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プロローグ1〜腐男子従兄弟は肉のサンタさん〜
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昼休みが終わった頃から教室内が落ち着かずそわそわとしていた。それと言うのも今日は水曜日だからだ。水曜日は全ての部活動がない日、誰が呼んだか「ノー残業デー」。しかも明日の木曜日は朝のSHRがないから、いつもよりゆっくり登校できるのだ。
だから、田舎にある全寮制男子校という極端に娯楽の少ないこのBillete・El・Dorado学園、通称ビーエル学園ではノー残業デーと言えば街に繰り出して遊びまくる日と決まっている。
「なぁ、蛍は今日どこ班?」
隣の席の橋本が帰りのSHRも終わっていないのに小さな声で話しかけてきた。先生に見つかりそうでヒヤヒヤする。浮ついた態度を見咎められて居残りトイレ掃除とか命じられたらどうするんだ。俺は橋本よりも更に小声で早口に答えた。
「今日は帰省班」
班、と言うのは、例えばゲーセン班、カラオケ班、合コン班、といったように今日この後の予定を示す言葉だ。今日の俺は帰省班。つまり、実家に帰る。俺の実家は電車で十五分。ここが全寮制でなければ余裕で通学できる範囲だ。とは言え、年頃の男子高校生が好き好んで実家に帰りたいと思うはずもない。だが今日は! 今日だけは特別な用事があるのだ。ゲーセンよりも、カラオケよりも、合コン……はちょっと後ろ髪引かれるけど、今日に限って言えば、今すぐにでも実家に帰りたくて堪らない。
俺の返事に橋本は、えっ、と呟いて大げさに仰け反った。おい、声も身振りも大きいって!
「なんで帰省!?」
「橋本、アウトー。トイレ掃除二時間」
「嘘だああぁぁ!」
案の定橋本は担任の柿崎先生に見つかって居残りが確定した。哀れな奴よ……。お前の死は無駄にしない。明日ピカピカになった便器を拝んでから使わせてもらおう。さらば、橋本。ありがとう、橋本。
「えー橋本以外の生徒諸君はくれぐれも節度を守って放課後を楽しむように」
先生達も今日が生徒にとって重要なガス抜きの日と分かっているから小さな事には目を瞑り——嫌がらせなのかたまに橋本のように見せしめの生贄を捕らえることがあるものの——今日はSHRも早く終えてくれる。先生の解散、の声を合図に我先にと生徒が教室の出入口に押し寄せる。
それを身軽な体を活かして人の間をくぐり抜け、一番に廊下に出ると颯爽と走り抜けた。全力疾走で校門を過ぎ、バスに乗り最寄駅へ。やはり走って改札を通りホームに着くとちょうど電車が滑り込んできた。間に合った! これを逃すと次は一時間後だ。やっと一息ついてゆっくりと電車の座席に腰を下ろした。街とは反対方向へ向かうこの電車は人もまばらだ。逸る気持ちを抑えて俺は車窓の景色を眺めた。
「雪はっ!?」
実家の玄関ドアを開くなり、俺は大声で叫んだ。キッチンから呆れ顔の母さんが姿を見せ、無言でリビングを指差した。足音も荒く家に上がりリビングのドアを開けると、そこには俺が恋い焦がれた人物がいた。
ソファの真ん中に足を組んで悠々と座っている学ラン姿。同い年の従兄弟の雪だ。
「雪! 会いたかった!」
飛びかからんばかりに駆け寄った俺を雪は気持ち悪そうに見下した。いいんだ、その蔑んだ視線も全く気にならない。だって、俺が用があるのは——
「愛しの雪の肉ー!!」
雪が手土産に持って来た大量のA5等級黒毛和牛の山に抱きついた。
「人を肉布団みたいに言うな」
足だけでなく腕も組んで益々不機嫌そうに雪が睨み付けてくる。
雪の父親は母さんの兄で、隣町で大きな牧場を経営している。育てているのは最高級の和牛。普通なら俺のような庶民の口には入らない代物だが、身内のよしみでこうしてたまに雪がお裾分けに持って来てくれるのだ。俺は心の中で雪を肉のサンタさんと呼んでいる。
「今日は焼肉? ステーキ? すき焼き?」
「聞いて驚け。全部用意してやったぞ。しかもうちで作ったメンチカツも持参した。存分に宴を楽しむが良い」
「神様なの!?」
俺の願いを全て叶える雪様を拝んでから、綺麗なサシの入った肉を母さんに託せば後は調理を待つだけだ。その間にまだ温かなメンチカツを一口頬張る。サクッとした衣の内側から溢れる肉汁。脂の持つ甘みを適度な塩胡椒が引き立てる。普通のメンチカツと違い余計なキャベツや玉ねぎが邪魔をしないほぼ肉の濃厚なメンチカツ。一言で表すならそう、くっそうめぇ……!
