8 / 16
【8】相合傘
しおりを挟む
翌日、私はちょっと一人で考えてみる事に決め、誰も連れずに王都の街中で買い物をすることに決めた。侯爵家の人間だと露見すると騒ぎになるので、お忍び用の簡素な衣服を着ている。それでもチラチラと視線が飛んでくるので、恐らく物腰などで貴族だとバレているのだろうと私は思う。何故なのかいつも気づかれてしまうのだ。
角を二つ曲がり、私は半地下にある古書店を目指した。
実はこの場所は、ひっそりとお父様に教えてもらったお店で、稀覯書がたくさん置いてあるのである。また、王宮の宝物庫や、王立図書館にも存在しない、召喚獣の古代文字の辞典まで置いてある。
明日の学院の講義では、クライに文字について直接質問しようと思っているが、その前の下準備は大切だ。それもあって、今日はここにやってきたのである。
魔方陣には召喚獣の古代文字を刻む。
昨日クライが持っていた本は、その一文一文に魔力が込められている――イメージとしては、魔方陣が本になったものである。この人間の王国にも、魔道書形態魔術というのは存在した歴史があるが、今は廃れている。その廃れた魔道書のいくつかも、このお店には残っている。
まずは何から探そうかと階段を下りていき、私は召喚獣の歴史の棚を見上げた。
そもそも、クライに関する知識も、私には圧倒的に足りない。
恋以前の問題だ。私はよく知らない人(召喚獣)に恋はできない。
求めているのは、優しさである。
自由恋愛なんて考えてみたこともなかったし、今更言われても困惑するしかないが――今後は少しは考えようと思う。そして、きちんと自分がヴォルフ様を好きだと断言できるようにするのだ。この気持ちが恋だと確信できるようになるために、私は、私を好きだと言ってくれた人々の話が聞きたい。
だが、気持ちを弄ぶのは申し訳ないので、明日にでも一人ずつに断らなければ。
けれど嫌いじゃない場合の断り文句……何が良いのだろう。
そう考えながら踏段をひとつ登り、『クラインディルヴェルトの歴史』という本を抜き取った。それがあんまりにも厚くて重かったものだから、私は体勢を崩し、台から落ちた。だが、覚悟した衝撃はなかった。誰かが抱きとめてくれたからだ。
見れば驚いた顔をしているミネロム先生がいた。
「イリス? 大丈夫か?」
「は、はい! ありがとうございます」
「良かった……――どうしてここに?」
「先生こそ」
「俺は召喚獣研究が専門だからな、参考文献探しによく来るんだ」
「私は父に教わって、時折魔方陣考察のための本を探しに参りますの」
「そうだったのか。熱心だな」
支えてもらい、私は立ち上がった。まだ心臓がドキドキしている。
受け止めてくれた先生は、いつもは痩身に思えるのだが、男らしく硬かった。
それから私は他の棚を、先生も他の通路を見に行き、特に示し合わせたわけではなかったのだが、たまたま帰りに入口で遭遇した。雨が降っていたからかもしれない。先生が空を見上げていたから、私がその隣に立ったのだ。
「イリス、傘を持ってきたか?」
「ええ。先生は、お忘れですか?」
「ああ」
「よろしければ、ご一緒にいかがです?」
「良いのか? 助かる。本が濡れると困るんだ」
こうして私達は、王都の乗合馬車の停車位置まで一緒に歩くことにした。相合傘である。これが相合傘かと、私は少し楽しくなった。なので思わず微笑すると、先生が首を傾げた。
「機嫌が良そさそうだが、目的の本があったのか?」
「いえ、相合傘が初めてなので」
「っ、げほ」
私の言葉に、なぜなのか先生が咳き込んだ。噎せている。
何度か咳をした後、先生が俯いた。
「大人をからかうな」
「――え?」
「なんでもない」
顔を上げた先生は、何故なのか真っ赤だった。雨に濡れたわけではないから、風邪ではないと思うが、咳もしていたし、少し気になる。元々風邪だった可能性を考えたのだ。私は少し背伸びをして、右手で先生の額に触れてみた。私の手の方が熱かった。
「!」
だが、先生がさらに真っ赤になった。耳まで真っ赤だ。私は首を傾げるしかない。
「先生?」
「……さっさと歩け。次の角を曲がれば広場だ」
「はい……?」
よく分からなかったが私は頷いて、足を速めた。
――轟音がして、目の前の壁が崩れたのは、その直後のことである。
雨の中に砂埃が舞う。違う――煙幕だ。
吸い込まないようにしなければと、腕で口を庇う。するとその時、背後に気配を感じた。咄嗟に振り返ると、巨大な鎌を振り上げた屈強な男が三人いた。
視線を戻すと、煙の向こうには、五人の人影が見える。
先生は? そう思った時、私の耳に声が入ってきた。
「クラインディルヴェルトを呼び出すための鍵言葉を言え! そうすれば命だけは見逃してやる」
私は目を瞠った。私が狙われているのだ。単なる物取りかと思ったが、違う。
焦燥感にかられた――その瞬間、ドサドサと何かが倒れていく音がした。
もう一度煙の方に振り返る。すると既に煙は晴れていて、その場に重なるように倒れている五人の男と、その男達を叩きのめしたらしい召喚獣の姿があった。巨大な一角獣である。
しかし先生の姿がない。私は残っている敵――鎌を持った人々に振り返った。
すると、一人は既に気絶していた。
残る二人の間では、先生が双剣を揮っていて、私が見ている前で、残りの二名も気絶し地に伏した。
早すぎて――気配がなさすぎて、私は気付かなかった。
