25 / 40
第二章
25話
しおりを挟む急いで屋敷に戻り、昼食を家族で囲った。
部屋に戻るとソランがテミニエル様からいつも受け取ってくれているオーナー報酬から200万デル程使うことを決めてティエラと部屋を出た。
壺を出せるようになりたいけれど今はジェノシーのことも心配だ。
ルークは既に陣を書いて座ってリーツを高めることに集中していたけれど私たちに気がついたのか急に帰ったにも関わらずそっと振り向き「おかえり」と笑顔で迎えてくれた。
「ごめんねルーク!!お母さまに黙って来てるからどうしても食事はみんなで取らないといけないの。」
「この間もそうだったけど…ナーシャはレアロナ夫人と何かあったの?いや。話せ無いならいいけど昔は夫人のこと大好きで親子仲も良くて何でも話してたイメージだったから……」
「……そうね。色々ありすぎたくらいよ…。」
私は大まかに妹が産まれてからお義父さまから暴力を振るわれていたこと、暴力を振るわれていた理由がそのボリスと契約しようとしているメイドが原因だったとティエラとソランのおかげで気づけたこと。
お義父さまとの仲はぎこちないものの少し回復してきているけれど、お母様はわたしが暴力を振るわれていることを知っていたこと。最近はお母様が私を外に出すのも嫌がっていること。全てを話した。
「メイドの話はウィンから聞いていたけど…そんな……そんなことになっていたのか……辛かったよな」
私は自分のことを話していて少し気まずくなり下を向こうとするとフワッと身体が包み込まれた。
力強いけれど、優しい温もりを感じる。
「ふふ。でも今は面白いくらいにお父様は人が変わったように子供の頃一緒に過ごした頃のようなのよ。ただ、やっぱり今まで知ってたこともそうだし……異常に心配するお母さまに……少しどう接すればいいか悩んでるの……」
「ナーシャは夫人のこと大好きだったもんね…。けどナーシャはナーシャの思うままに動けばいいんだよ。心配してるからって全て我慢する必要はないし。だから公爵も外出することに反対していないんだろう?それにその……公爵はきっと……」
「きっと?」
「呪術をかけられてたんじゃないかな。と思うんだ。…メイドといる呪術師とか怪しいんじゃないかな。それなら最終手段にボリスと契約したのも……」
「呪術に……確かにそれなら辻褄が合うかもしれない……いままでと全然違うもの。それなら……お母様も呪術に掛けられてるのかもしれないわ。絶対呪術師を問い詰めてやらないと」
「うん!その意気だ!まずは壺を見つけないとね。 」
「頑張ってみる!」
私は目を閉じ、ソランとティエラの太い光を感じる。
その奥に……壺は……見つからない。
どうして?いったいどこにあるの?
「違う!!」
「びっくりした。どうしたの?」
「ごめんね、私、ジェノシーが心配で……でも色々調べが着くまで何も出来ないのも嫌だから…たくさんお買い物したいの」
「街のみんなのためにお買い物……か」
「そう!流石にお金を配るのはまた違うかなって……病人達には……お義父様を今度呼んでみようかしら。お買い物してからだとスッキリして壺を見つけられるかも」
「確かに気分がスッキリしてる時の方がいいかもしれないね。分かった。じゃあ行こう。」
「ええ!ありがとう」
「ううん。ジェノシーが心配なのは僕も同じだから。でもあまり時間も無いから明日はウィン1人に頼もう」
「~なんで僕が1人で……ティエラもいるじゃん?」
「ティエラはリーツを感じる役だよ」
「……それを言うなら僕が初めにナーシャのリーツに気がついたんだよー」
「それは知らなかったなあ。なあティエラ」
「ええ。私も知らなかったわ~」
「ふふふふふ。2人ともウィンに意地悪したら可哀想よ」
「ナ~シャ~。」
「とりあえず行きましょう。最後は叔父様の所へ行きたいの……」
3人は頷いてくれて二手に分かれてたくさん買い物をすることになった。
食べ物を中心に購入したものは配り歩いた。
街の人達はみんな喜んでくれて少し安心した。
だけどこうやって買い物をしても数日暮らしが楽になるだけで解決策には向かうことは無い。
「ナーシャ。こっちは終わったよ。買い物しながらそろそろその叔父様のところへ向かおうか」
「ええ。そうね」
叔父様が住んでいた屋敷へ向かう中、どんどん人気が無くなっていく。
昔は……ここも馬車が走っていたりドレスショップや宝石店などもあったはずなのにお店は閉まっていて物静かだ。
「あったわ。確かここ……よね?」
「ああ。僕はうろ覚えだけどここだったよ」