「食べ方がなんか卑しい」
雪にディスられているがこのうまさの前では瑣末な事だ。ぺろりと一個を平らげ二個目を口にして恍惚の表情を浮かべていると、雪の方がよっぽど卑しい笑顔を浮かべて俺の肩に手を乗せた。
「それでどう? もう高二だろ? 恋人できた?」
「寮生活じゃ女子と会う機会もないし、合コンとかも行かないしなぁ」
「女の話は聞いてねぇ! 学内にいんだろ、スパダリイケメンが! メイクラブしろよ!」
……そうなんです。残念な事に、雪は腐男子という大病を患っているんです……。黙ってればイケメンなのに。顔面の無駄遣いだ。俺に分けろ。
「ある訳ないだろ。BLはファンタジーって雪も言ってんじゃん」
「そうだけども。お前のビーエル学園を目の当たりにした時に悟ったんだ。王道学園が存在するのにBLが存在しないはずがあろうか、いやない!」
反語で断言されてもなぁ。女子がいなければそれはそれで男同士気取らず楽しくやれるし、学外に彼女がいる奴もそこそこいる。いくら寂しいからって男に走る奴はいないのが現実だ。
話を適当に聞き流してメンチカツを貪る俺に雪は盛大に舌打ちして、今日も収穫なしか、とぶつぶつ呟いていた。
当たり前だ。二次元の世界がそうそう身近にあって堪るか。雪にもそろそろ現実を生きてもらいたもんだ。
その日は父さんも早めに帰って来て盛大な肉祭りが催された。全ての肉に愛と感謝を込めて俺は思い残すことのないよう腹一杯食べ尽くしたのである。
心も胃袋も幸せで一杯になった俺は、門限ギリギリに寮に帰り着いた。お土産を同室の奴に恵んでやり、シャワーで身体中に染み付いたジューシーな香りとお別れすれば早々にベッドに潜り込む。満腹で眠気を感じていた俺はすぐに眠りについてしまったから、大量の着信履歴とメールに気が付いたのは翌朝のことだった。
メールの文字列を見て一瞬脳が理解を拒否した。
雪が帰り道でトラックに跳ねられ、意識不明の重体。明日までもたないかもしれない。
なぜ? どうして雪が? 冗談だろ? だって昨日はいつもと変わらなかったのに。
色んな思いがごちゃごちゃで、頭痛を伴う大きな音が頭の中で鳴ってる。
ふざけんなよ。雪、待ってろ。すぐ行く。すぐ行くから、待ってろよ……!
俺は取るものも取り敢えず寮を飛び出し、朝一番の電車で雪の入院している病院に向かったのだった。
だから、田舎にある全寮制男子校という極端に娯楽の少ないこのBillete・El・Dorado学園、通称ビーエル学園ではノー残業デーと言えば街に繰り出して遊びまくる日と決まっている。
「なぁ、蛍は今日どこ班?」
隣の席の橋本が帰りのSHRも終わっていないのに小さな声で話しかけてきた。先生に見つかりそうでヒヤヒヤする。浮ついた態度を見咎められて居残りトイレ掃除とか命じられたらどうするんだ。俺は橋本よりも更に小声で早口に答えた。
「今日は帰省班」
班、と言うのは、例えばゲーセン班、カラオケ班、合コン班、といったように今日この後の予定を示す言葉だ。今日の俺は帰省班。つまり、実家に帰る。俺の実家は電車で十五分。ここが全寮制でなければ余裕で通学できる範囲だ。とは言え、年頃の男子高校生が好き好んで実家に帰りたいと思うはずもない。だが今日は! 今日だけは特別な用事があるのだ。ゲーセンよりも、カラオケよりも、合コン……はちょっと後ろ髪引かれるけど、今日に限って言えば、今すぐにでも実家に帰りたくて堪らない。
俺の返事に橋本は、えっ、と呟いて大げさに仰け反った。おい、声も身振りも大きいって!
「なんで帰省!?」
「橋本、アウトー。トイレ掃除二時間」
「嘘だああぁぁ!」
案の定橋本は担任の柿崎先生に見つかって居残りが確定した。哀れな奴よ……。お前の死は無駄にしない。明日ピカピカになった便器を拝んでから使わせてもらおう。さらば、橋本。ありがとう、橋本。
「えー橋本以外の生徒諸君はくれぐれも節度を守って放課後を楽しむように」
先生達も今日が生徒にとって重要なガス抜きの日と分かっているから小さな事には目を瞑り——嫌がらせなのかたまに橋本のように見せしめの生贄を捕らえることがあるものの——今日はSHRも早く終えてくれる。先生の解散、の声を合図に我先にと生徒が教室の出入口に押し寄せる。
それを身軽な体を活かして人の間をくぐり抜け、一番に廊下に出ると颯爽と走り抜けた。全力疾走で校門を過ぎ、バスに乗り最寄駅へ。やはり走って改札を通りホームに着くとちょうど電車が滑り込んできた。間に合った! これを逃すと次は一時間後だ。やっと一息ついてゆっくりと電車の座席に腰を下ろした。街とは反対方向へ向かうこの電車は人もまばらだ。逸る気持ちを抑えて俺は車窓の景色を眺めた。
「雪はっ!?」
実家の玄関ドアを開くなり、俺は大声で叫んだ。キッチンから呆れ顔の母さんが姿を見せ、無言でリビングを指差した。足音も荒く家に上がりリビングのドアを開けると、そこには俺が恋い焦がれた人物がいた。
ソファの真ん中に足を組んで悠々と座っている学ラン姿。同い年の従兄弟の雪だ。
「雪! 会いたかった!」
飛びかからんばかりに駆け寄った俺を雪は気持ち悪そうに見下した。いいんだ、その蔑んだ視線も全く気にならない。だって、俺が用があるのは——
「愛しの雪の肉ー!!」
雪が手土産に持って来た大量のA5等級黒毛和牛の山に抱きついた。
「人を肉布団みたいに言うな」
足だけでなく腕も組んで益々不機嫌そうに雪が睨み付けてくる。
雪の父親は母さんの兄で、隣町で大きな牧場を経営している。育てているのは最高級の和牛。普通なら俺のような庶民の口には入らない代物だが、身内のよしみでこうしてたまに雪がお裾分けに持って来てくれるのだ。俺は心の中で雪を肉のサンタさんと呼んでいる。
「今日は焼肉? ステーキ? すき焼き?」
「聞いて驚け。全部用意してやったぞ。しかもうちで作ったメンチカツも持参した。存分に宴を楽しむが良い」
「神様なの!?」
俺の願いを全て叶える雪様を拝んでから、綺麗なサシの入った肉を母さんに託せば後は調理を待つだけだ。その間にまだ温かなメンチカツを一口頬張る。サクッとした衣の内側から溢れる肉汁。脂の持つ甘みを適度な塩胡椒が引き立てる。普通のメンチカツと違い余計なキャベツや玉ねぎが邪魔をしないほぼ肉の濃厚なメンチカツ。一言で表すならそう、くっそうめぇ……!
「食べ方がなんか卑しい」
雪にディスられているがこのうまさの前では瑣末な事だ。ぺろりと一個を平らげ二個目を口にして恍惚の表情を浮かべていると、雪の方がよっぽど卑しい笑顔を浮かべて俺の肩に手を乗せた。
「それでどう? もう高二だろ? 恋人できた?」
「寮生活じゃ女子と会う機会もないし、合コンとかも行かないしなぁ」
「女の話は聞いてねぇ! 学内にいんだろ、スパダリイケメンが! メイクラブしろよ!」
……そうなんです。残念な事に、雪は腐男子という大病を患っているんです……。黙ってればイケメンなのに。顔面の無駄遣いだ。俺に分けろ。
「ある訳ないだろ。BLはファンタジーって雪も言ってんじゃん」
「そうだけども。お前のビーエル学園を目の当たりにした時に悟ったんだ。王道学園が存在するのにBLが存在しないはずがあろうか、いやない!」
反語で断言されてもなぁ。女子がいなければそれはそれで男同士気取らず楽しくやれるし、学外に彼女がいる奴もそこそこいる。いくら寂しいからって男に走る奴はいないのが現実だ。
話を適当に聞き流してメンチカツを貪る俺に雪は盛大に舌打ちして、今日も収穫なしか、とぶつぶつ呟いていた。
当たり前だ。二次元の世界がそうそう身近にあって堪るか。雪にもそろそろ現実を生きてもらいたもんだ。
その日は父さんも早めに帰って来て盛大な肉祭りが催された。全ての肉に愛と感謝を込めて俺は思い残すことのないよう腹一杯食べ尽くしたのである。
心も胃袋も幸せで一杯になった俺は、門限ギリギリに寮に帰り着いた。お土産を同室の奴に恵んでやり、シャワーで身体中に染み付いたジューシーな香りとお別れすれば早々にベッドに潜り込む。満腹で眠気を感じていた俺はすぐに眠りについてしまったから、大量の着信履歴とメールに気が付いたのは翌朝のことだった。
メールの文字列を見て一瞬脳が理解を拒否した。
雪が帰り道でトラックに跳ねられ、意識不明の重体。明日までもたないかもしれない。
なぜ? どうして雪が? 冗談だろ? だって昨日はいつもと変わらなかったのに。
色んな思いがごちゃごちゃで、頭痛を伴う大きな音が頭の中で鳴ってる。
ふざけんなよ。雪、待ってろ。すぐ行く。すぐ行くから、待ってろよ……!
俺は取るものも取り敢えず寮を飛び出し、朝一番の電車で雪の入院している病院に向かったのだった。
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