上 下
33 / 40
第二章

33話

しおりを挟む
「出たわ!!」

ソランが水で馬車を囲む。
その大きく囲まれた馬車の向く方向へティエラが岩の壁を作る。
これは食い止めれたんじゃないか!!そう思った途端、馬車に重りがかかったように旧落下した。

「キャーーー!!」
レビア令嬢の怖がる声が外へ響く。
ソランの水圧では追いかけられるほどの水量が無いしティエラは岩が馬車と一緒に落下しないよう岩を砂に変えるのに精一杯だった。
"だめだ間に合わない!!"

と思った瞬間
風の圧で馬車が少し浮く形落下を防ぐことが出来た。
"速さには負けないって僕さっきいっただろ?忘れないで欲しいなあ"
"ふんっさすがだな。"
"今回ばかりはウィンが味方でよかったわ"

"今回ばかりってなんだよ~"

動きが止まった。もしかして呪術師は私たちが来たことに気がついてこの2人のことを見捨てた!?

「ティエラ!馬車のガラスを割って!!」 

"オーケー、ウィン、ある程度風圧で固定しておいてね"

"おまかせをっ" 

ガラスを割るとレビア令嬢がげっそりしながら早く出してと言わんばかりにふらつきながらなんとか窓の方へ顔を向けた。
そこへティエラが扉を開こうとするも扉はまだ呪術で開かなくなっているようで微動だにもせず、ティエラはロアンが縛られ気を失って転がっているのを確かめとりあえず窓から令嬢を抱き上げた。

"はあ。本当はこの女より先に侯爵子息を助けてあげたかったけど意識があるなら仕方ないわよね~"
レビア令嬢は抱き上げられたと共に気を失った。

"ティエラ!!"

ティエラがパッと振り向くと馬車がティエラと令嬢の方へ向き急発進しだした。

ティエラはレビアを下ろししゃがみこみ岩を盾に。
ウィンとソランは馬車に向かって風圧と水圧を掛けた。
途端に馬車はボロボロと崩れ始める。

"チッこのままじゃ中の子息を巻き込んでしまうぞ"

"どうする?もう1回ソランが水で囲んじゃう?"

"やってみるか!ウィン。頼むぞ"

"ああ"

お願い!!ロアンを助けて!!
ソランは先程よりも大きな水の玉を作りウィンの風で馬車を固定しながらソランの水の玉が馬車を囲んだ。

「いけた!?」

と思ったのも束の間…ウィンの風でなのかロアンが馬車の窓から飛び出し風に巻き込まれた。
「マズイわ!このままじゃロアンが!!ウィンの風ってあの中で緩められるの!?」

"やってみる。"
中の風がスっと落ち着きロアンは水中に入り込む。
ロアンはなんとか口元に気泡を作るが
"このまま気泡を口元に保つのは厳しい。急いで下へ下ろすぞ"

"だから言ったじゃない。ソランの力が強いのは凄いけど絶妙な調整がいつまでたっても下手くそなんだからもっと修行を積みなさいって。"

"不器用で悪かったな。"

"あっナーシャ見て!あそこに呪術師がいるわ!"

結界の中の木の後ろに呪術師がいた。
呪術師に向かって鋭い岩が走るが結界を刺さることすらしない…。
くろいフードを被っているが明らかにラベル先生だった。
やっぱり……ラベル先生が呪術師だったのね……。
聞いてはいたもののなんとなくあの優しい先生が悪さをするようにも見えず信じきれなかった。
「ラベル先生!!」

呪術師は一瞬ビクッとしながらもこちらを向くと先生の頃のようにニコッとはにかんだと思えばスっと後ろを向きコテージの方へ歩き出した。

ロアンを諦めた!?と思った瞬間。
ラベル先生が腕をスっと上げた。
ん?なんの合図?パッとロアンの方を向くと縛られたロアンが勢いをつけて水中から抜け出し結界の中に飛んで行った。

「ロアン!!!」

"だめよ!!結界を触っちゃ危ないわ"

