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21話 ゴブリンクイーン

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 結局その日一日だらりと部屋で過ごした僕達は、今日くらいは、と夜ものんびりする事にして、色々と話をする事にした。


「で、だ。僕達はテストが始まってから上手くやってきた、と思う。素敵な寝床も早々に確保したし、お金もアイテムも序盤にしてはそれなりに手に入れたから、この部屋を維持するお金にも当分の間、というか一年や二年はよっぽど散財しない限り困らない。ご飯も最低限はスキルで出せるし、素材ボックスと料理スキルもあるしね。」
「そうだねっ。」
「だから、冒険者としての活動もしたい気はするけれど、それは本番に取っておいて釣りをしたり色々楽しんでいこうではありませんか。」
「!!賛成っ!」


 いえーすっ、と手を突き上げるバーニィをゴブリンクイーンが呆れ顔で見たかと思うと、僕の方に向き直った。


「主、嫁はもうちょっとイロイロ鍛えた方がイイサネ。」
「んなっ」
「折角の槍技くらい覚えロ。今のままジャ主の前には盾として立てないサネ。」
「うぐぐっ…!」


 バーニィは少し気にしてたのだろうけど、実際僕がバーニィをダウンさせた後に色々と作ってた事でまた差が拡がってたりする訳で。まぁ、釣りをしてもレベルは上がるから、お弁当の準備やら何やらを含めてバーニィにお願いして、僕は釣りをしているバーニィの隣でのんびりする、とかでレベルは何とかならないだろうか。


「槍なら、あたいが少しは教えられるさね。」
「それがいいか、のんびりもするけど、バーニィとクイーンの訓練もしよう。」
「わかったっ。」
「…主、ソロソロ名前決めてほしいサネ?」
「あ。」


 クイーンだのゴブリンクイーンだのって、あくまで種族やクラスであって、名前じゃないものな。ずっとドラゴニュート、って言われる様なものだし。よし、名前っと。
 僕はシステムでサーバントの情報を引き出すと、名前の所にフォーカスする。…TAでも使役しているペットとかの名前は変更可能だったからなぁ、と思ったのだけれど、そもそも名前のところは空欄になっていた。ごめん。
 名前、名前かぁ。ゴブ子とか言ったらさすがに攻撃される気がする。据わりがいい名前。すわり…。


「スワリナ、でどうかな。」
「あたいの名前は、スワリナ。」



サーバーで初めて、サーバントに命名しネームドモンスターを生み出しました。報酬としてSP5が追加されます。
システムメッセージ:グローバル:ココット・ジェリーがサーバーで初めてネームドモンスターを生み出しました。


「え、また何気ない事で。」
「…あれ、あたい、強くなった気がするさね?」
「言葉が滑らかになったっ。」
「おお。」


 単純というかある意味ゴブ子と変わりのない命名をしたのに喜んでいるスワリナに心の中にゴメンと謝りつつも、嬉しそうに手をグーパーしたりしているスワリナを見て、まぁ、良かったのかな、と無理矢理納得する。しかし、ネームドモンスターともなれば実力も高くなるのだろう。そういえば、マトモにステータスやら何やらを確認していなかったよな、とスワリナのステータスを開く。


==========
スワリナ
ゴブリンクイーン(特殊個体)
Lv 40

HP 7,420
MP 420
ST 3,710

STA 180
STR 220
AGI 154
DEX 154
INT 10
WIS 10
LUK 30
CHA 15

スキル
SP 190

エルフ・ドワーフ・ハーフリング・ヒューマン・ドラグーン共通語、オーク・ゴブリン・トロール・オーガ共通語、剣術(50)、槍術(50)、格闘術(50)、闇魔法(50)

==========


 HPは流石としか言いようが無いというか。人よりもモンスターの方が基礎的なステータスが高いのがよくわかる、というかバーニィのレベルを順当に上げていくとこんな感じになるんだろうか、という感じ。というかあまりに強くないかなぁ。まぁ、プレイヤー側は寄ってたかってタコ殴りにするから、モンスターの方がステータスが高くなるのはよくある話だけれど。それとスキル…。数は少ないけど、スキル値は高い。ってポイントがあるのか。…これは指定出来たりするのかな。
 自分のスキルポイントを振る時の様にSPを意識してみると、取得可能であろうスキルの一覧が表示される。…流石にゴブリンだからか生産系は全く無し。モンスター専用っぽい何だろう、特殊技があったりするのがプレイヤー側との大きな違いなんだろうね。


「スワリナ、スキルポイントがあるんだけど、何か欲しいスキルとかある?」
「スキルポイント?」
「ああ、特殊技とか、新しいスキルを身に付ける為のポイントの事だよ。プレイヤーの場合は釣りとか料理とかスキルが無くてもやってるうちにスキルを覚える事もあるけど、スワリナはどういう風になってるかわからないからね。」
「…あたい、主のおすすめを聞きたいさね。」


 上目遣いでくっついて来るスワリナの頭を撫でつつ、僕はうーん、と考える。…まぁ、僕と組む事を考えるなら前衛だよなぁ。スワリナ、というかゴブリン自体は細身で力が無いイメージだけど、実際にはSTR筋力が二百を超えてきているし、STA体力も多いから前衛向けだしね。…とすると、今は剣、槍、格闘、闇魔法と四種類の攻撃方法があるとはいえ、MPの問題で闇魔法はどちらかというと補助というか牽制向けというか、メインの攻撃としては使い道がない、と。それにゴブリンキング戦で出た短槍はバーニィに渡るから、槍は現物が無い。…僕やバーニィの初期装備は破壊してしまう以外、その辺に捨てたり誰かに譲渡する事が出来ないからね。とすると残るのは格闘と剣だけれど、間合いを考えれば剣の方がいいかな。ゴブリンキングのドロップ品のアイシクル・エッジもあるしね。
 それを踏まえて考えれば、防御系のスキルに盾、範囲攻撃辺りがあればいけるのかなぁ。リストには女王の咆哮クイーンズ・ロアーという範囲攻撃にノックバックと三秒スタンが乗ってくるものや、女王の盾クイーンズ・イージスというグループ、レイドメンバーに一定数の攻撃を無効化するシールドを展開するスキルなんかがある。それに普通に盾スキルや、機動補助系のスキルなんかが足せれば充分というか。
 つらつらと、お勧めかなぁと思う様なスキルを言っていく。まぁ、何かガチで倒したいモンスターがいるとか効率が一番とかそういうつもりは一切ないのだけど、マジックユーザーになるのは無理なのだけは伝えておく。だってINTとWISがネームドモンスターになったのにやっと二桁で、一般人並みだから。


「…主?」
「ステータスに差があるから、どうせなら良いところを伸ばそうって事だよ?」
「そうさね。」


 ふー、危ない。何が、とかは聞いてはいけない。スワリナは真面目なのかそれとも考えるのが面倒だったのか、僕がお勧めしたスキルを全部取る事にしたらしい。それでもスキルポイントはかなり余るというか、固有っぽいやつは基本的にほとんどポイントを消費しないから、もっと色々と詰め込んであげたほうが良いのだろうか。戦闘系の技とか…あ、アイテムボックスは一応リストにはあるな。一応(中)が良いとの事でそれも取得する。それでもポイントは大幅に余るから、種族やモンスター固有っぽいやつで取ってないものを軒並み押さえ、たくさん余ったポイントは将来レベルが上がったりした時に取れるものが増えたりした時のために取っておく事にした。
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