て行き交う人々を驚かせる。美しくて楽しくて、ちょっとばかり滑稽 (こっけい)な光景だ。
「拾いながら『子供にあげるのか』と聞いたら、『自分には子供がいないから、近所の子供にやるんだ』と笑っていた。『医者をやっていて、幼い患者がくるから』と」
「そんなことより、あの怪我人は大丈夫かね。ずっと眠ったっきりだけど」
小宮は顔をしかめた。
「怪我は大したことないって言ったけど……」
「そういえば、思い出した。俺あの旅人、見たことあるかも知れない」
いつきがボソッとそんなことを言い出した。
「え! どこ、どこで?」
思わず小宮は身を乗り出す。
「去年のお祭りの時だな、確か。うっかりぶつかってしまってな。あの男が持ってた小さな包みを落としてしまってな」
そこでいつきは少し笑った。
「落とした包みから何かが出てきた。なんだと思う? 小さな起き上がりこぼしがたくさんだ!」
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「拾いながら『子供にあげるのか』と聞いたら、『自分には子供がいないから、近所の子供にやるんだ』と笑っていた。『医者をやっていて、幼い患者がくるから』と」
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