「でも!!でもロアンが!!先生!!お願いいつもの先生に戻って!?お願いします先生!!ロアンは何も関係ないわ!!」

「ナーシャ……落ち着くんだ。まだ直ぐにボリスを召喚するとは限らないだろう」

「でも!でも……!」

「とりあえず…結界を抜ける方法を考えよう。今無闇に結界に触っても危険だろう。」

「結界なんてティエラやソランの力で破れないの!?」

"ああ。自然の力と呪術師の力はまた種類が違うからな…結界は特殊な力を使ってるから正直どこまで力を使うか分からない。そうなればナーシャの体にどれくらい負担がかかるかも読めないからな"

「そんな……」

"悪いな……。3日後あたりにテミニエルが来れる手筈になってたんだ。したら簡単に結界なんて割れるんだが…。まさかそれより早く呪術師達が動くなんて思いもしたかった。"

「ううん……ソランが悪い訳じゃないわ。誰もこんなに早く動きがあるなんて思いもしなかったもの…。テミニエル様は早めに来ることは出来ないの?」

"テミニエルは魔界に帰ってるから難しいだろう……"

「そんな……」

「ナーシャ、令嬢にもどういう状況か聞かないとな。とりあえずレビア嬢を宿に連れていこう」

「そうね…。レビア嬢も怪我をしてるから手当しないといけないわね……」

"ロアンが捕まったのはこの令嬢のせいでしょう?そんなこと気にかける必要も無いと思うけど?" 
ティエラはほんとに嫌いだと思ったら見境がない。
「けれど状況を聞くには令嬢に起きてもらうのが1番早いわ…。」
"レビア令嬢が話すとも思えないけど"
すこし拗ねたようにティエラが答える。
「ティエラ……そんな相手を助けてくれてありがとうね」

"時間もないし手前にいるから邪魔だったんだもの。とりあえず帰りましょ。ナーシャが私の上ね、その令嬢はソランが運んで!"


ソランはティエラに呆れたような顔をしながらいつもの事かのように黙ってティエラの言う通りに令嬢を背中に乗せ、みんなで宿に向かった。

もし最悪の場合……最短でも代償を清めるのに3日はかかる。
いつロアンに手を出されるかは分からないが3日後万が一呪術師が自ら結界を消せばロアンの身に何かが起こったということ。
そんなことは絶対にあってはいけない。
まだメイシーが召喚を放つための修行を終えたとも限らない。
3日後……必ず私たちが結界を破ってロアンを助けラベル先生とメイシーを捕まえるのよ。
私は頭にそう言い聞かせるしか無かった。、

お父様……まだ起きてるかな……。

「ルーク、ウィンとソランと先に令嬢を連れて宿に帰っておいてくれる?」

「ん?どうしたんだい?」

「うん。令嬢を起こすにはお父様を呼んだ方が早いかと思って」

「ああ。なるほど。分かった!じゃあ先に戻ってるね!気をつけて帰ってくるんだよ!」

「ありがとう」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

今度生まれ変わることがあれば・・・全て忘れて幸せになりたい。・・・なんて思うか!!

れもんぴーる
ファンタジー
冤罪をかけられ、家族にも婚約者にも裏切られたリュカ。 父に送り込まれた刺客に殺されてしまうが、なんと自分を陥れた兄と裏切った婚約者の一人息子として生まれ変わってしまう。5歳になり、前世の記憶を取り戻し自暴自棄になるノエルだったが、一人一人に復讐していくことを決めた。 メイドしてはまだまだなメイドちゃんがそんな悲しみを背負ったノエルの心を支えてくれます。 復讐物を書きたかったのですが、生ぬるかったかもしれません。色々突っ込みどころはありますが、おおらかな気持ちで読んでくださると嬉しいです(*´▽`*) *なろうにも投稿しています

冤罪で山に追放された令嬢ですが、逞しく生きてます

里見知美
ファンタジー
王太子に呪いをかけたと断罪され、神の山と恐れられるセントポリオンに追放された公爵令嬢エリザベス。その姿は老婆のように皺だらけで、魔女のように醜い顔をしているという。 だが実は、誰にも言えない理由があり…。 ※もともとなろう様でも投稿していた作品ですが、手を加えちょっと長めの話になりました。作者としては抑えた内容になってるつもりですが、流血ありなので、ちょっとエグいかも。恋愛かファンタジーか迷ったんですがひとまず、ファンタジーにしてあります。 全28話で完結。

魔王討伐から凱旋した幼馴染みの勇者に捨てられた

海野宵人
恋愛
魔王を倒した勇者ライナスは、わたしの幼馴染みだ。 共に将来を誓い合った仲でもある。 確かにそのはずだった、のだけれど────。 二年近くに及ぶ魔王討伐から凱旋してきたライナスは、私の知っている彼とはまったくの別人になってしまっていた。 魔王討伐に聖女として参加していらした王女さまと旅の間に仲を深め、この度めでたく結婚することになったのだと言う。 本人の口から聞いたので、間違いない。 こんなことになるのじゃないかと思って、前から少しずつ準備しておいてよかった。 急がなくちゃ。旅支度を。 ────これは、最後の勇者ライナスと私による本当の魔王討伐の物語。 ※序盤のヒーローはかなり情けないやつですが、それなりに成長するので見捨てないでやってください。 本編14話+番外12話+魔王城編12話+帰還編54話。

【完結】護衛騎士と令嬢の恋物語は美しい・・・傍から見ている分には

月白ヤトヒコ
恋愛
没落寸前の伯爵令嬢が、成金商人に金で買われるように望まぬ婚約させられ、悲嘆に暮れていたとき、商人が雇った護衛騎士と許されない恋に落ちた。 令嬢は屋敷のみんなに応援され、ある日恋する護衛騎士がさる高位貴族の息子だと判明した。 愛で結ばれた令嬢と護衛騎士は、商人に婚約を解消してほしいと告げ―――― 婚約は解消となった。 物語のような展開。されど、物語のようにめでたしめでたしとはならなかった話。 視点は、成金の商人視点。 設定はふわっと。

(完)聖女様は頑張らない

青空一夏
ファンタジー
私は大聖女様だった。歴史上最強の聖女だった私はそのあまりに強すぎる力から、悪魔? 魔女?と疑われ追放された。 それも命を救ってやったカール王太子の命令により追放されたのだ。あの恩知らずめ! 侯爵令嬢の色香に負けやがって。本物の聖女より偽物美女の侯爵令嬢を選びやがった。 私は逃亡中に足をすべらせ死んだ? と思ったら聖女認定の最初の日に巻き戻っていた!! もう全力でこの国の為になんか働くもんか! 異世界ゆるふわ設定ご都合主義ファンタジー。よくあるパターンの聖女もの。ラブコメ要素ありです。楽しく笑えるお話です。(多分😅)

【完結】神様に嫌われた神官でしたが、高位神に愛されました

土広真丘
ファンタジー
神と交信する力を持つ者が生まれる国、ミレニアム帝国。 神官としての力が弱いアマーリエは、両親から疎まれていた。 追い討ちをかけるように神にも拒絶され、両親は妹のみを溺愛し、妹の婚約者には無能と罵倒される日々。 居場所も立場もない中、アマーリエが出会ったのは、紅蓮の炎を操る青年だった。 小説家になろう、カクヨムでも公開していますが、一部内容が異なります。

【完結】王子と結婚するには本人も家族も覚悟が必要です

宇水涼麻
ファンタジー
王城の素晴らしい庭園でお茶をする五人。 若い二人と壮年のおデブ紳士と気品あふれる夫妻は、若い二人の未来について話している。 若い二人のうち一人は王子、一人は男爵令嬢である。 王子に見初められた男爵令嬢はこれから王子妃になるべく勉強していくことになる。 そして、男爵一家は王子妃の家族として振る舞えるようにならなくてはならない。 これまでそのような行動をしてこなかった男爵家の人たちでもできるものなのだろうか。 国王陛下夫妻と王宮総務局が総力を挙げて協力していく。 男爵令嬢の教育はいかに! 中世ヨーロッパ風のお話です。

【番外編】貴族令嬢に生まれたからには念願のだらだらニート生活したい。

譚音アルン
ファンタジー
『貴族令嬢に生まれたからには念願のだらだらニート生活したい。』の番外編です。 本編にくっつけるとスクロールが大変そうなので別にしました。

処理中です...