草木の手入れもされておらず、誰もいないために凄く暗い雰囲気に見える。
屋敷の柵は頑丈に閉められ、メイド1人いない。
これは……人が住んでるかすら分からず訪問なんて出来なさそうな状態だ。
「これは……きっと会うのは難しいね…そもそも居るのかすら分からない…」
「ええ……どうしよう。誰に工場を渡したのか調べたかったのに。」
"ナーシャ。今出来ることは他にもあるわ。出来ることからやりましょう。私を何の精霊だと思ってるの♪"
「そう…よね。うん!行きましょう!」
ぶどう園に向かったものの……木は元気も無くなり瀕死状態、
小麦畑には芽さえ生えることもない状態だった。
"…土に少し海水が加えられてるわねぇ"
「どういうこと!?」
"目の前が海って訳では無いし地中から入っていったわけでもないわ"
「……誰かが故意でかけたってこと?」
「可能性はあるわ。それにぶどうの方は海水に少し活性剤が混ざってるわね」
「もしかして…わざとブドウの木を枯らして…ぶどう園や小麦畑まで吸収する気で……?」
"だったらものすごーく悪どいわよね"
「ナーシャの叔父様のこともわざとカジノで騙して奪うところまで奪い尽くしたんだな。」
「元からぶどう園やワイン丸ごと奪うつもりで……。」
「ってことはぶどう園も犯人はカジノに誘った奴で決まりだな」
「絶対捕まえなきゃ!ジェノシーは私の故郷だもの」
「そうだね。リーツを高める修行と同時進行は大変だろうけどジェノシーがこんな状態のなか集中することは出来ないよな。」
20
お気に入りに追加
109
あなたにおすすめの小説
今度生まれ変わることがあれば・・・全て忘れて幸せになりたい。・・・なんて思うか!!
れもんぴーる
ファンタジー
冤罪をかけられ、家族にも婚約者にも裏切られたリュカ。
父に送り込まれた刺客に殺されてしまうが、なんと自分を陥れた兄と裏切った婚約者の一人息子として生まれ変わってしまう。5歳になり、前世の記憶を取り戻し自暴自棄になるノエルだったが、一人一人に復讐していくことを決めた。
メイドしてはまだまだなメイドちゃんがそんな悲しみを背負ったノエルの心を支えてくれます。
復讐物を書きたかったのですが、生ぬるかったかもしれません。色々突っ込みどころはありますが、おおらかな気持ちで読んでくださると嬉しいです(*´▽`*)
*なろうにも投稿しています
冤罪で山に追放された令嬢ですが、逞しく生きてます
里見知美
ファンタジー
王太子に呪いをかけたと断罪され、神の山と恐れられるセントポリオンに追放された公爵令嬢エリザベス。その姿は老婆のように皺だらけで、魔女のように醜い顔をしているという。
だが実は、誰にも言えない理由があり…。
※もともとなろう様でも投稿していた作品ですが、手を加えちょっと長めの話になりました。作者としては抑えた内容になってるつもりですが、流血ありなので、ちょっとエグいかも。恋愛かファンタジーか迷ったんですがひとまず、ファンタジーにしてあります。
全28話で完結。
魔王討伐から凱旋した幼馴染みの勇者に捨てられた
海野宵人
恋愛
魔王を倒した勇者ライナスは、わたしの幼馴染みだ。
共に将来を誓い合った仲でもある。
確かにそのはずだった、のだけれど────。
二年近くに及ぶ魔王討伐から凱旋してきたライナスは、私の知っている彼とはまったくの別人になってしまっていた。
魔王討伐に聖女として参加していらした王女さまと旅の間に仲を深め、この度めでたく結婚することになったのだと言う。
本人の口から聞いたので、間違いない。
こんなことになるのじゃないかと思って、前から少しずつ準備しておいてよかった。
急がなくちゃ。旅支度を。
────これは、最後の勇者ライナスと私による本当の魔王討伐の物語。
※序盤のヒーローはかなり情けないやつですが、それなりに成長するので見捨てないでやってください。
本編14話+番外12話+魔王城編12話+帰還編54話。
【完結】緑の手を持つ花屋の私と、茶色の手を持つ騎士団長
五城楼スケ(デコスケ)
ファンタジー
〜花が良く育つので「緑の手」だと思っていたら「癒しの手」だったようです〜
王都の隅っこで両親から受け継いだ花屋「ブルーメ」を経営するアンネリーエ。
彼女のお店で売っている花は、色鮮やかで花持ちが良いと評判だ。
自分で花を育て、売っているアンネリーエの店に、ある日イケメンの騎士が現れる。
アンネリーエの作る花束を気に入ったイケメン騎士は、一週間に一度花束を買いに来るようになって──?
