推しの隣に転生してしまった

カイさん

　舞台練が終わった21時。カイさんと私はとある居酒屋にいた。

「この前の打ち入りのとき、心理テストや占いをやったのを覚えている？」

「はい」

カイさんは占いができるらしい。

「それで見えちゃったのよ」
固唾を飲んで続きを待つ。

「あなたが前世女性だったということ。そして、あなたはそれを自覚している」

どきりとした。ずっと隠していたことが占いでバレてしまうなんて。というか占いってすげえ。

「そうなんですか？　僕は知らなかったんですけど、前世女性だったのか。すごいな」

取り敢えずシラを切ることにした。素直に認めてしまっては何を言い出されるか分からない。

「怖がらなくていいのよ。私はあなたの力になりたいだけ。相談相手くらいにはなれるでしょ？ずっと中身が女性であることを1人で抱え込んできて辛い思いをしてきているのだろうと大体察しはつくし……」

私はのらりくらりと質問や追求を交わしながらお酒を飲んでいた。その結果。

＊＊＊


「私は、ただ真面目に働くハルトのオタクだっただけなんですっ。なのに誰かに屋上から突き落とされて。転生したら男になっていて。なんやかんやあって今遥人先輩の近くにはいるけど、私は男だから想いは伝えられないし……」

実際これを言った記憶はない。酔っていたからである。これは後にカイさんから聞いた話だ。要するに手遅れである。

「まあまあ、好きな人と同じユニットになれたのだから頑張ったじゃない。自分の頑張りは認めなきゃ。それに性別のせいで想いを伝えられないとは限らないわ」

「カイさーん　泣」

ベロベロに酔った私は事細かに全て話してしまったらしい。しかし、翌朝の私はとてもすっきりしていた。全部吐き出したからだろう

話し合った結果カイさんが何か害を加えてくるつもりもないようなのでこれから有り難く相談に乗ってもらうことにした。

「まあまあ、なんとかなるわよ」

　カイさんは姉御のように頼もしい笑みでそう言ってくれた。