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胸が
締め付けられる
耐え切れず
トイレに
駆け込み
嘔吐した
背中を
摩っていた聡美が
水で濡らした
ハンドタオルを
差し出し
「大丈夫?」
口元を
タオルで 隠し
頷きながら
顔を 上げると
込み上げる
嫌悪感に
全身の血の気が
一気に 引き
脳貧血を 起こした
覚束ない
足取りで
段差のある
畳みに
腰を 降ろす
寒気立ち
身震いする体に
ベッドから
引きずり落とした
掛け布団を
巻き付け
「少し 横になる?」
心配そうに
目の前に
屈む聡美の腕を
無意識に
掴んだ
「……どうしたの?」
「……聡美
…根本は……俺の為に
……自殺した」
ゆっくりと
横に座る聡美が
眉を寄せ
「…どうして?」
「最後のメールを
覚えてるか」
「…根本の画像?」
「依頼人は
俺が 根本を
知らないと思っている」
「…写真あるじゃない」
「写真は 偶然だ
偶然 見つけ出せた
根本部屋には
証拠となる書類も
根本の身元を
証明する物は
すべて 処分されていた」
「……確か…
犯人の家と
書いてあったわね」
「聡美が 言った
『賞品は 根本が
受け取るもの』
だったとすれば…」
「……すれば?」
「自殺する理由が
見つからない」
「……そうね
もし仮に 根本が
共犯だとしたら
多村さんが 捕まれば
賞品を貰えたでしょうね
……ちょっと待って
多村さんは 三日間
逃げ切ればいいはずよ
そうでしょ?」
「それは 有り得ない
最初から 俺は
無実の罪で 犯罪者に
される仕組みに
なっていたらしい
こうして逃亡している
事実も ある」
「最初から
仕組まれていたと?」
「三日間だけなら…
そう誰もが 思う
…俺も そうだった
だが 逃亡している
たった三日間の間で
確実に [容疑者]は
確証のある[犯人]に
すり替えられるだろう」
「…そんな 酷すぎる」
「だが 誤算が 生じた
根本の自殺で
[容疑者]だった
【多村雅一】が
亡くなってしまった
身代わり容疑者として
逃亡している俺の存在は
不必要になる
…むしろ 邪魔な存在に
なっただろう
警察に俺が名乗り出れば
根本の素性も
明らかになる
そこで 慌てた依頼人が
報酬に 賞品を付け
【根本 久雄】の名前を
俺に 宛てがった訳だ」
膝の上に
肘を立て
顎を乗せている
聡美の沈黙が
否定しがたい事実に
思える
「…それで
根本の自殺と
どう繋がるの?」
目を合わせずに
呟く聡美が
頭を抱え
うなだれた
「……根本は
テレビで 殺人事件を
知ったはずだ
ターゲットだった
【栗原 智子】が
殺害された
相当 焦っただろう」
「…そこに…
【多村雅一】の名前と
写真が 映ったのね
…根本に そっくりな
赤の他人の顔写真が」
「……似ていても
本人なら 解る
自分では ない事が
メールに添付された
根本の画像も
着ている服装で
すぐに 解った」
込み上げる
感情のまま
涙が流れ落ち
息を飲みながら
続けた
「……根本は
嵌められた事実と
罪悪感に
襲われただろう」
俺の為に
【死】を
選択したのだから
「多村さんのせいじゃ
ないわよ」
薄い掛け布団の上から
しがみつく聡美が
懸命に 言葉を
繰り返す
「…根本は
根本自身を証明する物を
すべて 依頼人に
抑えられている
マンションに
置かれていると
メールに記載して
あっただろ
……根本は
俺の名前しか
知らない
だから【多村雅一】の
名刺か何か
わからないが
俺の潔白を 晴らす為に
【多村雅一】として
自殺したんだろう」
「……なら
根本が 警察に
出頭すれば
いいだけじゃない
何も 自殺しなくても」
しがみつく聡美を
抱き寄せ
頭を 振り
「根本は いい奴だ
出頭すれば
依頼人の名前を
告げなければ
ならない
もし それが
知り合いならば……」
腕の中で
涙を噛み締める
聡美が 答えた
「罪を背負って
……自殺する可能性は
…あるわね」