先生が召喚獣を喚び出した事にも、その召喚獣と先生が敵を倒したことにも、ほぼ終わるまでの間、全く……。
「大丈夫か?」
「……」
そう問いかけられた瞬間、全身の緊張が解けて、私は倒れ込みそうになった。
先生が抱きとめてくれて、それから私の頬に触れた。
「クラインディルヴェルトはどうしたんだ?」
「家に置いてきました……」
「何を考えているんだ! しかもそんな軽装で護衛もつけずに! いつもの執事はどこだ?」
「家です」
「……――危険だ。お前は、ただでさえ今、国中の注目を集めている立場なんだ。こうやって狙われることがあっても当然過ぎる。俺には何も不思議は無かった。そうでなくともイリスのように若くて綺麗な女性は――……ああ、その、貴族のご令嬢なんだからもっと自分を大切に、きちんと守り抜け。危険が多いんだ、街は」
「申し訳ありません……」
「とにかく無事に済んで良かった。無事で……」
先生は、そう言うと、私を一度ぎゅっと抱きしめてから、立たせてくれた。
その暖かく大きな手に、私は胸の奥がトクンと熱くなった気がした。
「――送る」
「ありがとうございます」
こうして私は、先生に送ってもらい、帰宅した。
角を二つ曲がり、私は半地下にある古書店を目指した。
実はこの場所は、ひっそりとお父様に教えてもらったお店で、稀覯書がたくさん置いてあるのである。また、王宮の宝物庫や、王立図書館にも存在しない、召喚獣の古代文字の辞典まで置いてある。
明日の学院の講義では、クライに文字について直接質問しようと思っているが、その前の下準備は大切だ。それもあって、今日はここにやってきたのである。
魔方陣には召喚獣の古代文字を刻む。
昨日クライが持っていた本は、その一文一文に魔力が込められている――イメージとしては、魔方陣が本になったものである。この人間の王国にも、魔道書形態魔術というのは存在した歴史があるが、今は廃れている。その廃れた魔道書のいくつかも、このお店には残っている。
まずは何から探そうかと階段を下りていき、私は召喚獣の歴史の棚を見上げた。
そもそも、クライに関する知識も、私には圧倒的に足りない。
恋以前の問題だ。私はよく知らない人(召喚獣)に恋はできない。
求めているのは、優しさである。
自由恋愛なんて考えてみたこともなかったし、今更言われても困惑するしかないが――今後は少しは考えようと思う。そして、きちんと自分がヴォルフ様を好きだと断言できるようにするのだ。この気持ちが恋だと確信できるようになるために、私は、私を好きだと言ってくれた人々の話が聞きたい。
だが、気持ちを弄ぶのは申し訳ないので、明日にでも一人ずつに断らなければ。
けれど嫌いじゃない場合の断り文句……何が良いのだろう。
そう考えながら踏段をひとつ登り、『クラインディルヴェルトの歴史』という本を抜き取った。それがあんまりにも厚くて重かったものだから、私は体勢を崩し、台から落ちた。だが、覚悟した衝撃はなかった。誰かが抱きとめてくれたからだ。
見れば驚いた顔をしているミネロム先生がいた。
「イリス? 大丈夫か?」
「は、はい! ありがとうございます」
「良かった……――どうしてここに?」
「先生こそ」
「俺は召喚獣研究が専門だからな、参考文献探しによく来るんだ」
「私は父に教わって、時折魔方陣考察のための本を探しに参りますの」
「そうだったのか。熱心だな」
支えてもらい、私は立ち上がった。まだ心臓がドキドキしている。
受け止めてくれた先生は、いつもは痩身に思えるのだが、男らしく硬かった。
それから私は他の棚を、先生も他の通路を見に行き、特に示し合わせたわけではなかったのだが、たまたま帰りに入口で遭遇した。雨が降っていたからかもしれない。先生が空を見上げていたから、私がその隣に立ったのだ。
「イリス、傘を持ってきたか?」
「ええ。先生は、お忘れですか?」
「ああ」
「よろしければ、ご一緒にいかがです?」
「良いのか? 助かる。本が濡れると困るんだ」
こうして私達は、王都の乗合馬車の停車位置まで一緒に歩くことにした。相合傘である。これが相合傘かと、私は少し楽しくなった。なので思わず微笑すると、先生が首を傾げた。
「機嫌が良そさそうだが、目的の本があったのか?」
「いえ、相合傘が初めてなので」
「っ、げほ」
私の言葉に、なぜなのか先生が咳き込んだ。噎せている。
何度か咳をした後、先生が俯いた。
「大人をからかうな」
「――え?」
「なんでもない」
顔を上げた先生は、何故なのか真っ赤だった。雨に濡れたわけではないから、風邪ではないと思うが、咳もしていたし、少し気になる。元々風邪だった可能性を考えたのだ。私は少し背伸びをして、右手で先生の額に触れてみた。私の手の方が熱かった。
「!」
だが、先生がさらに真っ赤になった。耳まで真っ赤だ。私は首を傾げるしかない。
「先生?」
「……さっさと歩け。次の角を曲がれば広場だ」
「はい……?」
よく分からなかったが私は頷いて、足を速めた。
――轟音がして、目の前の壁が崩れたのは、その直後のことである。
雨の中に砂埃が舞う。違う――煙幕だ。
吸い込まないようにしなければと、腕で口を庇う。するとその時、背後に気配を感じた。咄嗟に振り返ると、巨大な鎌を振り上げた屈強な男が三人いた。
視線を戻すと、煙の向こうには、五人の人影が見える。
先生は? そう思った時、私の耳に声が入ってきた。
「クラインディルヴェルトを呼び出すための鍵言葉を言え! そうすれば命だけは見逃してやる」
私は目を瞠った。私が狙われているのだ。単なる物取りかと思ったが、違う。
焦燥感にかられた――その瞬間、ドサドサと何かが倒れていく音がした。
もう一度煙の方に振り返る。すると既に煙は晴れていて、その場に重なるように倒れている五人の男と、その男達を叩きのめしたらしい召喚獣の姿があった。巨大な一角獣である。
しかし先生の姿がない。私は残っている敵――鎌を持った人々に振り返った。
すると、一人は既に気絶していた。
残る二人の間では、先生が双剣を揮っていて、私が見ている前で、残りの二名も気絶し地に伏した。
早すぎて――気配がなさすぎて、私は気付かなかった。
先生が召喚獣を喚び出した事にも、その召喚獣と先生が敵を倒したことにも、ほぼ終わるまでの間、全く……。
「大丈夫か?」
「……」
そう問いかけられた瞬間、全身の緊張が解けて、私は倒れ込みそうになった。
先生が抱きとめてくれて、それから私の頬に触れた。
「クラインディルヴェルトはどうしたんだ?」
「家に置いてきました……」
「何を考えているんだ! しかもそんな軽装で護衛もつけずに! いつもの執事はどこだ?」
「家です」
「……――危険だ。お前は、ただでさえ今、国中の注目を集めている立場なんだ。こうやって狙われることがあっても当然過ぎる。俺には何も不思議は無かった。そうでなくともイリスのように若くて綺麗な女性は――……ああ、その、貴族のご令嬢なんだからもっと自分を大切に、きちんと守り抜け。危険が多いんだ、街は」
「申し訳ありません……」
「とにかく無事に済んで良かった。無事で……」
先生は、そう言うと、私を一度ぎゅっと抱きしめてから、立たせてくれた。
その暖かく大きな手に、私は胸の奥がトクンと熱くなった気がした。
「――送る」
「ありがとうございます」
こうして私は、先生に送ってもらい、帰宅した。
1
お気に入りに追加
267
あなたにおすすめの小説
政略結婚の約束すら守ってもらえませんでした。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
「すまない、やっぱり君の事は抱けない」初夜のベットの中で、恋焦がれた初恋の人にそう言われてしまいました。私の心は砕け散ってしまいました。初恋の人が妹を愛していると知った時、妹が死んでしまって、政略結婚でいいから結婚して欲しいと言われた時、そして今。三度もの痛手に私の心は耐えられませんでした。
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【完結】身を引いたつもりが逆効果でした
風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。
一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。
平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません!
というか、婚約者にされそうです!
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました
Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。
順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。
特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。
そんなアメリアに対し、オスカーは…
とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。
夫と親友が、私に隠れて抱き合っていました ~2人の幸せのため、黙って身を引こうと思います~
小倉みち
恋愛
元侯爵令嬢のティアナは、幼馴染のジェフリーの元へ嫁ぎ、穏やかな日々を過ごしていた。
激しい恋愛関係の末に結婚したというわけではなかったが、それでもお互いに思いやりを持っていた。
貴族にありがちで平凡な、だけど幸せな生活。
しかし、その幸せは約1年で終わりを告げることとなる。
ティアナとジェフリーがパーティに参加したある日のこと。
ジェフリーとはぐれてしまったティアナは、彼を探しに中庭へと向かう。
――そこで見たものは。
ジェフリーと自分の親友が、暗闇の中で抱き合っていた姿だった。
「……もう、この気持ちを抑えきれないわ」
「ティアナに悪いから」
「だけど、あなただってそうでしょう? 私、ずっと忘れられなかった」
そんな会話を聞いてしまったティアナは、頭が真っ白になった。
ショックだった。
ずっと信じてきた夫と親友の不貞。
しかし怒りより先に湧いてきたのは、彼らに幸せになってほしいという気持ち。
私さえいなければ。
私さえ身を引けば、私の大好きな2人はきっと幸せになれるはず。
ティアナは2人のため、黙って実家に帰ることにしたのだ。
だがお腹の中には既に、小さな命がいて――。
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる