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6話 街への移動

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「で、チュートリアル終わってステータスはどんな感じになったんだっ? 確か経験値補正があるんだったよなっ?」
「こんなものかな。」

==========
ココット・ジェリー
ドラグーン
Lv 8

HP 136
MP 340
ST 68

STA 8
STR 8
AGI 8
DEX 36
INT 20
WIS 20
LUK 35
CHA 15

スキル
SP 17
経験値補正+200%、スキル上限突破、アイテムボックス特大、エルフ・ドワーフ・ハーフリング・ヒューマン・ドラグーン共通語、素材消費軽減(大)、神の血肉、初級素材箱、初級生産設備室、魔力消費軽減(中)、範囲拡大(魔法)、威力拡大(魔法)(中)、鍛冶(5)、木工(2)、裁縫(2)、革細工(2)、宝石細工(3)、錬金術(3)、料理(3)、建築(2)、付与術(4)、剣術(2)、斧術(2)、棍術(2)、槍術(2)、弓術(3)、格闘術(3)、盾術(3)、火魔法(2)、水魔法(2)、風魔法(2)、土魔法(3)、光魔法(2)、闇魔法(2)、召喚魔法(2)、伐採(2)、採掘(2)、植物採集(2)、サルベージ(2)、釣り(13)、歌唱(2)

所持金 15
==========


「もうレベル八なのかよっ。経験値補正恐るべしだなっ。…レベルキャップまですぐ行っちゃうんじゃないのかっ?」
「三倍のスピードでレベルが上がるって事だしねえ。でもレベルばかり上がっても、楽しめないし、その辺ベリウスはどういうつもりでこんなスキルを特典で付けたのかな。」


 うーん、と二人で歩きながら考える。一応、最寄りの街までの間にはちゃんと道が整備されている。道の周りにはモンスター除けがされていて、ゼロという訳でもないけれど道と道の間をショートカットとかしてフィールドを通るよりもモンスターが出にくい事になっている。…イベントなんかでNPCが待ってたりとか、襲撃してきたりってのはお約束だけど、そういった事が無ければのんびり歩いていても何も問題がない。既に周りは暗くなっているのだけれど、ポツリポツリと魔法の街灯が立っていて、躓かない程度には明るくなっていたりする。


「あれか、オルタネイティブレベルでも設定する予定なのかな?経験値の数パーセントを分けてポイント化してとか。」
「TAでもそういうので拡張スキルを取るようにした時期があったっけっ。最近はすっかり廃れたというか、拡張が出ても拡張スキルの追加もされて無かったけどっ。」
「まぁ、最近は拡張も三年とか四年掛かって大した分量じゃないとかだったしね。少人数で細々と維持管理と拡張作りしてんだろうし、バランス取るのが大変だったんだろうね。こっちへのデータの落とし込みもあっただろうし。」


 昔していた自分の仕事の事を思い出して僕はゲンナリとしながら、拾った木切れを鼻歌歌いながら振り回しているバーニィの横を歩く。バーニィは男キャラだった時から子供っぽい感じの行動をする所はあったんだけれど、これ、と決めた事には直向きに取り組む姿勢にとても好感が持てた。例えばレイドをやると決めてからは周りの人間を巻き込みまくり、血筋なのだろうか体育会系のノリでギルドを纏め上げると、役割分担をさせて指示系統をしっかりと維持して幾つもの拡張の最終ボスを打ち破った。ここ数年、まともに大きな拡張が出なくなり、レイドもこれまでの焼き直しみたいな物が殆どになってからは引退者が多くなってしまった事で、レイドはそこそこ、いろんなクエストやら生産にも積極的に取り組んで、世界を楽しもうという方向にシフトしたんだけれど。ちなみに文字ベースのチャットでは荒々しい言葉遣いだったのに、レイドの時のボイスチャットでのボクっ娘的なあの話し方にはみんなでそのギャップにそれはもう萌えたものだった。
 僕?僕はマイペースだったからなぁ。レイドにも生産物や人手が足りない時とか協力はしたけれど、そこまでボスを倒したい、その先にあるものが見たい、アイテムが欲しい、とはならなかったんだよね。てか、若い時にはそういう感じだったけれど、アイテム絡みやボスを倒す順番とかでの揉め事を経験して擦れてきたのかな、一歩引いて無理に主張しすぎないで楽しむというスタンスに変わって来ていた。逆に色々な体験をしたいというのはある程度あったから、細かいクエストとか、レジェンダリーな壮大なクエストとか、生産の頂点を極める為のクエストとか、そういったものを頑張ってやっていた。知名度は低くても、ストーリーがしっかりしていて、追っていくとドラマが待っているとかね。釣りも、バーニィはただただその釣ってる時間が大好きだったけれど、僕は釣れる物が色々なものに使えるというのも楽しみの一つだった。ゴミを釣ったかと思えば、そのゴミは細工物や裁縫に使えたりとか。木箱が釣れてその中には…というパターンも結構多かったし、釣れる魚によってはNPCに叩き売るだけでそれなりの値段になったり、料理にして売ると、副次効果が良くて飛ぶように高値で売れたりとかね。そういったバランス取りがうまいゲームだったのだ、TAは。

 僕らが歩いている、舗装されていない踏み固められた道の脇には片側には手入れのある程度されている林が広がり、もう片方には麦畑だろうか、畑が広がっている。畑側は当然見通しも良いから、敵が居ないのもよく分かる。注意しておかなければならないのは林側の藪とか、そういったところだけかな、と思いながら藪を見ていると、ガサガサ、と藪から音がしたと同時に一メートル程のサイズの大きなネズミのようなものが飛び出してくる。ビッグラットかな。


「イエスっ!」
「補助するからねー。」


 僕はグループを解いて即座に光魔法のSTRの上がる補助魔法をバーニィに飛ばす。経験値差が出るなら、こういったところで稼いでおいてもらわないとね。まぁ、魔法を使った段階で、『魔法を使う』という行動に対する経験値は入って来るんだけど、敵を倒す事によって得られる分はバーニィに入るはず。
 バーニィは一度突っ込んできたビッグラットに牽制として振り回した木切れをアイテムボックスに…突っ込んじゃったよ…。そして代わりに槍を出す。取り出した槍をしっかりと握ると同時に一気に両手でビッグラットに突き込む。…スキルとかそんなの関係無い感じだなぁ。
 突き刺されたビッグラットが光の粒となって舞い上がるかのように消えると、そこには肉と爪が残された。


「一撃で倒せるものなんだねっ。ちょっと焦ったけど、大丈夫だったっ。」
「よしよし、さすがバーニィだね。」


 バーニィは落ちている肉と爪をアイテムボックスに回収すると、また木切れを取り出している。…よっぽど気に入ったのかなあ。


「そういえば、スキルに索敵とかあったよねっ?」
「…あるね。一点で取れるし、取っとこうか。相手がビッグラットだったから別になんて事無いけど、この先ダンジョンとかいくなら必要になりそうだよね。」
「…もう少し後にしよっかっ。ポイントが勿体無いよっ。」
「多重起動は二十点で取れるから、この調子ならすぐ取れるから大丈夫だよ。」
「ワーッツ、二十ポイント!?それは随分と高いコストじゃないっ?」


 表情豊かなバーニィに、こちらも思わず顔が緩む。


「二個起動とかなら安いんだけどね。どうせなら制限なしの多重起動を取っといたほうが効率が良いよね? やっぱり多いほうがって取りなおせば無駄になるし。」
「俺もそう思うっ。さすがココットだっ。」


 何がさすがなのかはわからないけれど、バーニィが納得出来るならまあ良いか、とずんずん何事もなくカーブしている道を進んでいくと、畑が終わって両側が鬱蒼とした林に切り替わる。流れているBGMも聞き覚えのある少し雄壮な物に切り替わったかと思えば、徐々に道も登り道になり、右手側が崖に切り替わってその上には城壁だろうか、石積みの壁が見えているようになった。


「なんとも思わなかったけれど、これはドラコルムかな?」
「んっ、多分そうだねっ。ちょっと地形が違ったような気もしたけど、多分ドラコルムだねっ。」


 街に近付いた事でフルプレートを着た騎兵が巡回する姿も見かけるようになり、その姿からしてもドラグーンの種族の首都である、ドラコルムへと道が続いているのだろうと僕は予想していた。分かれ道に建っていた道標に”ドラコルム”の表記を見て、それが正しかった事がわかった。
 ドラコルムは街区が五つに分かれており、港もある大きな城下町で、大きな山を背負った城塞は王である、キング・ドラコニアス六世がTAの時代には居城を構えて君臨していた。周辺には幾つもの鉱山を抱える産業が発展している街で、敵対種族の奴隷が鉱山で反乱を起こしたりしてそれを鎮圧するクエストなんかがあったりしたのを覚えている。
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