締め付けられる
耐え切れず
トイレに
駆け込み
嘔吐した
背中を
摩っていた聡美が
水で濡らした
ハンドタオルを
差し出し
「大丈夫?」
口元を
タオルで 隠し
頷きながら
顔を 上げると
込み上げる
嫌悪感に
全身の血の気が
一気に 引き
脳貧血を 起こした
覚束ない
足取りで
段差のある
畳みに
腰を 降ろす
寒気立ち
身震いする体に
ベッドから
引きずり落とした
掛け布団を
巻き付け
「少し 横になる?」
心配そうに
目の前に
屈む聡美の腕を
無意識に
掴んだ
「……どうしたの?」
「……聡美
…根本は……俺の為に
……自殺した」
ゆっくりと
横に座る聡美が
眉を寄せ
「…どうして?」
「最後のメールを
覚えてるか」
「…根本の画像?」
「依頼人は
俺が 根本を
知らないと思っている」
「…写真あるじゃない」
「写真は 偶然だ
偶然 見つけ出せた
根本部屋には
証拠となる書類も
根本の身元を
証明する物は
すべて 処分されていた」
「……確か…
犯人の家と
書いてあったわね」
「聡美が 言った
『賞品は 根本が
受け取るもの』
だったとすれば…」
「……すれば?」
「自殺する理由が
見つからない」
「……そうね
もし仮に 根本が
共犯だとしたら
多村さんが 捕まれば
賞品を貰えたでしょうね
……ちょっと待って
多村さんは 三日間
逃げ切ればいいはずよ
そうでしょ?」
「それは 有り得ない
最初から 俺は
無実の罪で 犯罪者に
される仕組みに
なっていたらしい
こうして逃亡している
事実も ある」
「最初から
仕組まれていたと?」
「三日間だけなら…
そう誰もが 思う
…俺も そうだった
だが 逃亡している
たった三日間の間で
確実に [容疑者]は
確証のある[犯人]に
すり替えられるだろう」
「…そんな 酷すぎる」
「だが 誤算が 生じた
根本の自殺で
[容疑者]だった
【多村雅一】が
亡くなってしまった
身代わり容疑者として
逃亡している俺の存在は
不必要になる
…むしろ 邪魔な存在に
なっただろう
警察に俺が名乗り出れば
根本の素性も
明らかになる
そこで 慌てた依頼人が
報酬に 賞品を付け
【根本 久雄】の名前を
俺に 宛てがった訳だ」
膝の上に
肘を立て
顎を乗せている
聡美の沈黙が
否定しがたい事実に
思える
「…それで
根本の自殺と
どう繋がるの?」
目を合わせずに
呟く聡美が
頭を抱え
うなだれた
「……根本は
テレビで 殺人事件を
知ったはずだ
ターゲットだった
【栗原 智子】が
殺害された
相当 焦っただろう」
「…そこに…
【多村雅一】の名前と
写真が 映ったのね
…根本に そっくりな
赤の他人の顔写真が」
「……似ていても
本人なら 解る
自分では ない事が
メールに添付された
根本の画像も
着ている服装で
すぐに 解った」
込み上げる
感情のまま
涙が流れ落ち
息を飲みながら
続けた
「……根本は
嵌められた事実と
罪悪感に
襲われただろう」
俺の為に
【死】を
選択したのだから
「多村さんのせいじゃ
ないわよ」
薄い掛け布団の上から
しがみつく聡美が
懸命に 言葉を
繰り返す
「…根本は
根本自身を証明する物を
すべて 依頼人に
抑えられている
マンションに
置かれていると
メールに記載して
あっただろ
……根本は
俺の名前しか
知らない
だから【多村雅一】の
名刺か何か
わからないが
俺の潔白を 晴らす為に
【多村雅一】として
自殺したんだろう」
「……なら
根本が 警察に
出頭すれば
いいだけじゃない
何も 自殺しなくても」
しがみつく聡美を
抱き寄せ
頭を 振り
「根本は いい奴だ
出頭すれば
依頼人の名前を
告げなければ
ならない
もし それが
知り合いならば……」
腕の中で
涙を噛み締める
聡美が 答えた
「罪を背負って
……自殺する可能性は
…あるわね」
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