どうやらアンネリーエが育てている花は、普通の花と違うらしい。
イケメン騎士が買っていく花束を切っ掛けに、アンネリーエの隠されていた力が明かされる、異世界お仕事ファンタジーです。
*HOTランキング1位、エールに感想有難うございました!とても励みになっています!
※花の名前にルビで解説入れてみました。読みやすくなっていたら良いのですが。(;´Д`)
話の最後にも花の名前の解説を入れてますが、間違ってる可能性大です。
雰囲気を味わってもらえたら嬉しいです。
※完結しました。全41話。
お読みいただいた皆様に感謝です!(人´∀`).☆.。.:*・゚
【完結】護衛騎士と令嬢の恋物語は美しい・・・傍から見ている分には
月白ヤトヒコ
恋愛
没落寸前の伯爵令嬢が、成金商人に金で買われるように望まぬ婚約させられ、悲嘆に暮れていたとき、商人が雇った護衛騎士と許されない恋に落ちた。
令嬢は屋敷のみんなに応援され、ある日恋する護衛騎士がさる高位貴族の息子だと判明した。
愛で結ばれた令嬢と護衛騎士は、商人に婚約を解消してほしいと告げ――――
婚約は解消となった。
物語のような展開。されど、物語のようにめでたしめでたしとはならなかった話。
視点は、成金の商人視点。
設定はふわっと。
(完)聖女様は頑張らない
青空一夏
ファンタジー
私は大聖女様だった。歴史上最強の聖女だった私はそのあまりに強すぎる力から、悪魔? 魔女?と疑われ追放された。
それも命を救ってやったカール王太子の命令により追放されたのだ。あの恩知らずめ! 侯爵令嬢の色香に負けやがって。本物の聖女より偽物美女の侯爵令嬢を選びやがった。
私は逃亡中に足をすべらせ死んだ? と思ったら聖女認定の最初の日に巻き戻っていた!!
もう全力でこの国の為になんか働くもんか!
異世界ゆるふわ設定ご都合主義ファンタジー。よくあるパターンの聖女もの。ラブコメ要素ありです。楽しく笑えるお話です。(多分😅)
姫騎士様と二人旅、何も起きないはずもなく……
踊りまんぼう
ファンタジー
主人公であるセイは異世界転生者であるが、地味な生活を送っていた。 そんな中、昔パーティを組んだことのある仲間に誘われてとある依頼に参加したのだが……。 *表題の二人旅は第09話からです
(カクヨム、小説家になろうでも公開中です)
【完結】神様に嫌われた神官でしたが、高位神に愛されました
土広真丘
ファンタジー
神と交信する力を持つ者が生まれる国、ミレニアム帝国。
神官としての力が弱いアマーリエは、両親から疎まれていた。
追い討ちをかけるように神にも拒絶され、両親は妹のみを溺愛し、妹の婚約者には無能と罵倒される日々。
居場所も立場もない中、アマーリエが出会ったのは、紅蓮の炎を操る青年だった。
小説家になろう、カクヨムでも公開していますが、一部内容が異なります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる